第46話
「工房で間違いないな」
「でしょうね」
ジークがドアを開けると部屋の中には中央に作りかけの石人形、部屋の壁際には試験管のようなものが並べられた机らしいものや棚が見られ、この場所が絵画に描かれていた魔術師の工房である事は明らかである。
「少し調べて見るか?」
「ソウダナ。ナニカアルカモシレナイ」
「あるかもって言うか。何かないと困るのよ」
ジークはこの工房の探索を開始しようと言うとメンバーはまずは部屋の中央に移動する。
「……動かないわよね?」
「動かれると正直、きついよ」
フィーナは石人形を覗き込むと動かないか確認するように剣の先で突き、ジークはそんな彼女の様子に大きくため息を吐く。
「あ、あの。ジークさん、ジークさんが言うこの遺跡に住んでいた人達はどこへ行ったんでしょう? この遺跡の中でお亡くなりになったのなら」
「確かに言い方は悪いけど、白骨くらいあっても良いか?」
ノエルはこの遺跡の住人である2人はどこに行ったのかと首を傾げるとジークは簡単に部屋の中を見回すがそれらしき物はない。
「……ドレイクサマガナクナッテ、ニンゲンハコノチヲハナレタヨウダ」
「そうなのか?」
「……アァ。トモニイキルホウホウヲモサクシタガネガイハカナワナカッタ。ソウシルサレテイタ」
ギドは寝室らしき部屋で見つけた本のなかに日記があり、そこから得た真実を口に出すとジークとノエルの表情は少し曇る。
「ソレトコノイセキハ、マケンヤセイケンノタグイハナイガ、ニンゲンノツクッタモノハカッテニモッテイケトモカイテイタ。『ワタシトカノジョトオナジオモイノモノ二スベテヲタクス』ト」
「……そうですか」
ギドは日記に書かれていた言葉を口にするとノエルは胸に熱い感情がこみ上げてきたのか瞳を閉じる。
「って事は、この場所に来る条件は俺達でなければいけなかったって事か?」
「人間である私とジーク。そして、魔族であるノエルとギド達って事?」
「ソウナルダロウ……」
ジークとフィーナはこのメンバーだからこそ、遺跡の最深部に来れたと思ったようであり、ギドは何か言葉を飲み込みながら頷く。
「……人間と魔族の共存か?」
「正直、難儀な道よね。ギド達とはこう言う機会があったから、一緒に動けたけど状況次第ではどうなったか。だって、人間と魔族はお互いに敵同士なわけだし」
「タシカニナ。カンケイヲシュウフクスルニモチガナガレスギテイル。カコニモイマモ」
ジークは改めて、ノエルの想いを口にするとフィーナとギドはノエルに視線を向ける。
「ですけど、わたしは自分の考えを貫きたいです。叶える事ができなかった2人の想いを受け継ぎたいです。同じ想いを持っている人はきっとわたしだけじゃないと思いたいです」
「……現実問題。そんなに優しくないぞ」
「ジーク、あんた、空気を読みなさいよ」
ノエルはそれでも自分の思いを貫きたいと言うとここにいる仲間に視線を移すがジークは大きく肩を落とし、フィーナはそんな彼を睨みつける。
「仕方ないだろ。俺は結局は商人なんだ。利がないと動かない。絵空事じゃ生きていけないからな。ただ、ノエルの思いに共感したいって部分もあるよ。魔族は敵って聞かされてたけど、ノエルもギド達にも別に恨みも何もなかったしな。少しずつでもこう言う誤解が解けていけば良いんだろうな」
「そうです。きっと、そうなんです」
ジークは結局は種族間の中にある誤解がすれ違いの原因だと言うとノエルは大きく頷く。
「まぁ、できる事から始めて行くしかないだろ。お互いに」
「……ソウダナ」
「まぁ、とりあえず、全てを託された身としてはまずはそれに使えるものを頂くか」
ジークはギドに視線を向けるとギドは小さく頷くとジークは自分の言葉が恥ずかしくなったようで1人で部屋の物色に移り始める。