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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第489話

「レインくんに少し話をしたんですか? それでカイン様はなんと言っていますか?」


ジークはテッドの診療所を手伝っているなか、いつものようにヒマを潰している患者たちだけになっており、手が空いたジークとミレットはテッドに少しレインに自分達が考えている将来の話をした事を告げた。

テッドは少し考えるようなしぐさをするとカインの考えを知りたいようでジークに質問をする。


「俺にはあいつの考えがわかるわけありません」


「まぁ、タイミングとかはカインさんに任せておけば良いんじゃないでしょうか?」


「……そうですね。私達が考えるより、カイン様に任せておいた方がいいですね」


ジークは首を横に振り、ミレットも悩んでいるレインの姿を見ていたため、直ぐに真実を話す事は止めた方が判断しているようで苦笑いを浮かべた。

テッドはレインには協力して欲しいと思っており、難しい表情をするがカインに信頼を寄せているため、直ぐに表情を和らげる。


「しかし、今日はヒマですね」


「それに関しては何と言って良いか、わかりませんね」


「と言うか、診療所を始めてここまでヒマなのは初めてかも知れませんね」


診療所の待合室にはジークが連れて来たクーが眠っており、ヒマつぶしにきている住人達は普段、見る事の出来ないドラゴンの子供の寝顔をノエルとともにのぞき込んでいる。

そのため、世間話くらいで診療室まで顔を出す住人達も診療室には入ってこない。


「……凄いな。クー」


「ですね。ただ、いつまで続くんでしょうか? ……申し訳ありません」


「ミレットさんは寝不足みたいですね」


こんな騒ぎになると思ってなかったようでため息を吐くジーク。

ミレットはジークの言葉に頷いた時、欠伸が漏れたようで顔を赤くして謝る。

普段、しっかりとしているミレットが見せた姿にテッドはくすくすと笑い、ミレットはバツが悪いのか視線を逸らす。


「ミレットさん、きついなら、食事当番、俺も戻りましょうか?」


「いえ、大丈夫です。それに昨日が特殊だったんだと思います」


「おっさんの娘、何かしたんですか?」


ミレットの様子にジークは自分が仕事を押し付けているせいだと思ったようだが、ミレットの疲れは昨晩、カルディナを泊めた事に関係しているようである。


「何と言うか、血の繋がりと言うものを思い知りました」


「……うるさそうだよな」


ラースの事を知っているミレットは改めて、カルディナがラースの娘だと思ったようで力なく笑い、ジークは昨晩のミレットの苦労が目に浮かんだようで大きく肩を落とした。


「とりあえず、カルディナ様が転移魔法を自分で使えるようになった時が怖いですね。知らない間にフォルムに来て、クーちゃんを勝手に連れて行かなければ良いんですけど」


「いくらなんでも誘拐はしないだろ……そう思いたい」


転移場所を決めてから、その地に転移できるようになるまではしばらく時間があり、対策を考えねいと行けないと思っているのかミレットは大きく肩を落とす。

ジークは頭をかきながらも転移魔法の悪用を考えてしまったようで眉間にはくっきりとしたしわが寄っている。


「その辺はカインさんが何か考えてくれると良いんですけど」


「そうだね。何か考えておくよ」


「……だから、気配を消してどこにでも現れるな」


ミレットは力なく笑うと診療所のドアの方からカインの声が聞こえ、3人がドアへと視線を向けると苦笑いを浮かべたカインが立っている。

ジークは今朝の事もあるため、大きく肩を落とすがカインが気にする様子はない。


「カイン様、何かありましたか?」


「これと言った事はありませんね。ただ、セスのやる気が起きないのでクーの様子を見に」


「……セスさんもか」


テッドはカインが訪れた理由を聞くと、カインは苦笑いを浮かべ待合室の方を指差す。

ジークは本日、ノエルも仕事にならないため、どうして良いのかわからないようで乱暴に頭をかく。


「まぁ、一過性のものだとは思うけどね。数日中に落ち着くよ」


「落ち着いてくれないと困るよ」


カインも困っているようで苦笑いを浮かべたままだが、ジークはいつになったらノエル達が落ち着くのか心配のようで大きく肩を落とす。


「カイン様もジークくんも大変ですね」


「そうですね……今日は酷く大変ですね。もう少し手伝ってくれる人が居れば良いんですけどね」


「そう思うなら、誰か有能な人間を集めてくれ。圧倒的に人手が足りてないんだよ」


2人の様子に苦笑いを浮かべるテッド。

カインは今日のセスが予想以上に仕事をしてくれないようであり、一瞬、遠くを見つめる。

ジークは振り回されている事をまだ諦めきれないようでカインの人脈でフォルムの統治を手伝ってくれる人間がいないのかと聞く。


「それに関してはなかなか難しくてね。これでもいろいろと考える事はあるんだよ」


「まぁ、協力者は選ばないといけないけどな」


フォルムと言う魔族の血が流れる場所に連れてくる人間は厳選しなければいけないようであり、誰を選ぶかは直ぐには判断できないようでため息を吐いた。

ジークは今回、カルディナが協力者になった事に不安しか感じてないようでカインを責めるような視線を向ける。


「言いたい事は何となくわかるけど、もう少し長い目で見てくれないかな?」


「そうですね。確かに頭に血は上りやすいみたいですけど、賢い子だとは思いますよ。それになんだかんだ言いながらも兄妹に見えましたしね」


「……ミレットさん、おかしな事は言わないでくれ」


カインは苦笑いを浮かべるとジークにカルディナの事を頼む。

ミレットもカルディナが優秀だと言う事は認めているようであり、カインの意見に同意を示すとクーの世話をする時のジークとカルディナの姿を思い出してくすくすと笑う。

その言葉をジークは心外だと言いたいのか大きく肩を落とし、拒絶する。


「まぁ、ジークはフィーナの面倒を見てたんだから、きっと上手くやれるよ。フィーナよりは確実に賢いから」


「それに関しては納得できるのがイヤだな」


「カイン様もジークくんも言い過ぎですよ」


カインはフィーナに比べればカルディナは可愛いものだと言い、ジークはフィーナとカルディナの似た部分に眉間にしわを寄せた。

テッドは2人の言葉が言いすぎだと間に割って入るがフィーナをフォローする言葉は続かない。


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