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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
495/953

第495話

「落ち着け。クーが怖がる」


「フィーナさんは相変わらずだね」


フィーナの様子にクーは驚いたようでジークの後ろに隠れ、ジークは大きく肩を落とす。

ライオはフィーナの様子に苦笑いを浮かべるもジークのような脱力感はない。


「……悪かったわ。それであのクズは?」


「来客……」


クーの様子にフィーナは謝りはするものの、完全に頭に血が上っているのか、ライオの姿には気が付いてないのかジークの胸倉をつかもうとする。

ライオはその様子にカインの居場所を教えようとするがノエルが慌てて手で彼の口を塞ぎ、ライオはノエルへと視線を向けた。

彼女は目でフィーナにカインの居場所を教えるのは不味いと訴えており、ライオは状況を理解したようで小さく頷く。


「カインなら見回りだ。いつものようにふらふらしてるんだろ。ヒマなら探して来い」


「……仕方ないわね。帰ってきたら、ぶちのめしてやるわ」


「確実に返討ちだろ」


ジークはカインがフォルムの街中を視察していると平然と嘘を吐き、フィーナは街中を探し回るのは面倒だと思ったようでジークから手を放すと空いているイスに座った。

彼女の負け惜しみとも言える言葉にジークは小さくため息を吐く。

ノエルは余計な事は言わないで欲しいと言いたいのか自分の口を人差し指で押さえ、ジークは彼女から視線を逸らすとバツが悪そうに頭をかいた。


「ジーク、何か、隠してない?」


「別に何も隠してない。それより、レインとゼイは打ち合わせがあるとか言って出て行ったけど、お前は良いのか?」


フィーナは本能でジークが嘘を吐いているのか察したのか、ジークを睨みつける。

ジークはここでカインの居場所を話して応接室に乱入と言った事になっては困るため、フィーナを追い払おうとドアを指差す。


「別に私がいなくたって、レインが居れば進むでしょ」


「そうか? 合流したメンバーって上手く行ってるのか?」


フィーナは倒れ込むようにテーブルに身体を預けると自分がいる必要はないと言い、ジークはフィーナが居座る事にため息を吐くと話をカインから逸らそうと思ったのか探索班の様子を聞く。


「上手く行ってるんじゃない? ゼイがマスコット的な役割を果たしてるし」


「あー、何か言いたい事はわかる」


フィーナは特に考える事無く答えると自由奔放のゼイだが憎めない事もあり、ジークとノエルは顔を見合わせた後、苦笑いを浮かべた。


「それじゃあ、フィーナさんはヒマと言う事だね。それなら、フォルムを案内してくれないかな?」


「まぁ、ヒマと言えば、ヒマだけど……何で、ライオ様がフォルムにいるの?」


やる事がないフィーナにライオはフォルムの案内をさせようと思ったようで声をかける。

フィーナは声がした方向を向くとライオと目が合い、フォルムにいるわけにないライオがいる事に驚き、慌てて上体を起こす。


「カルディナ様に付いてきたみたいです」


「……本当に余計な事しかしないわね」


「あなたのような方に言われたくありませんわ」


ノエルは苦笑いを浮かべながら、ライオがフォルムにきた過程を簡単に説明する。

フィーナは眉間にしわを寄せると舌打ちをするが、カルディナはカルディナでフィーナにバカにされるのは許せないようでフィーナを睨みつけた。

カルディナからの視線にフィーナは睨み返し、2人の間には今にも殴り合いをしそうな空気が漂い出す。


「フィーナに言われたら、終わりだよな」


「ジーク、そんな事を言ってないで、止めなくて良いの?」


「カルディナ様、カルディナ様」


2人の睨みあいにため息を吐くジーク。

ライオはジークに2人を仲裁するように言うとジークは面倒だと言いたげに頭をかいた後にクーを2人の視線の間に動かす。


「クー?」


何が起きているかわからないクーは首を傾げるとカルディナの視線はクーに向けられた。

ジークはカルディナの目線がクーに移ったのを確認するとクーを引き寄せ、カルディナの目線は完全にフィーナからクーに移っているようで彼女の視線はクーを追いかける。


「勝ったわ」


「……フィーナ、お前、もう少し大人になれよな」


カルディナの視線がそれた事に勝利宣言をするフィーナ。

ジークはため息を吐くと手を伸ばしているカルディナに一時的にクーを預ける。

クーはジークから放れるのがさびしいのか目で訴えているが、ジークはフィーナとカルディナが暴れ回るのは勘弁して貰いたいため、クーから視線を逸らすと逃げるように調合鍋の様子を見に行く。


「逃げたね」


「逃げましたね。わたしも紅茶を淹れ直してきますね」


「私の勝ちですわ」


ライオはジークの姿にため息を吐くが、ノエルもおかしな騒ぎになる前にフィーナの分の紅茶を淹れ直すと席を立つ。

しかし、その身体はカルディナが羨ましいのか名残惜しそうであり、ノエルの様子にカルディナはノエルを見下すような視線を向ける。


「……何か、おかしな事で似てるね」


「クー」


「クーちゃん、なぜですか!?」


ライオはフィーナとカルディナを交互に見た後、小さく肩を落とす。

その時、カルディナの腕からクーは逃げ出し、周囲を見回すとジークは忙しいため、ライオの後ろに逃げ込む。

カルディナはクーが自分から逃げる理由がわからないようで悲痛な声を上げるが、クーがライオの影から出てくる事はない。


「クー、あんた、人を見る目があるわね」


「クー」


フィーナはカルディナの様子に楽しくなったのか、ライオの背後に隠れてるクーの頬を指で突く。

クーはフィーナの事は苦手としていないようで意味はわかってないが頷いた。


「わかってはなさそうだけどね。それで、フィーナさん、私の案内を頼んでも良いかい? 誰も忙しいと言って案内をしてくれないんだよ」


「案内ね……別にライオ様が見て回るようなものはないわよ。国境近い辺境の地だし」


ライオは背後にいるクーを引っ張り出して腕の中に収めるとクーの頭を撫でてフィーナに案内の件を聞く。

ライオに頭を撫でられるのは気に入っているのか鼻を鳴らすクー。

その様子を眺めながら、フィーナはライオの提案を聞くのは面倒だと思っているようでため息を吐いた。


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