第50話
「……まったく、わかんねえ」
「ジークさん、一息入れたらどうでしょうか?」
遺跡から戻って1週間が経ち、ジークは遺跡から持ち帰った本を古代文字の辞書を片手に調べているのだが、古代文字と共通点はあるのだが、それでも今まで古代文字など勉強した事のないジークには難解である。ジークはオーバーヒート気味である頭を乱暴にかくと彼の様子にノエルは休憩して欲しいようでお茶を置く。
「ありがとう。ノエル」
「いえ、わたしにはこれくらいしかできませんし」
ジークはノエルにお礼を言うがノエルはジークの力になれていない事に申し訳なさそうに肩を落とす。
「いや、充分、助かってるよ。むしろ、そこで暇そうにしている役立たずに反省して貰いたいところだ」
「何よ? 店番してるでしょ。ここにお客が来ないのは私のせいじゃないわ」
申し訳なさそうなノエルの様子にジークは苦笑いを浮かべると、店の商品を眺めながら、自分に必要なものを物色しているフィーナに視線を送ると彼女は悪びれることなく、自分は店番をしていると答える。
「それで、何か見つかったの? ノエルの角が見えなくなった事とか、1つくらいわからないの?」
「……わかんねえよ。だいたい、古代文字だって、辞書を片手にようやく読めるくらいなんだ。それに加えて魔法式やそれ以外にも小難しい言葉、わかるわけないだろ。こんな片田舎の村にある辞書じゃ、専門的なものは全く分かんないんだからな」
「それって、胸を張って言う事?」
「張れるわけがないだろ。何もできなくて、情けなくなるよ」
フィーナは自分は調べ事をする気もないくせに、ジークの発言を責めるような視線を向けるが、ジークは彼なりに落ち込んでいるようで大きく肩を落とす。
「だいたい、遺跡探索って割には利益になるものもなかったし、手に残ったのはノエルの青い石と俺が手に入れた赤い石、後は薬瓶をいくつか持ってきたけど効果も何も分かんないし、使うには怖すぎる」
「そうよね。赤い石は遺跡の研究室のカギだから、売るわけにもいかないしね。薬瓶もジーク程度じゃ、調べられないだろうし」
「悪かったな」
ジークは遺跡で手に入れた薬瓶に視線を移すが効果もわからずに飾っているだけである。
「あ、あの。ジークさんがわからないなら、わかる人に聞くってわけにはいきませんか? 遺跡の探索で冒険者の方たちが来ているわけですし」
「いや、流石に……なぁ」
「流石に……ねえ」
ノエルは古代文字や魔法式に詳しい冒険者に本の解読を頼まないかと提案するがノエルがドレイクだとばれる可能性が出てくるため、ジークとフィーナは無理だと言いたげに顔を合わせた。
「ダメですか?」
「正直、無理。ノエルがドレイクだってばれる可能性がある事は極力避けたい。青い石の効果もいつまで続くかわからないし、青い石の事が乗っている個所が読み取れればさらに危険だ。それにこの本を持ち逃げされたら、あの遺跡が危なくなる。ノエルがドレイクだとばれて戦闘になっても面倒だしな」
「そうよね。現在、魔導銃が1丁になってジークも役立たずに近いし」
「……それもあったよ」
ジークは他の冒険者に本を見せられない理由をノエルに説明すると最近は、本の解読に集中していたため、壊れた魔導銃の事を忘れていたようで眉間にしわを寄せる。