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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
484/953

第484話

「フィーナ、落ち着け」


「……わかったわよ」


ジークはため息を吐くとフィーナの手を外させ、フィーナはレインが何も知らないため、言っても仕方ない事は理解できているようで乱暴に頭をかくと自分の席に座り直す。

その姿は誰の目から見ても不機嫌であり、レインはフィーナの気分を害した理由がわからないため、首をひねっている。


「ジーク、フィーナさんは何を怒っているんですか?」


「フィーナにもフィーナの考えもあるからな。それに俺もフィーナよりの考えだし」


「なぜですか?」


考えても理解できないレインはジークに助けを求めると、ジークはドラゴンに食事を与えながらフィーナの味方をするときっぱりと言う。

レインはフィーナだけではなく、ジークも魔族と戦わないと言う選択をしている意味がわからないようであり、眉間にしわを寄せて聞き返す。


「俺は薬屋だからな。ケガ人や死人が出ないにこした事はないだろ」


「ですね。病気や生活の上で必要なケガの治療は必要ですけど、殺し合いの治療はあまり」


ジークは1度、ノエルと視線を交わすと魔族の事は隠しながら、医療に関わる者としての答えだと言う。

その言葉にミレットは同じ立場としてジークに同意を示した。


「しかし、魔族を根絶やしにしなければいつ、誰が襲われるかわかりません。私達は民を守るために剣を抜きます」


「……」


「フィーナ、レインも落ち着け」


レインは同意が求められなくとも騎士として魔族を討伐する事が使命だと思っているようできっぱりと答える。

その答えに再度、レインにつかみかかろうと席を立とうとするとフィーナ。

カインは感情的な実妹の性格などお見通しのようで彼女の行動をいさめる。


「……何でよ?」


「考え方ってのは人それぞれだからね。フィーナの考えもレインの考えも正しいよ。その中で一応、領主としての俺の考えも聞いて貰おうかな?」


「わかりました」


フィーナの敵意はカインにまで向けられ、彼女はカインを睨みつけた。

カインは苦笑いを浮かべると両方の意見を肯定した後、表情を引き締める。

その表情には有無を言わせない強さがあり、レインは小さく頷いた。


「俺は無駄な争いをするのは反対。現状ではアンリ様の件は噂でしかないしね。それに魔族だからと決めつけるのは横暴すぎる」


「横暴?」


「冷静になりなよ。アンリ様の呪いが魔族はまったく関係なかった時、魔族が知らないと答えたらレインは信じられるかい?」


カインは決めつけるのは良くないと首を横に振るが、レインは意味がわからないと首を横に振った。

カインはそんな彼に1つの質問をするとフィーナに1度、視線を向けた後にジークに目配せをする。

ジークはカインの目配せにフィーナを押さえつけるようにと言う意味があると感じ取ったようで小さく頷く。


「信じませんね」


「だろうね。なら、悪意を持った人間が魔族に罪を着せているとしたら? 家族や友人を殺された魔族は人族をどう思う? 同じように魔族が悪意を持って人族をだました時、人族が魔族に思う感情は?」


「それは……」


きっぱりと答えるレイン。

その様子にカインは淡々とした口調で言う。彼の口調からも感情は捨て事実のみを見定めろと言っている事が理解できる。

レインはカインの様子に小さく息を飲むが直ぐに答えが出てこないようで視線を逸らす。


「結局は種族なんか関係なく、お互いを信じられるかだと思うよ。後は状況を見て、真実を見極める目があるかどうか。それを見極められないのは見極める者が未熟だから、そして、それがまた新たな争いを起こす。違うかな?」


「そうだな」


カインは自分の言葉を完全に否定できないレインの姿に安心したようで小さく表情を和らげるとレインに成長を促す。

彼の言葉はレインにだけではなく、この場にいる者や全ての者達に言っているようにも見える。

ジークはカインの言いたい事を理解しており、ノエルと視線を交わすとそばにいるドラゴンの鼻先をくすぐる。

ドラゴンは気持ち良いのか喉を鳴らす。


「……カインは私が間違っていると言うのですか?」


「さっきも言ったけど、考え方は人そろぞれだからね。ただ、1つでも疑問を持ったなら、考えたら良い。人が出した答えに乗っかるんじゃなく、自分で悩み考えだしたレインの答えの方が価値があると思うけどね」


「そうですか……すいません。部屋に戻ります」


カインの問いはレインを悩ませるには充分なものであり、レインはカインに答えを求める。

しかし、カインは苦笑いを浮かべると答えはレインが出すべきだと言う。

レインはジークやミレットと言った命に関る者達の意見、カインの考えに頭が処理しきれないのか、考えをまとめたいようで席を立ち、自分の部屋に戻ってしまう。


「あ、あの」


「ノエル、ストップ」


「で、ですけど」


ノエルはレインを引き留めようとするが、カインが彼女に座るように言う。

レインの事を信じたいノエルは焦っているのか表情を曇らせて、レインが出て行ったドアへと視線を向けた。


「答えを出すのは自分自身、ノエルとジークもそうやって今の考えに至ったわけだよね? もっとレインを信じて欲しいな。堅物だけど、何が正しいかを見極める力は持っているよ」


「そうじゃないと、ルッケルの騒ぎの後にお前に何か付いてこないよな」


「何かって言うのは酷いね」


カインはノエルにレインを信じて欲しいと頭を下げる。

ジークはカインへと悪態を吐くとカインは苦笑いを浮かべた。


「……普通に考えれば王子2人を囮にはしませんからね。そんな事を平気な顔をしてやれる人間の後は追いかけませんわ」


「でも、必要な事だからね。シュミット様の本心を聞けたのは嬉しい誤算だったけど、不必要な人間には舞台から降りて貰わないといけなかったからね。それにセスも付いてきてくれたじゃないか?」


「べ、別に付いてきたわけではありませんわ。私がフォルムで仕事をしてるのはたまたまですわ」


セスはドラゴンへと視線を向けながらも、状況が状況なだけに仕方ないとため息を吐く。

カインは苦笑いを浮かべたまま、セスが自分達の考えに賛同してくれた事が嬉しいと言う。

カインの言葉にセスは慌ててそっぽを向くが、ジークとミレットはそんな彼女の様子を見て生温かい目で見つめている。


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