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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
519/953

第519話

「それで、アーカスさんはどうしたんですか?」


「フィーナさんで試したい事があるそうです」


ジークとソーマの様子に苦笑いを浮かべるシルドだが、滅多に村に降りてこないアーカスが何をしに来たかは気になるようであり、再度、アーカスに尋ねる。

アーカスは答える気はないのかカウンター席に腰を下ろして目を閉じており、ノエルはシルドからも止めて貰いたいようで助けを求めるような視線を向けた。


「フィーナで試したい事?」


「シルドさん」


「しっかりと傷めつけてやってください」


眉間にしわを寄せ考え込むシルド。

ノエルは味方を手に入れたと思ったようで彼女の表情は晴れるが現実は甘くなく、シルドは清々しいまでの笑顔でアーカスを応援する。


「どうしてですか!?」


「フィーナにはそれくらいやって、常識を覚えさせた方が良いだろ。間違った事をしたら罰が当たるって」


「それは犬猫のしつけと変わらないんじゃないですかね」


驚きの声を上げるノエルだが、シルドはフィーナには必要な事だと何度も頷く。

ミレットは苦笑いを浮かべるものの、フィーナがここまで言われるのにはこれまでの彼女の行動に問題があると思っているようで否定する事はない。


「そうするとこれからフォルムに戻るのか?」


「そうですね。俺もヒマじゃないし、やる事はたくさんありますから、直ぐに戻ります」


「フォルム? ずいぶんと長旅だな。大丈夫なのか? そうだ。ワームくらいまで俺らを雇わないか?」


用件も終わったため、フォルムに戻ると言うジーク。

その様子にジークが転移の魔導機器を持っている事を知らないソーマは護衛を雇わないかと聞く。


「必要ない」


「は? まともに戦えるのはジークだけだろ。街道整備をやってるおかげで野盗は出ないだろうけど、魔物はでるぞ」


きっぱりと断るジークにソーマは驚きの声を上げる。

彼はジークの戦闘力を買っているようではあるが、ノエルとミレットはどう考えても非戦闘要員であり、フォルムまでは絶対に無理だと言う。


「あの。わたし達、魔法でフォルムに戻れるんです」


「……転移魔法か? 使える人間がいるのか」


ノエルは苦笑いを浮かべて、ジークの言葉を補足するとソーマは冒険者としての生活も長いため、直ぐに察しがついたのか仕事がなくなったとため息を吐いた。


「転移魔法じゃないけどな。それと同等の物をカインが作ったんだよ。そのせいで俺は小間使い扱いだ」


「ルッケルに飛んだり、ワームに飛んだからな。それもほとんど無償で」


「おい。無償でそんな事をするなよ。冒険者おれたちの仕事が減るだろ!!」


懐から転移の魔導機器を取り出してため息を吐くジーク。

ジークがルッケルとワームの連絡係を押し付けられている事はシルドも知っており、

楽しそうに笑っている。

ジークがやっている事は冒険者達の仕事を減らす行為であるため、ソーマは声をあげた。


「そんな事、俺に言われたって知らない」


「何でこんな村の薬屋がそんなもんを持ってるんだよ」


「カインに押し付けられたんだよ」


ソーマは改めて考えるとジークが転移の魔導機器を持っていること自体がおかしいと思ったようだが、ジークは自分に言われても困る事のため、ため息しか出てこない。


「行くぞ」


「はいはい」


「待った。待った。だいたい、何で、ジークがフォルムなんかに行くんだ?」


待っているのが飽きたのかアーカスはジークに声をかけ、ジークはアーカスから持たされた荷物を担ぐ。

ソーマは納得がいかないため、ジークがフォルムに行く理由を聞く。


「そこら辺はシルドさんに聞いてくれ」


「投げるな!?」


面倒になったジークはシルドに丸投げしようと決めたようで転移の魔導機器を発動させる。

ソーマは引く事無く、彼の腕をつかんだ。

タイミング良く、魔導機器は発動し、ソーマを加えた5人の身体を淡い光が包み込み。光の球に代わり、空中をしばらくさまよった後、転移を開始する。


「……まぁ、しばらくすれば帰ってくるよな」


転移魔法が発動し、ジーク達が消えた様子を新米冒険者達は見てしまったようで何が起きたかわからずに驚きの声を上げている。

シルドは説明を丸投げされた事に気が付き、頭をかくとカウンターを出て新米冒険者達に事情を説明しに行く。


「……到着したわけだけど、何しにきたんだよ?」


「俺が聞きたいよ。しかし、本当に転移魔法と同じ事ができるんだな」


転移魔法は無事に発動し、カインの屋敷の前に到着したのだが、ソーマが付いてきてしまった事にジークは肩を落とす。

ソーマはフォルムにはきた事があるようで周囲を見回し、この地がフォルムだとは理解できたようで頭をかいた。


「ジーク、ノエルサマ」


「あれ? 何で、人が増えてるのよ? アーカスさんはまだしも、何で、ソーマまでいるのよ?」


「……」


その時、フィーナとゼイがジーク達を見つけて駆け寄ってくるが、フィーナは自分の身にこれから何が起きるかなど考えておらず、無防備である。

アーカスは無防備に近づいてくる実験台(フィーナ)を見て、小さく口元を緩ませるとジークの隣に移動し、荷物の物色を始め出す。


「フィ、フィーナさん、逃げてください!?」


「逃げて? ノエル、何を言ってるの? 逃げるような事はないでしょ」


「ジーク」


アーカスの姿にノエルは顔を真っ青にして、彼女に逃げるようにと叫ぶ。

しかし、意味のわからないフィーナは首を傾げながら、距離を縮めている。

彼女の姿を見ながら、アーカスはフィーナを逃がさないためにジークの名前を呼んだ。


「はいはい。わかりましたよ」


「ちょ、ジーク、あんた、何をする気よ?」


ジークはアーカスが何をしたいか直ぐに察し、下手に逆らって自分が実験台にされるのもイヤなため、冷気の魔導銃をホルダから抜きフィーナに向かって放つ。

フィーナは突然の事で驚きの声を上げるが何とかその1撃を交わすと大声でジークを怒鳴りつける。


「いや、アーカスさんがフィーナを実験台にしたいって言うから」


「実験台にしたいじゃないわよ!! そんな事を言ってるのに何で、フォルムまで連れて帰ってくるのよ!!」


「……そう言えば、あの剣、火の精霊の力が宿ってるんだったか」


ジークはフィーナの怒声に少しだけ困ったように頭をかくが、魔導銃の銃口はしっかりと彼女へと向けられている。

フィーナは捕まるわけにはいかないため、腰の剣を抜く。

何度もフィーナを氷漬けにしているジークだが、冷気の魔導銃は彼女の剣とは相性が悪いため、舌打ちをする。


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