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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
510/953

第510話

「なら、質問、レインにとってフォルムの民は守るべき民かな?」


「何を言っているんですか?」


「答えは?」


カインの質問の意味がわからずに首を傾げるレイン。

彼の様子にカインはイタズラな笑みを浮かべたまま、もう1度尋ねる。


「もちろん、私が守るべき民です」


「そう。なら、仮にフォルムの民の半分以上に魔族の血が流れているとしたら?」


「……」


はっきりと答えるレインの姿にカインは惚けたようなしぐさをしながら、1つの疑問を投げかける。

それはフォルムに住む人々の真実であり、レインはカインの言葉の真意を見定めようとカインの顔へと視線を向けた。


「……表情から何かを察するのは酷く難しい相手だよな」


「笑顔で人を崖から蹴り飛ばすような人間だからね」


「あ、あの、フィーナさん、それは言い過ぎだと思いますけど」


カインはレインの視線に顔を逸らす事無く微笑んでおり、2人の様子にジークは大きく肩を落とす。

フィーナは紅茶を口に運びながらカインはろくでなしと言い切り、彼女の物言いにノエルは苦笑いを浮かべた。


「魔族の血を引いていてもそれを知らない人族は人族か? 魔族か? レインはどこで判断するのかな? 人族とエルフ、エルフとハーフエルフの境界線は? わずかでも獣人の血を引く者は獣人か? 否か? レイン、君はそれがどこかわかるかい?」


「そ、それは……」


レインの表情をあざ笑うかのようにカインは更なる質問を投げかける。

レインは増えた質問に答える事ができず、顔をしかめるも必死に答えを探そうとするが、答えは見つからないようで言葉を詰まらせた。


「平和に生きる民に魔族の血が流れていると知った時、今まで守ると言っていた民に剣を向けるのは騎士として、人として正しい行為か? 剣を向けてしまった時、レインは本当に騎士としての誇りは守れるのか?」


「……意地の悪い質問ですね」


「俺は研究者だからね。疑問を提示し、真実を探すんだ。感情より、理性でこの世界の真実をね」


彼の様子にカインは追い打ちをかけるように続ける。

レインは自分が口でカインに勝てるわけない事は理解できており、大きく肩を落とす。

カインはくすくすと笑うとあくまでも自分は研究者だと言う。

その様子からはまだ探るべきものがあると言いたげであり、その表情は真剣そのものである。


「世界の真実?」


「そう。誰が人族と魔族の中に争いの種を落としたか? それは故意か? 偶然か? 仮に故意だとしたらそれは何のために? 俺達はその答えを知らないからね」


「多くの事を知る事でこの世界の真実が見えるか?」


カインの言葉はレインだけに向けられたものではなく、ノエルは小さな声で聞き返す。

苦笑いを浮かべながらも知るべき事は多いと言い、ジークはカインほど世界の真実について考えているわけではないが言いたい事はわかるのか頭をかいている。


「ねえ。話が盛り上がってるのは良いんだけど、結局、レインの答えってどうなったの?」


「そ、そうでした」


「答えですか……正直、わかりません。私には魔族に知り合いもいませんし」


難しい話になり、つまらなくなってきたのかフィーナは話を戻そうとする。

ノエルは慌てて頷くとレインへと視線を向けた。レインは明確な答えを出せるほどの自信は無く、首を横に振った。


「難しく考えすぎなのよ。ムカつけば殴り飛ばせば良いんでしょ?」


「……こう言うバカが戦争の引鉄を引くんだろうな」


「そうだね。戦って和解できるって言うのは実際問題はあまりないだろうからね」


フィーナは最終的には殴ってでも、自分達の考えをわからせれば良いと迷いなく言い切り、ジークは彼女の発言に頭が痛いと言いたげに肩を落とした。

カインは実妹の言葉に困ったと言いたいのか頭をかくとノエルへと視線を移す。

その視線にはノエルに真実を伝えるのは今だと言う思いが込められており、ノエルは不安そうな表情をするとジークへと視線を向けた。

彼女の視線にジークは気づくとノエルの不安を取り除くように優しい笑みを浮かべる。

彼の表情にノエルは1度、大きく頷くと表情を引き締めた。


「レ、レインさん」


「何でしょうか?」


「本当の事を話します。わ、わたし、どれいきゅ……」


ノエルは覚悟を決めたようでレインの名前を呼ぶがその声は震えており、レインは彼女の様子に驚いたような表情をして聞き返す。

ノエルは勢いをつけて自分がドレイク族である事をレインに伝えようとするが、慌てていたため舌をかんでしまい、涙目になっている。


「こ、ここでかむか?」


「ノ、ノエルらしいと言えばらしいんですけど、締まりませんね」


「ジーク、続き」


決まらない彼女の様子にジークは眉間にしわを寄せ、ミレットは苦笑いを浮かべた。

カインは苦笑いを浮かべるもこのままでは話が進まないため、ジークにノエルの正体を話すように言う。


「わかったよ。レイン、良いか? 今から俺は結構な爆弾発言をする。冷静に聞いてくれ」


「は、はぁ。ジーク、ノエルさんの事は良いんですか?」


「今はこっちが大切」


カインの指示にジークは1度、大きくため息を吐くと頭をかきながら、レインに向き合う。

レインはノエルが涙目になっているのをそのままにしていて良いのかと指差す。

ジークはノエルに視線を1度、向けると彼女からは恨めしそうな視線が向けられている事に気づくが優先度としてはノエルは低くレインに視線を戻した。


「そうですか?」


「レインにはもう魔族の知り合いがいるぞ。カインは仮にって言ったけど、フォルムの人達にはラミア族の血が流れてるらしいし、ギドとゼイはゴブリン族でザガロはリザードマン族、そして、極めつけはノエルはドレイク族だ」


「そう言う悪趣味な冗談はやめてください……ほ、本当なんですか?」


ジークはレインの知っている人間の種族をばらすが、レインにはジークが冗談を言っているようにしか思えないようで大きく肩を落とした。

しかし、レインとクーと遊んでいるカルディナ以外はすべてを知っているため、レインの言葉に首を横に振り、レインは冗談ではないと気づき、顔は引きつって行く。


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