第469話
「それじゃあ、始めようか?」
「お願いします」
「……」
ライオを1つ咳をすると集まっているメンバーに確認を取った。
ノエルは大きく頷くがカルディナはエルトを警戒しているのか口を閉ざしている。
「兄上がきたから、説明が少しかぶるんだけどね。ジークの薬には1つの魔力だけが付与されていた」
「1つ? どう言う事だい? 1つならジークの薬がすべてアンリに効果があっても良いじゃないか? 実際、異なる効果があるからライオだって何種類もの薬を調査したんだろう?」
ライオはエルトとリュミナの合流もあるため、ジークの薬の魔力について説明をする。
しかし、エルトはライオの説明には納得ができないようで首を傾げて聞き返し、ジーク達も同じ疑問を抱いているため、ライオの次の言葉を待つ。
「兄上の疑問ももっともだと思う。私達だって信じられなかったからね。だけど、断言しても良い、ジークの薬には1つの魔力しか宿っていない」
「……そこまで強く言われてると、若干、バカにされている気しかしないんだけど」
「ジークさん、話を聞きましょう。それにライオ様は特別な魔力とも言ってましたし」
エルトの抱いた疑問はライオ達ジークの薬を研究した人間達も同じ疑問を抱いたようで研究に研究を重ねたようで間違いないと言い切った。
断言されると断言されるでジークとしては複雑なようで頭をかきながら言うと、ノエルは苦笑いを浮かべながら彼をはげます。
「別にバカにしてる気もないんだけどね。で、ジークの魔力について説明をしようとしていたところだったんだけどね」
「魔力の波長と言う話でしたね」
ジークとノエルの様子にライオは苦笑いを浮かべると説明の続きに移ろうとする。
シュミットはライオを補佐して行かなければ話が脱線すると考えたようでエルトとリュミナが訪れる前に中断した魔力の波長に話を戻す。
「魔力の波長? 聞きなれない言葉ですけど、属性とは異なるのですか?」
「属性? えーと、火の攻撃魔法とか風の攻撃魔法とかだよな? 確か、ノエルは風が相性が良いような事をアーカスさんが言ってたか?」
「そ、そうですけど、わたしは精霊魔法が主な攻撃魔法ですので精霊さん達の力を借りていますから、きっと、ライオ様が言いたいのとは違うと思います」
リュミナは魔法の知識をそれなりに持っているのか、魔力の波長と言う言葉に首を傾げる。
ジークは自分に理解出来るようにするためにノエルの魔法と重ね合わせようとするが、ノエルはライオの言いたい事が、ジークの言葉とは異なると感じたようで首を横に振った。
「そうなのか?」
「そうだね。まずは魔法の基礎の基礎になるんだけど、魔法は大きく分けて3つの分類に分けられる」
「神の声を聞き、力を借りる神聖魔法、精霊の力を借りる精霊魔法、そして、術者本人の中に眠る魔力を使う理魔法の3つです」
首を傾げるジークの姿にライオは頷くと彼の言葉をカルディナが補足し、3つの魔法について話す。
「えーと? その3つと属性や波長とは何が関係するんだい?」
「精霊魔法や神聖魔法は外部の力を借りて魔法を起こします。しかし、理魔法は魔術師本人の魔力を持って魔法を起こす。魔力は術者によって特徴があり、複雑な波のようにもみえるため、波長と言っているんです」
エルトは魔法についての知識は浅いようで首をひねりながら質問するとカルディナがエルトにわかるように補足をする。
「カルディナの言う通り、魔力は様々な波を持っており、同様に各種魔法にも同様の波がある。理魔法は術者の魔力の波長を術式や詠唱により、使用する魔法へと変換する事で魔法を発動する」
「波長を変換する事で魔法をか? 俺の薬には特殊な波長だって言ってたか?」
「そうだね。魔力の波長が複雑すぎて、誰も再現はできなかったんだけどね」
ライオは理魔法について簡単に説明をすると、ジークは自分の薬の特異性が波長に関係しているのかと聞き返す。
ライオは頷くとジークの言葉を肯定するも、特異性のある物のため再現はできなかったとため息を吐いた。
「と言うか、再現できないなら、その魔力がジークの薬に影響をもたらしているかはわからないんじゃないかな?」
「確かにそうですね」
エルトはジークの魔力は特別だとは理解できたものの、今の状況では答えを出せないのではないかと聞く。
ノエルはエルトの言葉に賛同したようで大きく頷くとライオの次の言葉を待つように彼へと視線を向ける。
「再現はできなくてもね。そこから推測する事はできる。魔術学園の研究室はその事について考えるところだからね」
「推測ですか?」
「ジークの魔力の波長は複雑だけど、所々、支援魔法や補助魔法の波長と重なるところが見える」
ライオは研究室の存在理由を話すと他の魔法との類似点を探したようであり、支援魔法と似ていると話す。
「支援魔法? ……何かパッとしないね。ジークの魔力には治癒魔法とかの効果があるんじゃないのかい?」
「エルト様、ジークの前ですし、そのような言い方はどうかと思いますよ」
ライオの口から出た言葉はエルトが期待していた物とは違っており、エルトは残念そうに大きく肩を落とした。
リュミナは話の中で何度かジークに精神的なダメージが入っているのが目に見えてわかるようでエルトの服を引っ張り、自重するように言う。
「……支援や補助魔法ね」
「あ、あの、それはジークさんと支援魔法が相性の良いのと関係がありますか?」
エルトと同じ考えをジークも抱いていたようであり、乱暴に頭をかく。
しかし、ジークとエルトとは違った考えを持ったようでノエルはライオに1つの質問を返す。
「ノエル、何を言ってるんだ?」
「ノエルさん、どう言う事?」
「あ、あの、わたしは攻撃魔法が不得意なので、支援魔法を主にジークさんやフィーナさんを補助するのが役割なんですが、同じ支援魔法を使った場合でもジークさんだけ、動きが違う気がするんです。自信はありませんけど」
ノエルの言葉の意味がわからずに首を傾げるジークとライオ。
2人の言葉と同時に視線はノエルへと集中する。ノエルは集まった視線に身体を小さく縮めるとジークに支援魔法を使った時に何度か持った違和感について話す。




