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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第500話

「それじゃあ、私とセスは仕事に戻ります」


「ライオ様、お願いですから、騒ぎは起こさないようにお願いします。ジーク、ノエル、フィーナ、後は任せます」


カインは新たな問題にまとめなければいけない仕事が増えたようで執務室に戻ると言う。

セスはライオがおかしな事をしないようにジーク達に見張るように釘を刺し、2人は調合室を出て行く。


「酷いな。私だってそれくらいはわきまえてるよ」


「わきまえてたら、フォルムまで出てこないだろ……焦げてる」


カインとセスの背中を見送ったライオは心外だとため息を吐くが彼の行動から説得力はない。

ジークはため息を吐くと調合鍋の様子が気になったようで急いで駆け出して行くが、やはり、おかしな事に巻き込まれてしまった事で火が通り過ぎたようで蓋を取ると焦げた臭いが調合室に広がった。


「臭いですわ。どうにかしなさい」


「悪かったよ。ノエル、窓を開けてくれるか?」


焦げた臭いにクーを抱きしめたカルディナがジークに文句を言う。

ジークは自分の責任じゃないとは思っているもの、ここでおかしな事を言って騒ぎを起こす気もないようで謝った。

ノエルが窓を開けると新鮮な空気が調合室に流れ込み、焦げた臭いを抑え込む。


「材料、無駄になったよ……フィーナ、ライオ王子を押さえておけよ。ノエル、1度、ジオスに戻るぞ」


「は、はい」


「クー」


ジークは鍋に水を入れると調合材料を入れている棚を覗き込むが必要な薬草が見つからないようでジオスに戻ると言う。

ノエルは大きく頷くがクーが心配のようで視線を動かす。

クーはジークが転移魔法でどこかに行こうとしているのは察したようでカルディナの腕の中で暴れ出し、ジークを呼ぶように鳴く。


「クーちゃん、落ち着いて下さい!?」


「カルディナ様、クーを放してくれ」


「イヤですわ。絶対に放しませんわ!!」


腕の中で暴れるクーを何とか押さえつけようとするカルディナだが、クーの暴れる力は大きくなっており、このままではカルディナがケガをすると思ったジークは彼女を説得に移る。

しかし、カルディナはクーをつかんでいる手に力を込め出す。


「ジーク、私は大人しくしてるから、カルディナも連れてジオスに戻ってきたらどうだい?」


「……流石にそれは不安なんだよ」


現状でクーからカルディナを引き離すのは困難だと判断したライオ。

しかし、ライオをフィーナだけに任せるのは心配なのかジークは眉間にしわを寄せる。


「ジーク、それなら、テッド先生のところ行って、ミレットさんを呼んでくる?」


「いや、流石にテッド先生とミレットさんの邪魔をするわけにはいかないだろ。仕方ないな。他の調合をするか」


フィーナも1人でライオの相手をするのは面倒だと思ったようでミレットを呼びに行くと言う。

ミレットの仕事を邪魔するわけにはいかないと判断したようでジークは棚にある材料の在庫を確認し、できる調合薬から作って行くとため息を吐く。


「あ、あの、そろそろ、ライオ様に王都に戻って貰えば良いんじゃないでしょうか? あまり遅くなると問題になりますし」


「確かに」


「ほら、まだ、カルディナも帰る気はないみたいだし、私もフォルムにいても良いんじゃないかな? って」


ノエルは遠慮がちにライオに王都に戻って欲しいと手をあげた。

そこでジークは気が付いたようでライオへと視線を向ける。

その視線に苦笑いを浮かべるライオだが、まだ王都に帰りたくないようでカルディナに話を振る。

カルディナは自分の手の中から逃げ出そうとしているクーを押さえつけるのに必死であり、ライオの話などまったく聞いていない。


「何より、おっさんの娘を最初にどうにかしないといけないんじゃないの?」


「確かにな」


「か、返しなさい!! クーちゃんは私の物ですわ!!」


カルディナの様子にフィーナは大きく肩を落とすとジークはカルディナの腕の中からクーを引っ張り出す。

クーはカルディナから助け出された事に安心したのかジークに抱きつくとカルディナはクーを取られたと思ったようで声を上げる。


「……勝手にクーを所有物にするな」


「そうやってるとまた、クーに嫌われるわよ」


「庶民、わかったような口を聞かないでください。私はあなたと違ってクーちゃんに嫌われてなどいませんわ」


クーはカルディナの相手をしたくないようでパタパタと羽根を動かし、飛びあがった。

その高さはちょうど、カルディナの手が届かない高さであり、クーを捕まえようと飛び跳ねる。

しかし、クーはしばらくはカルディナの相手をしたくないようで宙に浮いたままであり、フィーナは興味なさそうに言う。

彼女の言葉にカルディナは眉間にしわを寄せると自分がクーに好かれていると主張する。


「クー、おいで」


「クー」


フィーナはそんな彼女の言い分をあざ笑うようにクーを呼ぶ。

クーはフィーナの事は嫌っていないため、彼女の呼びかけに答えてフィーナのそばに移動する。

その様子にカルディナは敗北を感じ取ったようで膝から崩れ落ち、泣きながら床を拳で叩く。


「フィーナさんの勝ちだね」


「フィーナさんは名付け親ですからね。カルディナ様、そうやって、自分の事だけ押し付けるとクーちゃんに嫌われてしまいますよ」


「しかし、私はフォルムに住んでない分、クーちゃんと遊べる機会がないのです。一緒にいたいと思って当たり前ではないですか」


彼女の様子に苦笑いを浮かべるライオ。

ノエルは彼女の気持ちもわかるようでカルディナの肩を叩き、態度を改めるように言う。

カルディナは放れている時間があるため、クーに忘れられないようにしたいようだが、その行動は確実に裏目に出ており、ジークとライオは眉間にしわを寄せている。


「カインの事を好きだと言ってた時の事を思い出せばこうなるな」


「思い込みが激しいからね。だけど、このまま、王都に帰るとカルディナはまたクーに嫌われるんじゃないかな?」


「でしょうね。クー、あんたも大変ね」


盲目的なカルディナの行動から言えば、彼女の事を知っている人間から見れば当然の状況であり、ジークは困ったように頭をかく。

ライオは彼女とクーの間を取り持たなければ後々、フォルムにくる事に支障が出ると判断しているようで難しい顔をする。

フィーナはそばにいるクーの鼻先を指で撫でながら、声をかけるとクーはカルディナの事はどうでも良いのか気持ちよさそうに鼻を鳴らす。


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