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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
509/953

第509話

「そんな事がね」


「できると思いますか?」


「無理でしょ。あんな自分勝手な人間ができるわけがないでしょ」


ジークとノエルはオズフィム家の事を突然、任されて余裕のなくなったカルディナを連れてフォルムに戻る。

彼女は自分を落ち着かせるためか、クーにお茶菓子を与えており、その様子を眺めながらワームであった事を話す。

カインは苦笑いを浮かべ、セスとレインは難しい表情をしており、ノエルは不安なのか2人に尋ねるがフィーナはカルディナの事など信じていないため欠伸をしている。


「本人は現在現実逃避中だしな」


「ですね」


ジークはカルディナに視線を向けてため息を吐くと話を聞いていたのかミレットが人数分の紅茶をテーブルの上に置く。


「カ、カインさん」


「まぁ、難しいだろうね」


「そ、そんな事を言わないで、カルディナ様のために何か考えてください」


ノエルは助けを求めるようにカインを呼ぶ。

その言葉にカインは苦笑いを浮かべたまま答えるとノエルはカインに泣きつくように言う。


「ノエル、落ち着け。カインは難しいとは言ってるけどできないとは言ってない」


「……そ、そうなんですか?」


「いや、できないでしょ……そんな目で見ないでよ」


ジークは彼女に落ち着かせようとカインの言葉の意味を教えるが、フィーナは否定的であり、ため息を吐く。

彼女の言葉を否定したいノエルは恨めしそうな視線を送り、フィーナは若干、気まずくなってきたのか頭をかいた。


「少なくともフィーナよりは才能があるよね」


「カイン、バカなことを言うな。フィーナと比べたら、いくらなんでもカルディナ様に失礼だ」


「何ですって!!」


ジークとカインはいつものように彼女を小バカにし、2人の言葉に納得がいかないフィーナはテーブルを両手で叩くと勢いよく立ち上がる。


「フィ、フィーナさん、落ち着いてください」


「そうです。カイン、ジーク、どうして余計な事を言うんですか?」


レインは2人に殴りかかりそうな彼女の様子に慌てて間に割って入り、セスは口の悪い2人の様子に大きく肩を落とす。

セスから責められ、ジークとカインは苦笑いを浮かべると真面目な表情をする。


「冗談はこれくらいにしてね。できる、できないじゃなくてね。カルディナ様がやらなければいけない事、それがわからないほどカルディナ様はバカじゃないよ」


「ですけど」


カインは彼女にとって必要な事だと言う。

彼の考えにセス、レイン、ミレットも同感なようであり、大きく頷くがノエルは心配なようでカルディナへと視線を向けた。


「それがわかってるから、ティミル様はジークとノエルにカルディナ様の事を任せたんだろ?」


「へ?」


「そう言う事なんだろうな。俺より、カインやセスさんに任せた方が良いと思うんだけどな」



カインはティミルの事を食えない人間だと思っているようで大きくため息を吐く。

ノエルはカインの言葉の意味がわからないようで驚きの声を上げるが、ジークはカインに言われた事で予感が確信に変わり、乱暴に頭をかいた。


「いえ、ティミル様がジークに任せた理由は何となくですがわかります」


「そうなのか?」


レインはティミルと面識もあるため、彼女の考えを察したのか苦笑いを浮かべる。

ジークは1度しかティミルに会っていないため、彼女の考えを全て理解できておらず、聞き返す。


「カインやセスさんではカルディナ様が委縮してしまう可能性があります。彼女にとって2人は目指すべき目標ですから、2人に認められるために無理をして正解を探そうとするでしょうから、ジーク達が相手なら本音をぶつけられるでしょうし」


「本音をぶつけられるのも面倒なんだけどな」


「正解を探すですか? それではダメなんですか?」


レインは意見をぶつけ合う事が必要だと答え、ジークは面倒だと言いたげにため息を吐く。

ノエルはレインの言いたい事が理解し切れていないよう首を傾げている。


「ダメではないでしょうけど、これはティミル様がカルディナ様に出した課題ですから」


「間違いを避けるより、間違ってでも1歩ずつ進んで行く事が大切だって事だよ」


苦笑いを浮かべるレインの言葉をカインは補うように言う。

彼の言葉は今まで多くの間違いを起こしてきた世界の事を重ね合わしている。


「多くの間違いを犯したから、見えるものですか?」


「何か似てるわね?」


「そうだね。この世界の在り方と似ているかも知れないね」


ノエルとフィーナはカインの言いたい事を全ては理解できていないようだが、部分的に理解できたようで首を傾げた。

その様子にカインは柔らかな笑みを浮かべた後に表情を引き締める。


「人は間違いを犯す事で成長する。間違いを犯し、それが間違いだと気が付いた時にね。だから、間違いに気が付きながらも正す事に踏み出せない人には手を差し伸べてあげなければいけない」


「結局、カインは自分で悩めと言ったわりに私が間違っていると言いたいのですね」


カインが何を言いたいのかを察したレインは難しい表情をして聞き返した。

レインの言葉にノエルは彼が出す答えが気になるのか息を飲み、その場には緊張感が走る。


「レインは充分に悩んだだろ? だから、聞くよ。レインの出した答えが気になるからね」


「……相変わらず、意地の悪いやつだな」


「まったくね」


カインの質問は底意地が悪いように思えたようで大きく肩を落とすジーク。

フィーナはその言葉に同意を示しながらも、レインの出す答えが気になるようで視線はレインに向けられている。


「ジークとミレットさんは命の重さは変わらないと言いましたね」


「そうですね。医師として考えるなら命は変わりません」


「2人の言いたい事もわかりますけど、私は騎士です。民を守る義務があります」


レインは医師としての立場の2人とは違い、騎士である自分の答えはやはり1つしかないと結論をつけた。

彼の言葉にノエルの表情は曇るがカインはその答えを予測していたのか口元を緩ませており、カインの表情にセスは彼が何を考えているのか予想がついたようで大きく肩を落とす。


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