第486話
「……何か疲れるわ」
「そうですね」
殺気立ってるノエル、セス、カルディナの様子にフィーナは大きく肩を落とし、ミレットは苦笑いを浮かべる。
「落ち着け」
「3人ともあまりこの子の気持ちも考えないと嫌われるよ」
ドラゴンは殺気だっている3人に怯えたようでジークの背後に隠れ、ジークは大きく肩を落とす。
カインは名前1つでここまでの騒ぎになるとは思っていなかったようで苦笑いを浮かべて3人に落ち着くように言う。
「落ち着いていられません」
「落ち着かないなら、冷静な人間で名前を決めるよ」
「カイン、あなたになんの権限があってそんな事を言うんですか!!」
しかし、カインの言葉に泊まる気配などなく、カインはため息を吐くと3人から名前の決定権をはく奪すると言う。
その言葉は3人に取っては我慢できない言葉であり、セスはカインを威嚇する。
「食費等、ねん出するのは俺だから」
「……確かに」
カインは笑顔でフォルムに滞在中のドラゴンの食費は領主である自分であり、少なくとも口を出す権利はあると笑う。
ジークはカインの味方をした方が上手くまとめてくれると思ったようでカインに同意を示す。
フォルム1の権力者とドラゴンの親である2人の言葉に3人は1度、言葉を飲み込んでしまう。
「そう言えば、カルディナ様はそろそろ王都に戻らなくても良いんですか?」
「そんなものは後回しですわ!!」
「……いや、後回しにしたら不味いだろ。今日は何も言ってきてないんだし」
3人が黙った事でミレットはさらに力を削ごうとカルディナを王都に帰そうとする。
カルディナは王都に帰るより、ドラゴンの相手の方が大切だと言い切り、ジークは大きく肩を落とす。
「流石に連絡も無しにカルディナ様を預かるわけにもいかないから、セス、冷静になるためにカルディナ様を連れて王都に行って来て、フィーナは2人について行って欲しい。後、ミレットさんは2人が戻ってくるまでノエルを部屋に閉じ込めて」
「お、お兄様、なぜですか?」
「名家のお嬢様を無断で預かって騒ぎになっては困りますので、セス、この意味は理解できるよね?」
カインは冷静にするためにもドラゴンから距離を取らせる事を重要として、指示を出す。
カルディナは納得がいかないようで声をあげるがカインは反対意見を切り捨てるとセスへも逆らう事は許さないと言う視線を向ける。
「仕方ないわね」
「……わかりましたわ。カルディナ様、1度、王都に戻って許可を貰って来ましょう」
フィーナはジークもレインも動けないため、2人の護衛しないといけないと理解したようでため息を吐くと剣と鎧を取りに部屋に向かって行く。
セスは今、カインに逆らうと名前の決定権は絶対に与えられないためしぶしぶ頷いた。
「その代わり、私とカルディナ様がいない間にノエルを優位に立たせないようにしてください。ジーク、ノエルの色香に負けるんじゃありませんよ!!」
「……この状況でそんな気になるか」
セスは自分がいない間にドラゴンの名前を決める事は絶対に許さないとジークに釘を刺す。
ジークは大きく肩を落とすとドラゴンを抱き上げ、ノエルから離れるようにソファーに移動する。
「ジークさん、わたしも」
「はい。ノエルはこっちです。セスさん、心配なら、ノエルの部屋に魔法でカギをかけたらどうですか?」
「そうですわね」
ノエルはジークを追いかけようとするが彼女の首根っこをミレットがつかみ、ノエルを閉じ込めるのをセスに頼むとセスとカルディナは躍起になっているのか腕をまくり、ノエルとミレットを先導するようにノエルとフィーナの部屋へと向かって歩き出す。
「ま、待ってください。あ、あう」
「ノエル、行きますよ」
ノエルは閉じ込められるわけにはいかないため、必死の抵抗を見せるがミレットは笑顔で彼女の意見を却下し、部屋に引きずられて行く。
「……疲れるな」
「本当だね。取りあえず、ジークはドラゴンの生態についての勉強かな? 俺は後片づけでもしようか?」
「何か悪いな」
4人が居間を出て行く様子にジークは大きく肩を落とす。
カインは苦笑いを浮かべると片付いた食器をキッチンに運び始める。
その姿にジークは悪いと思ったようでカインに謝るとカインは首を横に振った。
「それでは行ってきますわ」
「……ほら、怯えてる」
ノエルを部屋に閉じ込めたセスとカルディナはドラゴンに挨拶をしてから、王都に転移しようと思ったようで居間に顔を出す。
カルディナは別れを惜しむようにドラゴンを抱きしめようとするが、既にドラゴンは殺気だった3人に苦手意識を持っているようでジークの背中に隠れてしまう。
カルディナはそんなドラゴンの様子にショックを隠せないようで大きく肩を落とすと涙目になるがジークは今まで忠告していた事を無駄にした彼女をフォローする事はない。
「とりあえず、ジーク、ミレットさん、そっちは任せるわよ。セスさん、早く行きましょう」
「え、ええ」
フィーナは面倒な事は先に終わらせたいようでため息を吐くとセスに声をかける。
しかし、セスもドラゴンに苦手意識を持たれた事はショックなようでその反応は鈍い。
「ねえ、あんたが許可を貰ってきた方が早くない?」
「ダメ。カルディナ様、本人が動かないと面倒な騒ぎになった時に困るから」
「セスさん、早くしてよ。私達も明日の仕事があるんだから」
フィーナは役立たずと化している2人の様子にカインに王都に行けと言うが、カインは首を横に振る。
カインの言葉にフィーナは大きく肩を落とすと明日の事もあるため、セスを急かすと彼女は頷き、転移魔法を使う。
「……やっと行ったか?」
「ジーク、お疲れさまです」
「本当ですよ」
ようやく静かになったとジークは肩を落とすとミレットは苦笑いを浮かべて彼に声をかける。
「まぁ、問題はカルディナ様は今日も泊まるつもりでくるだろうし、部屋をどうするかだね。ジークがここで寝ると絶対に拉致されるだろうから」
「セスさんの部屋に突っ込めば良いだろ。そして、カインが魔法でカギをかける」
「そうですね。それが安全そうです」
静かになった居間ではあるが考えなければいけない事は多く、カインは大きく肩を落とすとソファーに座りこむ。
ジークは自分達の疲労など理解できていないドラゴンの鼻先をくすぐり、首を傾げるドラゴンの姿に3人の表情は緩む。




