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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
480/953

第480話

「ただいま……ジーク、それ何?」


「見ての通りだ」


ジークが1人でドラゴンの育て方の資料を読んでいるとフィーナ、レイン、ミレットの3人が屋敷に帰ってくる。

フィーナはジークの頭の上で眠っているドラゴンを見て、眉間にしわを寄せるとジークは苦笑いを浮かべた。


「あの卵はこの子の卵だったわけですか?」


「ドラゴンですか? こんな小さいのは初めて見ました」


ミレットは直ぐに昨日の卵からふ化したものだと気づき、眠っているドラゴンの頬を指で突き、レインはドラゴン自体は見た事があるようで1度、顔を覗き込んだ後、苦笑いを浮かべる。


「レインは見た事があるのか?」


「ええ、王都にはたまに騎竜を持った冒険者も訪れる時がありますから、何度か。やはり、噂になりますしね。興味がわきまして」


「騎竜? 大きくなったら、背中に乗れるの?」


ジークはレインの言葉に首を傾げるとレインは好奇心に勝てなかったと照れくさそうに笑う。

フィーナはドラゴンに乗っている冒険者がいると聞き、興味が湧いたようでドラゴンの顔を覗き込む。


「……ずいぶんと気持ちよさそうに寝てるわね」


「フィーナ、寝てるんだから邪魔するなよ」


「この子はジークの頭の上がお気に入りみたいですね」


しかし、ドラゴンは目を覚ます事は無く、反応がない事につまらないと言いたげにため息を吐く。

ガサツなフィーナが何かしでかさないか心配のようで大きく肩を落とすジーク。

ミレットはジークとドラゴンの様子にくすくすと笑う。


「それでジーク、何で、ドラゴンを頭の上に乗せてるのよ?」


「何か、親だと思われたらしい」


「……どう言う状況よ?」


卵がドラゴンの卵だった事は理解したようだが、ジークが頭の上にドラゴンを乗せている理由はわからないため、理由を尋ねるフィーナ。

ジークは他に言いようがないため、簡潔に答えるがフィーナは意味がわからずに眉間にしわを寄せた。


「刷り込みと言う奴ですね。ジークさん、そう言えば、この子の名前は何と言うんですか?」


「名前? ……決めてないですね。そんな時間、無かったから」


ジークの簡潔な説明に直ぐに察しがついたミレットはドラゴンの頬を指で突きながら、ドラゴンの名前を聞く。

ジークはミレットに言われて名前を決めていない事を思い出し、困ったように首筋を指でかく。


「時間がなかった?」


「あぁ、何か、ノエルとおっさんの娘に捕まって、決める時間がなかった。名前か? ……俺が決めても良いのか?」


「ジークの事を親だと思っているなら、ジークが決めるのが妥当ではないでしょうか?」


ジークはドラゴンに魅了されたノエルとカルディナに挟まれており、おかしな疲労がたまっていて気が回らなかったと肩を落とすと自分が名付け親になって良いのかと言う。

レインはジークとドラゴンの関係を見れば、ジークが名づけるべきだと頷くがジークの表情はどこか優れない。


「どうかしたの?」


「俺が名前を付けるとノエルとおっさんの娘に怒られそうな気がする」


「……どんな心配事よ」


ジークの心配事はノエルとカルディナであり、大きなため息を吐くとフィーナは意味がわからないと眉間にしわを寄せた。


「そう言えば、カルディナ様はフォルムに来ているのですか?」


「あぁ、今は中庭でフィリム先生と一緒にカインとセスさんに転移魔法を教わってるよ」


「ジ、ジーク、何をしているのですか!!」


何度かジークの口から出るカルディナの名前にレインは首を傾げるとジークは中庭にいると言った時、タイミング良くカイン達が居間に戻ってきたようでドラゴンを囲んでいるフィーナ達を見てカルディナが声をあげる。


「何って?」


「な、なぜ、ミレット様には頬を触らせているのですか? 私には触らせてもくれなかったのに」


「……いや、勝手にノエルと威嚇しあってただけだろ」


カルディナはドラゴンに自分が触れていないのに後から来たミレットが触れている事が不満のようで頬を膨らませるとジークに詰め寄り、ジークは言われのない非難に大きく肩を落とす。


「ドラゴンは人気だねえ……まだ、飼って良いって言ってないのに」


「カイン、何を言っているのですか? こんな小さい子を見捨てるのですか!!」


「そうです。例えお兄様でも、そんな事は許せませんわ!!」


カルディナの様子にカインは苦笑いを浮かべた後に黒い冗談を言うとセスとカルディナに責められる。


「……何なんだろうな? この空気」


「そうね。だけど、ジーク、これ、本当に育てられるの? 何、食べるの? 私達と同じもので良いの?」


予想していなかった2人からの攻撃にカインは珍しく困ったような表情をしており、ジークは意味がわからないようで遠くを見つめるとフィーナはドラゴンの頬を突きながら、ドラゴンのエサについて聞く。


「ドラゴンは雑食だから、問題はない。ただ、大きくなってくると食費を維持するのが大変だろうな」


「……ある程度、大きくなったら、エルト王子に支援して貰おう」


フィリムはドラゴンの顔を覗き込むと食料については問題ないと答えるが、食費はかなりかかるようであり、ジークは自分がそれほど収入がない事を理解しているため、最悪の場合はエルトに支援して貰おうと言う。


「フィリム先生、お久しぶりです」


「あぁ、息災のようだな……トリスの息子、2人はどうやら無理そうだから、ワームに送ってくれ」


「わかりました。レインの話を聞くと珍しいとは言え、問題はなさそうですし、行きましょう」


ミレットはフィリムと面識があるため、挨拶を交わすがフィリムは返事をするとジークにワームに送れと命令する。

ジークも少しだけ、静かな場所に移動したくなったようで素直に頷き、立ち上がった。


「先生、俺が行きます。ジーク、レイン、悪いけど、ここは任せるよ」


「カイン、待ちなさい。話はまだ終わっていません!」


その時、セスとカルディナに責められていたカインは逃げ出したくなったようでフィリムの隣に立つと転移魔法の準備に入る。

その彼の肩をセスがつかむと転移魔法が発動してしまい、カイン、セス、フィリムの身体を淡い光が包み込み、光の球になって飛んで行ってしまう。


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