第48話
「あの。2人ともわたしの頭がどうかしたんですか?」
「無いのよ。角が」
「でも、有るんだよ」
ノエルは2人の様子に首を傾げるとジークとノエルは両腕を前に組んで、首をひねっている。
「角が……ありますよ。きちんと2本」
「あぁ。有るんだよ。でも、見えないんだよ」
ノエルは自分の頭に手を伸ばし、角を確認するとジークの眉間にしわを寄せて、目視できなくなっている事を話す。
「でも、有りますよ」
「そうよ。有るのよ。だから、意味がわからないのよ」
ノエルは自分の頭を見る事が出来ないため、手で触れた事のみで言い、フィーナは大きく肩を落とした。
「えーと、とりあえずは角が見えなくなったんで目的は果たしたんじゃないでしょうか?」
「……いや、確かにそうなんだけど、角が見えなければノエルがドレイクだとはばれないと思うけど、どうやったかがわからないんだよな。どうして、角が見えなくなったかわからないと何かあった時に困るだろ」
ノエルはこれで村で過ごすための問題はなくなったと笑顔を見せるが、ジークはノエルほど楽観的に物事を捕えられないようで眉間にしわを寄せたまま、角が見えなくなった理由を考え始める。
「えーと、いつから、ノエルの角が見えなくなってた? ……って、言っても気にしてなかったから、わからないな」
「まぁ、そうね」
ジークはノエルの角がいつから見えなくなったか考えようとするが、ジークもフィーナも気にもかけていなかったため、答えは出ない。
「とりあえずは順を追って行くにしても、何もないわけだしな。俺達は使える物を探していたわけだし、これと言って目立った物もなかった……これ?」
「……そう言えば、光を放ってたわよね」
ジークは状況を確認するために自分達の行動を巻き戻して考えようとするが、直ぐに自分の手の中にある青い石に気づき、フィーナは呆れたようで肩を落とす。
「魔力があるって言ってたし、これが原因か?」
「そうだとしても使い方がわからないのよね。何で、さっき、光り出したのよ」
ジークは青い石を覗き込むが、先ほどとは違って光が漏れる事はなく、フィーナは不思議そうにジークから青い石を取り上げる。
「とりあえずはこの石に原因がありそうなのよね。それなら、ノエルが持っていた方がいいかな?」
「そうですね」
フィーナは青い石を見上げて見るが、何も変化はなく、つまらなさそうにため息を吐くとノエルに青い石を手渡す。
「まぁ、結局は他の手を探さないといけないんだから、一時的にでも誤魔化せるから良いのか?」
「そうです。あまり、心配しなくても大丈夫ですよ」
「……いや、俺はここまで楽観的に捕えられないんだけど」
「ソレニツイテハオイオイシラベロ。コレヲモッテイケバナニカワカルダロ」
ジークは納得がいかないようだが、調べる事もできないため、ため息を吐くとギドが魔術師の本を2冊、ジークに渡す。
「これ?」
「コノバショニコレルニンゲンモマゾクモカギラレテイルンダ。ソレガヨメルヨウニナレバツカエルモノモワカルダロウ。ソレヨリ、ワレラハソロソロカエルゾ。ココニハワレラニヒツヨウナモノハナイカラナ」
「……そうだな。今のところ、価値がわかるものもないし、ノエル、フィーナ、俺達も戻るぞ」
ギドは遺跡の探索をしてもこれ以上の収穫はないと判断したようであり、遺跡を出ると言うとジークはノエルを村に住まわせるための目的は達したが収穫が微妙なため、肩を落としながら、ノエルとフィーナに声をかける。
「そうね」
「はい。帰りましょう」
そんな、ジークの様子を気にかける事なく、2人は頷くと遺跡を出るために歩き出す。