第457話
「必要以上に獲れたな」
「そうですね」
巨大蛇3匹の亡骸を見ながらジークはやり過ぎたと言いたいのか、大きくため息を吐いた。
ノエルも同じ事を思っているようで大きく頷くも、目の前に広がる大量の巨大蛇の血に顔を真っ青にしている。
「流石にこの血の量は具合が悪くなっても仕方ないよな」
「そうかも知れませんね」
ノエルの様子にジークは彼女の背中を押し、視線を巨大蛇から逸らす。
2人の姿にバーニアは苦笑いを浮かべるとリアーナも少し具合が悪くなってきているのか巨大蛇の亡骸から視線を逸らすように後ろを振り向く。
「仕方ないか? ……なぁ、ジーク」
「どうかしたか?」
巨大蛇の亡骸の大きさにバーニアはリアーナに手伝って貰いたかったようでため息を吐いた後に作業を続けようとした時、バーニアは巨大蛇の中から何かを見つけたのかジークの名前を呼ぶ。
ジークは返事をするとリアーナと顔があったようで目配せでノエルの事を彼女に任せ、バーニアの手元を覗き込む。
「これなんだと思う?」
「何って……卵? 巨大蛇の卵かな?」
バーニアの手には巨大蛇の血で真っ赤に染まった奇麗な球体が乗せられており、ジークはその球体を手に取る。
球体は人の頭くらいの大きさをしており、かなり大きなものである。ジークは何かわからずに軽く叩いてみたりするものの何かわからず、倒した巨大蛇の卵だと結論付ける。
「いや、こいつら自身の卵ならこんなところから出てこないだろ?」
「……中身を開いて見せるな。卵じゃないなら、何だって言うんだよ」
球体は巨大蛇の胃の中から出てきたようであり、バーニアは息絶えた巨大蛇の腹の中を開いて見せた。
巨大蛇の腹の中は流石に見るに耐えなかったようでジークは目線を逸らし、球体についてバーニアの見解を聞く。
「さっぱり、わからない。それに卵ってもう少し楕円と言うか、こんなキレイな球体じゃないだろ」
「……確かに言われるとそうだけど、わからないなら、俺に聞くなよ」
「いや、ジークなら見た事があるのかな? と思って、少なくとも俺は今まで何度もこの巨大蛇から皮や牙を取ってるけど、こんなものは見た事はない。だいたい、いつもは腹の中なんか見ないからな」
バーニアは口元を小さく緩ませるとジークは息を飲むがバーニアも何もわかっていなかったようであり、ジークは大きく肩を落とす。
「いつもは見ないところをどうして開けてるんだよ」
「いや、これくらいでかければ骨でも加工すれば使えるかと思ってな……そう言えば」
「今度はなんだよ?」
ジークは当然の疑問を口にするがバーニアは巨大蛇の骨に利用価値がないかと思ったようで器用に大きめの骨を外して行く。
その中でバーニアはまた何かを見つけたように見え、ジークは球体を手にしたまま、バーニアの手元を覗き込む。
「ジークはメインは薬草調合だったか?」
「まぁ、ばあちゃんはそっちがメインだったからな。俺の知識もばあちゃんから教わったものがメインだったから」
「こう言うのは専門外か?」
バーニアはジークの専門を確認するとジークは大きく頷く。
その様子にバーニアは巨大蛇の身体の中からいくつかの内臓を取り出す。
「……だから、見せるな」
「巨大蛇の臓物は薬になるって聞いた事があるんだよ。どの部分が使えるかはまったくわからないけどな」
「そう言う事か? ……えーと、さっぱりわからない」
バーニアはジークに薬として使う部分はないかと聞き、ジークは目を細めて取り出した巨大蛇の内臓を見るが、彼の知識には偏りがあるため、意味がわからないと首を横に振った。
「そうか? なら、どうする? 荷物になるかも知れないし、捨ててくか?」
「いや、薬になるかも知れないって言うなら、フォルムに持って帰ってテッド先生に見て貰おう」
「それじゃあ、処置はそっちでやってくれ」
バーニアから巨大蛇の内臓を受け取るジークだが、どうするべきかわからずに首を傾げる。
「とりあえずは腐っても困るから凍らせるか?」
「……処理として適切かはわからないけど、便利な使い方だな」
「あぁ、ツッコミや感情的な人間の頭を冷やすために重宝している」
ジークはいざ手に持って見たものの、どう処理して良いのかわからず、一先ずは冷気の魔導銃を手にし、内臓を氷漬けにする。
その様子にバーニアは呆れたような様子でため息を吐くと、ジーク自身、武器としてよりも他の事に使っている事が多いため苦笑いを浮かべた。
「……で、こいつをどうするかだな? ただの石って可能性もあるんだよな?」
「そうだな」
「カインに見て貰えば何かわかるかも知れないけど……ただの石だったら何を言われるかわからないしな」
ジークは氷漬けにした内臓を適当な植物の葉に包み込み、荷物の中に紛れ込ませると巨大蛇の胃の中から出てきた球体へと視線を移す。
球体の正体はまったく予想もつかないため、カインなら何かわかるのではないかと思いながらもバカにされる可能性が高く、ジークは乗り気ではなさそうに見える。
「いや、あいつもそこまでは言わないだろ。見るからにきれいな球体だし、人工物の可能性も高いだろ?」
「それは確かにそうなんだけど、魔導機器のコアか何かなのか? ノエル、これに魔力ってないか?」
ジークもバーニアも何かの卵と言うよりは人の手によって作られた物と言う事で一致しており、今回のメンバーで魔法が唯一使えるノエルに声をかける。
「は、はい。待ってくださいね……」
「何かわかるか?」
「えーと、魔力はあると思いますけど、どんなものかはまったくわからないです」
球体は巨大蛇の血で真っ赤のため、ジークはできるだけ血を落とした後にノエルに球体を渡す。
ノエルは球体を手に魔力がないか確認しようとすると魔力は帯びているようには見えるものの、何かはわからないようで首を傾げる。
「とりあえず、魔力があるって事は持って帰ってもカインにバカにされる可能性はなくなるか?」
「……ジーク、もう少し、カインを信用したらどうですか?」
「まぁ、気にするな。バーニア、時間がかかりそうだし、手伝うか?」
ジークはノエルの判断でフォルムにこの不思議な球体を持って帰る事を決めるが、彼の言葉にはカインに対してのとげがあり、リアーナは大きく肩を落とす。
リアーナの言葉にジークは逃げるようにバーニアの手伝いを始め出し、ジークの様子にノエルは苦笑いを浮かべ、リアーナは眉間にしわを寄せた。




