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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
447/953

第447話

「……新任の騎士の騎士剣と騎士鎧か?」


「あぁ、頼めるか? 今日はリアーナしか連れて来れなかったからな。王城に来て貰いたいが無理なら時間を取って足を運ばせよう」


シュミットはバーニアを訪ねた理由を話すと、バーニアは何かあるのか眉間にしわを寄せて首をひねっている。

その姿にシュミットは個人営業の店と言う事もあり、バーニアも忙しいと思ったようで妥協案を出す。


「……シュミット様が俺の店に足を運んだって事はカイン(あいつ)が裏で糸を引いている気しかしなくてな」


「いや、確実に糸を引いているから」


「そうか」


シュミットは昨日、顔を合わせただけのシュミットが自分の店に来る理由が納得できないようであり、乱暴に頭をかく。

彼の言葉にジークは展示されている武器や防具を見ながら肯定するとバーニアは小さくため息を吐いた。


「……俺が作れるのは飾りじゃない」


「……どう言う意味だ?」


「かまいません。それにそんなものは要りません。私が必要としている者は主君の道を切り開く剣、そして、民を守るための盾です。飾りなどではありません」


バーニアは表情を引き締めると真っ直ぐな視線でシュミットを見る。

彼の言葉の意味がわからずに聞き返すとシュミットの隣からリアーナが力強い言葉で言う。


「……」


「バーニアさん、ダメでしょうか?」


バーニアはリアーナの言葉が彼女の本心か見極めようとしているのか、真剣な表情で彼女を見つめる。

その様子は周りから見ていても張り詰めた緊張感があり、ノエルは耐えきれなくなったのか遠慮がちに聞く。


「……剣を」


「お願いします」


「……」


ノエルの言葉など耳に届いていないのか、バーニアは短く言うとリアーナは慌てて腰から鞘を外し、剣を渡す。

バーニアはリアーナから受け取った剣を鞘から抜くと剣の状態を確認して行く。


「あ、あの、ジークさん、バーニアさんは何をしているんですか?」


「剣を見てるんだろ。リアーナが自分の剣や鎧を扱うのに充分かどうかとか?」


ノエルはバーニアに相手にもされない事もあり、ジークの服を引っ張る。

しかし、ジークは魔導銃を入れるのに良さそうなホルダをいくつか見つけたようであり、どこかおざなりである。


「ジークさん」


「これ何か……いや、やっぱり、使い慣れた物が1番だよな」


不満げな表情をするノエルの隣でジークは1つのホルダが気に入ったようで手に取り、値段を確認する。

その値段はジークが思っている以上に高く、買えるわけないと判断したようで手に持っていたホルダを商品棚に戻す。


「欲しい物でもあったか?」


「あぁ、だけどな。片田舎の貧乏な薬屋には買えそうもない」


「そうか? ……」


シュミットはバーニアが考え込んでしまっているため、やる事がなくなってしまったようでジークとノエルに話しかける。

ジークは自分の店の売上ではどうしようもないと苦笑いを浮かべるとシュミットは何かあるのかジークと先ほどまで持っていたホルダを交互に見て考え込む。


「それくらいなら、私が買ってやろう」


「何を言ってるんだ?」


「先日までの謝礼だと思ってくれれば良い」


シュミットは1つ頷くとジークが手にしていたホルダをジークに買い与えると言う。

ジークはその言葉の意味がわからずに眉間にしわを寄せ、聞き返すとシュミットはワームに飛ばされて鬱屈していた時にジークにした事に対するわびだと答える。


「謝礼ね……遠慮する」


「なぜだ?」


「俺は商人だ。商品に見合った代金を貰う。少なくともこんな高価な商品ものを買ってもらうような仕事はしてない」


シュミットの言葉に考える事があるのか頭をかくと彼の提案を断った。

シュミットはジークが断ると思っていなかったようで驚きの声をあげるが、ジークは彼の矜持なのかきっぱりと言う。


「そうか……」


「ジークさん、せっかくのご厚意なんですから」


「いや、ノエル、ジークの言いたい事もわかる。それにその方がジークらしい」


シュミットはジークの言葉に再び、考え込んでしまい、ノエルはシュミットの気も納まるなら彼の気持ちに応えてあげてはどうかと彼の服を引っ張る。

シュミットはノエルの言葉も聞こえていたようで彼女を止めるとジークの出した答えが彼らしいと考え直したようで小さく表情を緩ませた。


「……ジーク」


「何かあったのか?」


「カインがお前とノエルをここに送ってきた理由がわかった」


その時、バーニアはリアーナの剣を鞘に戻し、彼女に付き返すとジークの名前を呼ぶ。

ジークは突然の事で首を傾げるとバーニアは忌々しそうに舌打ちをした後、カウンターの中に入って行き、古臭いがしっかりと手入れがされた剣と鎧を引っ張り出す。


「理由? 俺とノエルはカインから買い物してこいって言われただけだ。これについて知らないか!? って、投げ捨てるな!?」


「その買い物リストにある物はデタラメだ。そんなものこの世に存在しない」


バーニアの言いたい事がわからないジークは首を傾げながら、自分がバーニアの店にくる事になった買い物リストを差し出す。

バーニアは買い物リストを手にして軽く目を通すと丸めてゴミ箱に捨ててしまい、彼の突然の行動にジークは驚きの声を上げてゴミ箱を漁る。

しかし、バーニアの口から出た言葉はカインが用意した買い物リストは意味などないと言い切った。


「ど。どう言う事ですか!?」


「どう言う事も何もカインがお前達2人を俺の店までくるようにしただけだろ」


「いや、それは俺も考えたけど、俺とノエルがここに来る保証はないだろ?」


驚きの声をあげるノエルだが、バーニアはカインの回りくどいやり方に頭が痛くなってきたのかこめかみを指で押さえて言う。

ジークもシュミットやリアーナ達と街中で出会った事で疑ってはいたものの、流石に買い物が無事に終わる事も考えられたため、眉間にしわを寄せて聞き返す。


「王都での知り合いはそこまで多くないだろ。買い物リストを見せて誰もわからなければ、カインのつてを探すだろ」


「確かにその可能性はありますけど、見つからなかったらフォルムに帰ると言う選択肢も」


「……ないな。帰って御使い1つできないのか? って言われるなら、意地でも探してやる」


バーニアの言葉にリアーナは首を傾げて1番の可能性を指摘するが、そこはジークとカインの関係であり、ジークは真顔で首を横に振る。


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