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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第473話

「……それでジーク、ノエル、私に何のようだ? 私も忙しいのだが」


「あぁ、少し待ってくれ。おっさんの娘が起きないと二度手間になりそうだからな」


カインの研究室に移動するとシュミットはソファーの埃を払い座ると先に王城に戻ったエルトとライオが心配のようで眉間にしわを寄せた。

シュミットの様子にジークは彼の考えている事が理解できたのか苦笑いを浮かべるとシュミットの対面のソファーに気を失っているカルディナを寝かせる。


「二度手間?」


「あぁ、ちょっとな……ノエル、少し片付けるか?」


「そうですね」


シュミットはカルディナを連れてきたのは気を失ってしまったためだと思ったようでジークの言葉に首を傾げた。

ジークは主がいなくなってしばらく時間が空いてしまい、汚れてしまった研究室を見回して頭をかき、シュミットを待たせながらノエルと2人で掃除を始めようと相談し始める。


「……まさか、私に掃除を手伝わせようとしているわけではないだろうな?」


「流石にそんな事はしない。あんまり、エルト王子に知られたくない事だから、シュミット様と人選的に不安だけどおっさんの娘に協力して貰わないといけないんだよ。それに長話だったし、お茶くらい飲みたいだろ」


自分を人手として呼んだと思ったようでシュミットは不機嫌そうな声で言うが、ジークは研修室に備え付けられた小さめのキッチンを覗くと持ってきた紅茶とお茶菓子を手に笑う。


「確かにのどは渇いているが」


「シュミット様、少し待っていてください」


シュミットはジークの笑顔に毒気を抜かれたのか小さくため息を吐き、ノエルはジークにお茶の用意を任せて簡単に片付けようと思ったようでパタパタと部屋の中を動き回り始める。


「……美味いな。エルト様が好むわけだ」


「そんなに美味いか?」


紅茶の用意が終わり、簡単に片付けられたテーブルを囲む。

シュミットはエルトからジークとノエルが淹れる紅茶の味を口うるさく聞かされているようで驚いたような表情をする。

ジークはシュミットがお世辞を言う事はないと思っているようであり、普段から飲んでいる紅茶がそこまでのものかわからないようで苦笑いを浮かべた。


「この紅茶もジークさんの魔力で味が引き出されていたりしませんよね?」


「流石にそれはないだろ……そして、相変わらず、ミレットさんのお茶菓子が美味い」


「あぁ、この紅茶に合うな」


ノエルは先ほどライオから聞いたジークの魔力が影響しているのではないかと言うが、ジークは流石にないとため息を吐くとお茶菓子を口に運ぶ。

お茶菓子はミレットがジークに持たせたものであり、相性はとても良いようでジークとシュミットの間にはまったりとした空気が漂い始める。


「あ、あの、ジークさん、シュミット様、お気持ちはわかるんですけど」


「……確かにそうだ。気を抜き過ぎたな」


「……? しょ、庶民、私が眠っている間に何をしたのですか!?」


2人の様子にノエルは苦笑いを浮かべるとシュミットは1つ咳をして気合いを入れ直す。

その時、カルディナが目を覚ましたようで自分の身に何が起きたかわからないようでジークを諸悪の根源として睨みつけて威嚇するように声を上げた。


「何もしてない。俺にだって選ぶ権利があるし、何より、俺はノエル一筋だ」


「は、はい。私もジークさん一筋です」


「……ジーク、ノエル、言っていて恥ずかしくならないか?」


ジークはカルディナの言葉に大きく肩を落とすとさらっとノエルを愛していると言い切り、ノエルは顔を真っ赤にしてジークに続く。

シュミットは2人の様子に気恥ずかしくなったのか、照れを隠すように紅茶を口に運ぶ。


「わ、わたし、カルディナ様の分のカップを取ってきますね」


「ノエル、用意してあるから」


「……」


ノエルはシュミットの言葉に逃げるようにキッチンに移動しようとするが、ジークが彼女の首根っこをつかみ、彼女を引き止める。

ノエルはジークに恨めしそうな視線を向けるがジークは気にする事無く、カルディナの分の紅茶をカップに注ぎ、彼女の前に置く。


「仕方ありませんわ。紅茶に罪はないのでいただいて上げますわ」


「……何か腹立たしいんだよな」


「ジーク、私は時間がないのだ。無駄な事はしないでくれ」


カルディナはジークは嫌いだが、昨日、飲んだジークの紅茶は気に入っているようでカップを手に口に運ぶ。

その様子にジークは眉間にしわを寄せるがシュミットはジークに落ち着くように言う。


「わかってる。おっさんの娘」


「庶民、その呼び方はどうにかならないのですか? あのむさくるしい存在とまとめられているようで気分が悪いですわ」


「……ラース様、どうしてここまで言われてるんですかね?」


ジークはシュミットの言葉に頷くとカルディナに話をしようとするが、カルディナはジークの自分の呼び方が納得いかないようでジークを睨みつける。

しかし、その物言いはジークだけではなく、実の父親のラースさえも完全に見下しており、その様子に微妙な空気が流れだす。


「そうだな。その庶民って言い方を止めたら、こっちも考え直してやる」


「お断りですわ!! 誰があなたのような庶民をお兄様となど呼ぶわけがありませんわ!!」


「……ジーク、お前はそんなおかしな趣味があったのか?」


ジークは眉間にしわを寄せながら、カルディナから直すように言うとカルディナは先日、ミレットにカインだけではなく、ジークをも兄と呼ぶように言われた事を思い出したようでジークを威嚇するように叫ぶ。

シュミットは2人の様子に意味がわからないようで眉間にしわを寄せるも、どこかジークと距離を取りたいと思ったようでその声はどこか冷たい。


「待て。俺はそんな趣味はない!! 普通に名前で呼べ。おかしな発言をするな!!」


「普通に呼べ? ……庶民、名前を何と言いましたか?」


「……ダメだ。いろいろと差し引いても胸倉をつかんで鼻骨を折ってやりたい」


ジークは声を上げて、自分にはおかしな趣味などないと主張すると、カルディナはジークの顔を1度、見た後、ジークの名前などまったく記憶にとどめてもいなかったようで首を傾げる。

彼女のあまりの失礼な言葉にジークのこめかみにはぴくぴくと青筋が浮かび上がり、物騒な事をつぶやきだす。


「ジ、ジークさん、ダメですよ。カルディナ様は女の子なんですから、そんな事はしたらダメです」


「……わかってる」


ジークのつぶやきにノエルは慌てて、彼の手をつかみ。

ジークは自分の怒りを収めようと大きく深呼吸をして気持ちを抑えつける。


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