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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
444/953

第444話

「なんかおかしな方向だけど、まとまったから良いのかな?」


「……良いわけないわよ」


ジーク達が朝の訓練を終え、朝食を食べ始めたのだがカルディナはカインを兄と言うだけではなくセスまで姉と呼んでおり、セスは突然の事にどう反応して良いのかわからないようでオロオロとしている。

その姿にジークはため息を吐くも昨晩の事があるため納得しようとするが、フィーナは状況が理解できないようで眉間にしわを寄せた。


「婚約者問題が解決したわけですし、良いんじゃないでしょうか?」


「……そう思いたいな」


レインは状況を理解しきれないわけではあるが、カルディナがカインの婚約者だと主張しなくなった事で問題が1つ解決したと胸をなで下ろす。

しかし、ジークは何かあるのか、眉間にしわを寄せて頭をかいた。


「ジークさん、どうかしたんですか?」


「……いや、何かイヤな予感がするんだよな」


「止めてよね。ジークのイヤな予感は当たるんだから」


ジークの様子に首を傾げるノエル。ジークは彼女の言葉に眉間にしわを寄せたまま一言言うとフィーナは朝食を頬張りながらため息を吐く。


「そんな毎回毎回、イヤな予感が当たってたまるか」


「そう言うなら、変な事言うの止めなさいよね。あんたのイヤな予感は当たるから、変な空気のなるのよ」


「それは確かにそうですね」


ジークは頭をよぎった予感を否定するように言うが、フィーナはジークに余計な事を言うなと言う。

レインも何度かジークのイヤな予感が当たっているところに遭遇しているようで苦笑いを浮かべてフィーナに同意を示すとジークは不利な状況を感じ取ったようでそれ以上は何も言わずに頭をかく。


「あの、カインさん、カルディナ様はいつごろ、王都に送り届けたら良いでしょうか? カインさんとセスさんは今日、フォルムを空けるわけには行かないんですよね?」


「そうだね。カルディナ様は魔術学園の方もあるし、朝食を食べ終えて一息ついたらかな? ジーク、ノエル、頼むよ」


ノエルはジークの状況に気が付き、彼を助けるようにカインへと話を振る。

カインはカルディナをいつまでもフォルムに置いておくわけにもいかないため、朝食を終えたらカルディナを王都まで送って欲しいとジークとノエルに頼む。


「まぁ、仕方ないか」


「その件ですが、お兄様、お姉様、私に転移魔法をご教授願えないでしょうか?」


ため息交じりで頷くジークを余所にカルディナはカインとセスに転移魔法を習いたいと詰め寄る。


「却下だ。カイン、セスさん、絶対に教えるんじゃないぞ」


「黙りなさい。庶民、あなたになど言っていませんわ!!」


ジークはカルディナの言葉に勢いよく立ちあがり、カルディナに転移魔法を教えないようにとカインとセスに釘を刺す。

しかし、カルディナはジークを指差し、関係ない人間が口をはさむなと声をあげる。


「……何で、この2人はこんなに相性が悪いかな?」


「ど、どうしてでしょうね」


ジークとカルディナの視線の間は火花が散っているようにも見え、カインはその様子に大きく肩を落とし、ノエルは苦笑いを浮かべている。


「だいたい、私が転移魔法を覚えようがあなたには関係ありませんわ」


「関係あるんだよ。転移魔法でフォルムに来れる人間が王都にいると厄介事が増える(エルト王子がくる)んだ。公務をほったらかしてな。公務が滞ると後々、大変だろ」


カルディナはジークには関係ない事だと主張するが、ジークの言い分から言えばそんなわけもなく、ミレットとカルディナ以外はその様子が容易に目に浮かんだようで眉間にくっきりとしたしわを寄せた。


「ひ、否定できませんわ」


「……ジークのイヤな予感は相変わらずね」


「エルト様のサボり癖は凄いんですね」


セスはジークの言葉を肯定し、フィーナはジークのイヤな予感の正体がつかめたと言いたいのか苦虫をかみつぶしたような表情までする始末である。

ミレットは先日のシュミットの胃痛の原因を思い出したようでジーク達の様子に苦笑いを浮かべる事しかできず、カルディナへと視線を移す。


「そんなもの、エルト様にばれなければ良い事ですわ」


「……確かにそうなんだけどな」


「……」


カルディナはここにいるメンバーが何をそこまで心配しているのかわからないようでエルトにばれるような事はしないと自信を持って言い切る。

ジークはカルディナの言いたい事もわかるが危険な橋はわたりたくないようでカインの意見を聞きたいのかカインへと視線を移す。

カインはどうするべきか悩んでいるようで両腕を胸の前で組み、目を閉じて考え込んでいる。


「……緊急の時にエルト様から俺達に連絡を取りつける人間は確かに必要なんだけどね」


「お兄様?」


「なんか、あの呼び方も違和感がなくなってきたな」


カインは転移魔法の使用者の必要性は理解しているものの、カルディナを転移魔法の使用者にして良いのか悩んでいるように見え、カルディナは不安そうな声でカインを呼ぶ。

カルディナがカインを呼ぶ時の目は以前までの物とは違い、ジークは気にならなくなってきたようで頭をかく。


「何でよ? 違和感ありありじゃないの?」


「いや、お互いの扱い方を見てるとフィーナよりおっさんの娘の方がカインの妹っぽい」


「確かにそうですね」


フィーナはジークの言葉の意味がわからないとため息を吐くが、ジークは思っている事を素直に口に出し、レインは苦笑いを浮かべた。


「まぁ、別にあのクズと兄妹を思われたくないから別に良いんだけどね」


「フィーナも無理しないで素直にお兄さんと呼んでみたらどうですか? カインも喜びますよ」


「イヤよ。そんな気持ち悪い事」


フィーナはどうでも良いと言うと朝食を一口頬張るが、ミレットは彼女の中でわずかにカインをカルディナに取られたと言う気持ちがあると思ったようで昨晩、カルディナにも言ったようにフィーナにささやく。

しかし、フィーナはそんな事は絶対にイヤだと拒否する。


「素直じゃありませんね」


「フィーナさんですし」


彼女の様子にミレットは苦笑いを浮かべると、ノエルは小さくため息を吐く。


「カルディナ様、少し考える時間をください。王都との連絡係も確かに必要なのですがいろいろと調整したい事もありますから」


「わ、わかりました。それがお兄様の考えなら」


おかしな話し合いが始まっている事など気にする事なく、カインは考える時間が必要だと判断したようであり、カルディナは彼の言葉に素直に頷く。


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