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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第439話

「……何をしてんだ?」


「い、いきなり、声をかけるなんて失礼ですわ。これだから、庶民は」


ジークがソファーで眠り始めてしばらくするとごそごそと何かが動いている音に気づく。

ジークは目を覚まし、頭ははっきりさせるように両頬を軽く叩くと気配を消して音がしているキッチンへと向かう。

キッチンを覗き込むとカルディナが目を覚ましたようで、のどが渇いたのか水桶を覗き込んでおり、ジークは彼女の姿に小さくため息を吐く。

突如、背後から聞こえたジークの声にカルディナは驚きを声を上げた。


「庶民かどうかは関係ないだろ。それより、それで良いのか?」


「それで?」


「水で良いなら、それを飲んで寝ろよ。俺は起きたついでにお茶を淹れる」


ジークは欠伸をしながら、水が入っている鍋を火にかける。

カルディナはジークの言葉の意味がわからずに首を傾げており、ジークは彼女の分はついでだと言うと棚からお茶を取り出す。


「……飲めるものが出てくるのですか?」


「じゃあ、飲むな」


カルディナはノエルが淹れてくれたお茶の味は知っているが、彼女から見ればジークはガサツに見えるようであり、ジークは淹れるお茶に疑いを持っているようにも見える。

彼女の返事などジークはどうでも良いようで、興味なさそうに言うと1人分のカップを取り出す。


「……いただきますわ」


「それなら、座ってろよ」


「……何か、いちいち、行動がムカつくな」


水を飲むのは味気ないと思ったようだが、ジークに頭を下げるのはどこか悔しいのか忌々しそうな表情で言うが、ジークは何かを言うのも面倒なようで座って待っていろと言う。

カルディナはキッチンを見回すとイスを見つけるがソファーの方が良いと判断したようで居間に移動する。

その姿にジークはカルディナに不快感を抱いているせいか、彼女の行動に眉間にしわを寄せるが言っても仕方ないと思ったようで乱暴に頭をかいた。


「なんだ? わざわざ、灯りを点けたのか?」


「……私はあなたのような庶民を信用する気などありませんわ」


カルディナは暗闇でジークと2人きりと言うのは危険だと思ったのか居間に置いてある魔力で光を灯す魔導機器を見つけると居間に灯りを点けた後、ソファーに座り、ジークを待っている。

ジークは2人分のお茶を手に居間に顔を出すと居間に灯りが点いている事にため息を吐く。

カルディナはジークを野蛮だと思っているようで威嚇するように鋭い視線を向けて言う。


「そりゃ、悪かったな。熱いから気をつけろよ」


「……」


ジークはカルディナに持ってきたカップを1つ手渡すとカルディナの向かい側のソファーに腰を下ろす。

カルディナはカップを受け取るとジークが淹れたお茶と言う事に抵抗があるのか、湯気が上がっているカップへと疑いの視線を向けている。


「……薬屋と言う話ですから、変な薬で私を手込めに」


「しない。俺は子供に手を出す気もないし、何より、俺にはノエルがいる」


カルディナはお茶の中に媚薬のようなものを入れられている可能性を考えたようであり、その言葉にジークは呆れ顔でため息を吐くとお茶を口に運ぶ。


「誰が子供ですか!!」


「……少なくとも現実見ないうちは子供って言われても仕方ないだろ」


カルディナはジークの言葉が気に入らないようで声をあげるが、ジークはカルディナが盲目的にカインの事を追いかけているうちは仕方ないと言い切った。

その言葉にカルディナはジークをかたきでも見るかのように睨みつける。


「結局、何がしたいんだよ。と言うか、本当にカインとセスさんの関係に気が付いてなかったのか? 言い方は悪いけど、1番近くで見てたんじゃないのか?」


「……」


「……何だよ。本当は気づいてたんじゃないのかよ」


しかし、ジークは彼女の睨みつけけられようが気にする事なく、どこかで思っていた疑問を口にする。

その言葉にカルディナは何かあるのか押し黙ってしまい、彼女の姿にジークはため息を吐いた。


「……気がつかないと思いますか?」


「いや、あれで気がつかなかったら、相当のバカだ」


カルディナはジークを睨みつけながら問い返す。

ジークはその言葉にため息を吐くとカップをテーブルの上に置き、立ち上がる。


「どこに行く気ですか?」


「いや、何か長くなりそうだから、お茶菓子くらいなかったかな? と思って」


カルディナはジークが立ちあがった事に何か思ったようであり、彼の行動に疑問の声をあげる。

ジークはカルディナが現実を見えていた事もあり、彼女の中にある不満をぶつけられそうだと思ったようで1度、キッチンに歩いて行く。


「……ミレットさん、本当にあの人は何なんだろうな」


キッチンで棚を物色すると簡単なお菓子が用意されており、ミレットの字で『カルディナの事をよろしく』と言う1文が添えられている。

それを見つけたジークは自分より、先の事を見ているミレットの才覚に背中に冷たい物が感じるものの、カルディナを待たせているため、お菓子と先ほどお茶をポットに入れて居間に運ぶ。


「……ずいぶんとしっかりとしたものが用意されてますわね」


「ホントだよな」


ジークが持ってきたお茶菓子を見てカルディナは信じられないのか眉間にしわを寄せるが、ジーク自身も用意したわけでもないため、ため息しか出てこないようでジークは大きく肩を落とすとテーブルの前にお茶菓子を置き、カルディナのカップにお茶を注ぐ。


「……」


「疑うな。お茶菓子はミレットさんがこんな事もあるかと思って作ってくれてたものだ。お茶にも何も手は加えていない。それで、どうする気なんだ?」


カルディナはジークを信頼しきっていないため、再度、お茶とお茶菓子へと疑いの視線を向ける。

その姿にジークは呆れたように言うと自分の分のカップへとお茶を注ぎ、カルディナにこれからの事を尋ねる。


「……」


「俺、何かおかしな事を言ったか?」


カルディナ自身、ジークにカインとセスの関係を知っていた事は白状したものの、それでもカインは彼女にとって初恋の相手であり、簡単に割り切る事は出来ないようで目を伏せてしまう。

そんな彼女の姿にジークは意味がわからないようで首を傾げるが、ジークには初恋に敗れたばかりのカルディナの事を気づかうような配慮は存在しない。


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