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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
481/953

第481話

「仲が良い事で」


「本当ですね」


「……」


カインとセスの様子にジークは苦笑いを浮かべるとミレットは小さく笑みを浮かべて頷いた。

しかし、カルディナはまだ割り切れていないようで2人が消えて行った場所を寂しげに見ており、彼女の様子に気が付いたジークとミレットはお互い顔を見合せて肩をすくめる。


「ジーク、結局、このドラゴンの名前って、どうするの? セスさんの様子から見てもしばらく、面倒見ないといけないんでしょ? いつまでも名前がないのは面倒よ」


「な、名前? ジーク、この子の親の位置はあなたに譲りましたが、ふ化に立ち会ったのは私です。だから、名前は私が付けるべきだと思います!!」


その時、空気を全く読まないフィーナが先ほど、中断したドラゴンの名前を引っ張り出し、カルディナはドラゴンの名前を決めたいようで目を輝かせてジークに詰め寄り、名前の決定権を主張し始める。


「……元気になったのは良いんだけど、フィーナ、お前はそれで良いのか?」


「何よ?」


「いや、良い。しかし、名前ねえ」


うるさく騒ぎたてるカルディナの様子にジークはため息を吐くとカルディナの心境などまったく気にしていないフィーナへと視線を移す。

フィーナはジークの視線の意味がわからないものの、小バカにされている事は本能で察したようでジークを睨みつけた。

ジークは彼女の様子にため息を吐くとドラゴンの名前をどうするべきかと首をひねる。


「決められないなら、私が付けると言っているではありませんか!!」


「いや、それでも良いんだけど、ノエルとセスさんがいないところで名前を付けると後で怒られる気がする」


「……ジーク、あんた弱いわね」


カルディナは自分が名付ける事を主張するが、ジークの心配事は今、この場にいない2人の意見であり、ジークの発言にフィーナは情けないと言いたいのか大きく肩を落とした。


「俺に決定権があると思うか? 現状でこの屋敷は男の立場が弱いぞ」


「た、確かにそうですね」


カインと騎士でるレインは女性陣を立てる事が多く、ジークもフィーナ以外には頭がおがらない事も多いため、屋敷での決定権は女性陣が握っているとも言える。

そのため、ジークは苦笑いを浮かべるとレインは同じ事を思ったようで苦笑いを浮かべて頷いた。


「そう言えば、ノエルはキッチンですか?」


「はい。夕飯の準備をしています」


「そうですか? それでは私はノエルの手伝いをしてきますから、フィーナとレインさんは順番に身体の埃を落として来てください。カルディナ様、名前の件は全員がそろってからお話しましょう。この場にいる全員とこの子の納得のいく名前を決めないといけませんから」


ミレットは2人の様子に小さくため息を吐いた後、キッチンをノエルだけに任せておくのは時間がかかってしまうため、場を仕切るとキッチンに移動していく。


「それもそうね。レイン、悪いけど先に浴場、使わせて貰うわよ」


「はい。どうぞ」


フィーナはお腹が減ってきたようで素直にミレットの言葉に従い、居間を出て行き、居間にはジーク、レイン、カルディナの3人とジークの頭の上で眠っているドラゴンが取り残される。


「……」


「……その獲物を狙うような目をどうにかできないのか?」


ミレットに名前の事は保留にされたものの、カルディナのドラゴンを抱きしめると言う目標は失われておらず、カルディナは目をらんらんと輝かせて、ジークの頭の上のドラゴンを狙っている。

ジークはこの状況について行けないため、大きく肩を落とすとカルディナに落ち着くように言う。


「ジーク、今更なんですが、どうして、頭にドラゴンを乗せたままなんですか?」


「どうしてって、こいつがこの場所を気に入っているから?」


「眠っているんですから、降ろしてもよくないですか? 頭の上に乗せてると動きにくいでしょう?」


レインは屋敷に戻ってきてからずっと不思議に思っていたようでジークに頭からドラゴンを降ろさないのかと聞く。

レインに言われてジークは気が付いたようで眉間にしわを寄せると頭から眠っているドラゴンを降ろし、その顔を覗き込む。


「ずいぶんとぐっすり寝てるな」


「ジーク、それだけぐっすりと眠っているのです。私に抱かせてくれても良いではないですか?」


ジークはそこで初めてドラゴンの寝顔を見たようで苦笑いを浮かべるとカルディナがドラゴンを渡せと手を伸ばす。


「別に渡すの構わないんだけどな……」


「なぜ、考え込むのですか? 渡しなさい。庶民が私の言う事を聞くのは当然の事です」


カルディナの様子からドラゴンを雑に扱う事は心配していないジークだが、何か引っかかるようであり、眉間へしわをよせている。

そんな彼の様子に思い通りにならない事に腹を立ってきたのか、カルディナはジークを庶民と見下した。

彼女の横柄な態度にジークのこめかみには青筋が浮かびだしている。


「ジークもカルディナ様も落ち着きましょう。ジーク、どうして、カルディナ様にドラゴンを預けないんですか?」


「まずはせっかく寝てるんだし、いじくりまわして起こしたら可哀想だろ? ふ化してからずっと寝てるって事はふ化にかなりの体力を使ったって事だろうし、正直、今の状態だと心配だ」


「た、確かにそうですね」


ジークは興奮状態のカルディナにドラゴンを預けるのは心配である事を素直に話すとレインはカルディナへと視線を向けた後に苦笑いを浮かべた。


「そ、そんな事は……」


「だから、声をあげるな。カルディナ様もノエルも、セスさんも妙に興奮してるからな」


カルディナはドラゴンを起こすような事はしないと主張しようとするが、声が大きくジークは彼女の口を手で塞ぎ、ため息を吐く。

ジークに言葉を遮られ、カルディナはドラゴンを触らせて貰えない理由を理解できたようでこくこくと頷いた。


「預けるのは構わないけど、起こさないようにな。後はノエルとセスさんが来た時はケンカしない事、わかったな?」


「……わかりましたわ」


「それじゃあ、しばらく、見ててくれ。俺はこれをある程度読まないといけないから」


ジークはカルディナに言い聞かせるように言うとカルディナはジークに上から言われてムッとしたようだが、今はドラゴンに触る事が最重要のようで声量を落として頷く。

その姿にジークは苦笑いを浮かべるとフィリムから渡された研究資料の厚さに大きく肩を落とした。


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