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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第477話

「……まともだと思っていましたのにあれですわね」


「まぁ、誰にだってそう言うところもあるだろ……外さないと飲めないか?」


ノエルとフィリムはドラゴンの事について討論を始め出しており、研究室の隅にあった黒板までも引っ張り出している始末である。

そんな2人の様子にカルディナは縄で縛られて動けない事もあり、ソファーの上で大きく肩を落とした。

ジークは長くなりそうだと思った事もあり、紅茶を淹れ直してきたようでカルディナの前に置くが彼女の手は縛り付けられたままのため、気まずそうに頭をかく。


「そう思うのでしたら、早く外しなさい」


「あぁ、その代わり、逃げるなよ。連れて帰らないとカインに何を言われるかわからないしな。何より、この状況で1人にされるのは避けたい」


「……言いたい事はわかりますわ。逃げませんから外しなさい」


カルディナは縛られた両手を上げ、ジークを威嚇するように言う。

ジークは頷くとノエルとフィリムがおかしな空気を出している研究室に1人で取り残されたくないため、カルディナに釘を刺す。

カルディナは眉間にしわを寄せるが、今、ここで逃げ出す事を考えると縄が外して貰えないと思ったようでため息を吐くとジークの提案に頷いた。


「その代わり……変なところを触ったら殺しますわ」


「触らない……他は自分で外せるな」


ジークは彼女の両手を縛っている縄を外そうと手を伸ばすとカルディナはジークへと疑いの視線を向ける。

言われのない疑いの視線にジークはため息を吐きつつも縄を解き、カルディナの正面のソファーに腰を下ろす。


「……まったく、後が残ったらどうするのですか?」


「治癒魔法で治せば良いんじゃないのか?」


「私は神聖魔法も精霊魔法も使えませんわ」


「それは悪かったな」


カルディナは縄を解き終えると直接、縄が当たっていた個所は縄ですれたようで赤くなっており、ぶつぶつと文句を言っている。

その様子にジークは苦笑いを浮かべるとカルディナが魔術師であるため、治癒魔法を使ったらどうかと聞く。

カルディナは治癒魔法が苦手なようでジークに言葉にムッとしたようで彼を睨みつけるとジークは自分の失言を素直に謝り、カルディナの腕へと手を伸ばす。


「何をするつもりですか!! この変態!!」


「……違うから、えーと、ただの擦り傷みたいだから、ここら辺で大丈夫か? 後でノエルに治癒魔法をかけて貰おう」


ジークの突然の行動にカルディナは声をあげるが、ジークはカルディナのキズの状態を確認すると塗り薬を取り出して彼女に渡す。


「……大丈夫なのですか?」


「疑うなら使わなくても良い……しかし、これ、本当にドラゴンの卵なのか?」


手の上に乗った塗り薬にカルディナはジークに何か裏があるのではないかと思っているのかジークと塗り薬を交互に見る。

彼女の様子にジークは小さくため息を吐いた後、テーブルに置いたままのドラゴンの卵へと手を伸ばし、軽くからを叩きながら言う。


「それに関して言えば、間違いないと思いますわ。性格に難はありますが、生物学で言えばあれに敵う者はハイムにはいませんわ」


「そうか……」


「なぜ、卵を隠すのですか?」


カルディナは何かを決心したように小さく頷くとジークから貰った塗り薬を手首に塗りながら、フィリムの実績を話す。

ジークは目の前の卵を見ながらまだ信じられないようであるが、何かあったのか卵を自分のソファーの隣に置く。

その姿はカルディナの目には怪しく映ったようであり、ジークに疑いの視線を向けた。


「何もないぞ。気にしないでくれ」


「本当ですか? 何もないなら、私にも見せていただけますか? 実際、ドラゴンの卵になど遭遇する機会などありませんから、後学のために」


ジークは彼女の問いに平静を装って答えるが、その態度がさらにカルディナの疑いを大きくしているようでジークに卵を渡すように手を伸ばす。


「いや、ドラゴンの卵なんだ。オズフィム家のお嬢様に何かあったら、おっさんに悪いし」


「……何かありましたわね。見せなさい」


ジークの目はどこか泳いでおり、カルディナは眉間にしわを寄せて年上であるジークに悪戯をした子供を叱りつけるように言う。


「いや、何かあったと言うか……これって、産まれると思うか? それとも、さっき、叩いたからかな?」


「ひび? ドラゴンの卵はかなりの硬度があると聞きますし、あなたのような人が叩いたからと言ってひびが入るとは思えませんが……確かにひびがありますわね」


ジークは観念したようで卵をテーブルの上に戻すと先ほど、ジークが軽くたたいていた場所に小さなひびが入ってきている。

ジークは自分が原因なのではないかと思い、どうするか悩んだようだがカルディナはひびを眺めながら首を横に振った。


「そうなると……産まれるって事か?」


「……そうなってしまいますわね」


「ちょ、ちょっと待った。ノエル、フィリム先生!!」


「ジークさん、黙っていてください!!」


「邪魔をするな」


ジークは予想していなかった状況に眉間にしわを寄せ、カルディナもまさかドラゴンのふ化に立ち会おう事になるとは思っていなかったようでどうして良いのかわからずに難しい顔をしている。

その時、小さなひびが広がり始め、ジークはドラゴンのふ化と言う絶対に立ち会う事のない状況に何をして良いのかわからずにノエルとフィリムに助けを求めた。

しかし、ノエルとフィリムはジーク側の状況など理解しておらず、ノエルとフィリムはこちらを向く事無く、ジークに黙っているように言う。


「どうしましょうか?」


「どうすると言ってもな。ドラゴンのふ化って見てて大丈夫なのか? いきなり、爆発するとかはないよな?」


「……流石に爆発はないでしょう」


2人の様子にカルディナは小さくため息を吐くとジークは眉間にしわを寄せて卵の状況を見守ろうとするが、ドラゴンのふ化に何が起きるかわからないため首をひねった。

カルディナはジークにくだらない事を言うなと言いながらも立ちあがり、ソファーの影に隠れる。


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