表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
466/953

第466話

「カイン、ちょっと良いか?」


「開いてるよ」


「悪い。さっき、話し忘れた事があったんだよ」


夕飯を終えた後、ジークはルッケルでの揉め事の内容を知る事が出来ないか相談したいようでカインの私室のドアを叩く。

直ぐに部屋の中のカインから返事があり、ジークはドアを開けて部屋の中に入る。


「話し忘れた事?」


「あぁ、ちょっとルッケルの事でな」


「ルッケルの事?」


首を傾げるカインにジークは苦笑いを浮かべた後、ルッケルで作業員と現場監督で揉め事が起きている事とアズも調べてはいるものの、詳細が上手くつかめていない事を話す。


「アズ様は確かにルッケルの人から人気があるからね。迷惑をかけたくないと思う人達も多いだろうね」


「あぁ、アズさんも調べてるみたいだけど、誰も話してくれないみたいで、アズさんもどうにかできないかって頭を抱えてた」


ルッケルの現状を聞き、アズの人間性は誉められるものだがカインは何かあるのか、眉間にしわを寄せている。

ジークはアズの疲労度も見てきたため、カインに協力できる事はないかと聞く。


「そうだね。心配をかけたくないって言うのは良い事なんだけど、そのせいでアズ様を困らせる事になっている事をルッケルの人達に教えてあげない事には始まらないね」


「そうなんだろうけど」


カインはまずはルッケルの領民の意識開拓が必要だと頭をかく。

ジークもカインの言いたい事は理解できるがそれができていない状況をどうするべきか考え付かないようである。


「一先ずはジルさんとか冒険者の店の店主を説得する事だね。このまま行って、どこかで大きなぶつかり合いになってしまうとアズ様やワームのレギアス様の管理能力も疑われるだろうし、後は鉱山の調査をしている研究員達にも話を聞いてみたら良い」


「研究者達にか? 確かに冒険者の店とかにも泊まってるみたいだし、食事時とかに話を聞いてる可能性もあるよな?」


「そう言う事だね。後は揉め事を起こしている人間に裏がないか調べる事、よく文句を言っている人間を調べ上げる事だね。ただ、これは難しいかも知れないね。下手をするとアズ様の評判が下がる」


カインは誰を情報源にするべきか直ぐに答えるが、その分のリスクも考えるように言う。

ジークはカインの言うリスクの事を考えると直ぐに判断ができないようで乱暴に頭をかく。


「リスクか? 考えも無しに突っ込むわけにはいかないんだろうな」


「そうだね。ただ、ジークならできるんじゃないかな?」


「……お前、たまに投げやりになるよな。自分の領地じゃないからって無責任すぎないか?」


妙案が浮かばない事にため息を吐くジークの姿にカインはくすりと笑い、ジークの思う通りにやってみたら良いと言う。

カインの発言は悩んでいるジークに取っては無責任に思えたようでカインを睨みつけるがカインが表情を変える事はない。


「別に自分の領地じゃないからとかは考えてはいないよ。ただ、ジークはルッケルにアズ様やリックさん、ジル以外に街道整備に関わってて頼りになりそうな人はいないのかと思ってね。毒ガス騒ぎの時、ずっと、手伝ってたんだろ?」


「確かに手伝ってはいたけど、俺は薬を調合しててほとんど外に出てないんだ。だいたい、都合がよくそんな知り合いが……居たよ」


カインはジークにルッケルの毒ガス騒ぎで知り合った人達に協力を要請してみてはどうかと言う。

ジークはそんなに都合がよく進むわけないと言いながらも、ルッケルの知り合いの顔を思い浮かべると1人心当たりがあったようで眉間にしわを寄せた。


「居たって言うわりには表情が優れないね」


「居たって言っても、本人じゃなく、その子供むすめと知り合いって言った方が正しいんだよ。俺自身はそんなに親しくない」


カインはジークに思い当たった人の事を聞くとジークはその人を頼りにして良いのか判断が付かないようで乱暴に頭をかく。


「でも、細いけど、場を好転させる足がかりは見つけたわけだろ? なら、ジークがしなければいけない事は何かな?」


「前に進む事なんだろ。これぐらいの事を説得できないと俺達が望む世界の事で誰にも協力は仰げないだろうからな」


ジークの様子にカインは彼を真っ直ぐと見据えて問う。

その瞳には力強さがあり、ジークは息を飲むがすでに答えは1つしかない事も理解していたようで大きく肩を落とした。


「そう言う事だね」


「……まぁ、やれるだけの事はやってみよう」


「大丈夫だって、ジークは自分が思っている以上にルッケルの人達から信頼を得てるから」


自信がないのか困ったように笑うジークだが、カインはジークならできると思っているようで小さく笑みを浮かべる。


「その根拠のない自信はどこからくるんだよ?」


「根拠がない? 根拠ならあるよ。毒ガス騒ぎの時にルッケルでのイベント、それに今回の連絡係、ジークはジークが思っている以上にルッケルの人達に関わってるんだ」


「……そう言われると凄くただ働きさせられてる気がする」


カインの笑顔をうさんくさく感じたようでジークは眉間にしわを寄せた。

カインはジークの反応が納得いかないようで大きく肩を落とした後にジークが関わったルッケルでの事を話す。

ジークはカインから話を聞き、あまり懐が温かくならなかった事を思い出したようで彼の眉間にしわはよりいっそう、深くなって行く。


「それはジークの商才のなさの問題だから俺に言われても困る。ただ、ただ働きに近い事もしているからこそ、協力してくれる人達もいると思うけど」


「な、何を言っているんだ。俺は商才の塊だ。今までのただ働きは先行投資だ。この後に儲けを出すためのな!!」


「ジーク、俺は忙しいから、用が終わったなら帰ってくれるかな?」


カインはジークの商才のなさについては自分には関係ないと言い切ると商才のなさが良い方向に転がっていると告げる。

しかし、商才がない事を認めたくないジークは声を上げて否定するが実績から見てもその声は虚しく響くだけであり、カインは鬱陶しそうにジークを追い払う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ