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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
459/953

第459話

「キレイな球体だね。人工物みたいだけど……」


「あぁ、俺とバーニアも同じ事を思った。それと魔力を帯びているみたいでな。カインなら何かわからないかと思ってな」


カインはよく見ようと思ったようで球体に顔を近づけるとジークとバーニアと同様に人の手により加工されたような印象を受けたようで真剣な表情に変わって行く。

ジークは1度、ため息を吐くとカインに何かわからないかと聞くが、彼の好奇心はすでに完全に球体に向けられているようでジークの言葉は耳に届いていないのか返事はない。


「……失敗したか?」


「とりあえず、放置してたら良いのよ。それより、ジーク、ミレットさんは? お腹減った」


カインの様子にジークは大きく肩を落とすとフィーナは球体の事より、夕飯の事を方が重要のようでテーブルに突っ伏しながら、ジークにミレットの帰宅時間を聞く。


「自分で作ったらどうだ?」


「いやよ。今日は疲れた。だいたい、その蛇の内臓が夕飯の材料になるって言うけど、私にそれを扱いきれると思ってるの?」


「……無理だな」


最近はミレットに捕まって料理の手伝いをしているため、ジークはフィーナに自分で作るように言う。

フィーナは胸を張って料理した事のない材料は使えないと言い切り、ジークも納得してしまったようで大きく肩を落とすとソファーから立ち上がる。


「……そう言われるとそれはそれでムカつくわね」


「ジークさん、お手伝いします」


「いや、ノエルは休んでて良い。それにノエルは苦手だろ」


ジークの言葉にフィーナはイラっとしたようで眉間にしわを寄せるが変な事を言い夕食の時間が遅れても面倒なため、それ以上は何も言わない。

ノエルはジーク1人で夕食の準備をさせるわけにもいかないと思い、ふらふらと立ち上がるがジークは苦笑いを浮かべて彼女を静止する。


「すいません」


「そう言えば、セスさんはどうしたの?」


「……」


ノエルはジークに謝るとジークはキッチンに移動していき、フィーナはカインしか帰ってきていない事に首を傾げた。

しかし、カインは球体へと視線を向けて微動だにせず、ノエルとフィーナは顔を見合わせる。


「……確かに魔力もあるんだけど」


「カインさん、何かわかったんですか?」


その時、カインの頭は何か答えを出したようで小さくつぶやく。

ノエルは何かあったかわからずにカインの名前を呼び、彼の次の言葉を待つ。


「……本職じゃないから、はっきりとは言えないんだよね」


「カインさんが本職じゃないとなると、セスさんはどうですか?」


「いや、セスの得意分野でもないね。たぶん、フィリム先生の管轄かな?」


カインは困ったように頭をかくとノエルはセスなら何かわかるかと聞く。

彼女の言葉にカインは首を横に振ると自信がないのか苦笑いを浮かべながら、フィリムならわかるのではないかと答える。


「フィリム先生? ……これをここまで増長させた変わり者?」


「フィーナさん、その言い方もどうかと思うんですけど」


「まぁ、良いわ。とりあえず、本職ではないだろうけど何か想像はついてるんでしょ。もったいぶらずに話しなさいよ。魔力もあるって言う話だから、凄いものなんでしょ?」


フィーナはカインの口から出た名前に首を傾げるとノエルは体調も落ち着いてきたようで苦笑いを浮かべてフィーナをいさめる。

フィーナはノエルの言葉に少しだけバツが悪そうな表情をするとカインに球体の正体を聞く。


「まぁ、確かに魔力も感じるんだけどね」


「ただの石なんですか? 川も近くにありましたし、流れて丸くなったんですか?」


カインの言葉はため息交じりであり、その言葉にノエルは球体はただの石だと思ったようで少しだけ残念そうな表情をする。


「いや、石だとは言ってないから」


「……どう言う事よ?」


カインはノエルの反応に苦笑いを浮かべるとノエルの言葉を否定し、フィーナは勿体ぶるカインの言葉にイライラしてきているようで眉間にしわを寄せて聞く。


「まず、人工物だと思いこんだ事が間違いだね」


「えーと、どう言う事ですか?」


「ノエル、最初にジークとバーニアはこの球体を見た時になんだと言っていた?」


カインは球体を観察した結果、人工物ではないと判断したようであり、くすりと笑う。

ノエルはカインの言葉の意味がわからずに首を傾げるとカインはイタズラな笑みを浮かべて球体を見つけた時の状況を尋ねる。


「最初は巨大蛇の卵じゃないかなと思ったみたいですけど……やっぱり、あの蛇の卵なんですか?」


「確かに卵なんだけど、巨大蛇とは違うね」


「それじゃあ、何の卵なのよ?」


ノエルはジークとバーニアの会話を思い出して、巨大蛇の卵だと思ったようで少し球体から距離を取った。

カインは卵である事は肯定するが巨大蛇の卵である事は否定する。

フィーナは速く答えが聞きたいようでテーブルを叩き、カインにさっさと答えを言えと言う。


「何の卵かはさっぱりわからないね」


「なら、何で卵だってわかるのよ?」


カインはさっき本職ではないと言っただろと言いたげにため息を吐くとフィーナはカインの態度が気に入らないようで卵である事から否定しようと声をあげる。

彼女の様子にカインはもう1度、ため息を吐き、触って確認しろと言いたいのか球体を指差す。


「触ってみろと言う事ですか? ……温かいです」


「ホント? ……本当ね。ほんのりあったかいわ」


ノエルはカインの言いたい事を理解したようで球体に手を置くと球体は熱を帯びており、驚きの声をあげる。

フィーナはノエルの言葉を聞き、彼女に続くように球体を触ると驚いたようで2人は顔を見合わせた。


「後はしばらく触ってると」


「う、動きました!?」


「まぁ、少なくとも巨大蛇の胃の中にいても消化されない強力な卵で親が温めなくても自分でふ化するために必要な熱量を確保している生物だって事だろうね」


球体に触り、しばらくすると球体の中からは鼓動のようなものが響き、ノエルは驚きの声をあげる。

カインは球体が卵だとは判断できたが何が生まれるかわからないため、どうするべきか考えているようで頭をかく。


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