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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
434/953

第434話

「……一向に話が進んでいないな」


「そうね」


カルディナはカインに何度もセスとの事を聞こうと試みるが、カインはセスが同席してからの方が良いと思っているようでカルディナが聞き出そうとするたびに話を逸らしている。

その様子にジーク達は夕食をテーブルに並べながらため息を吐いた時、セスが汗を流し終え、居間に戻ってくるが、居間にカルディナがいる事に気が付き直ぐにドアの裏に隠れてしまう。


「セスさん、隠れてしまいましたね」


「流石にいきなりは気まずいだろ。おっさんの娘はセスさんに懐いてたし、言い難いだろ」


セスが隠れた事にノエルは気づき、ジークの服を引っ張り言うとジークは魔術学園でセスとカルディナの姿も見ているため、セスの考えも何となく理解出来るようで苦笑いを浮かべる。


「ジーク、ジーク」


「ジーク、呼んでるわよ」


「……何で、俺だよ」


セスはカインとカルディナが何を話しているのか、確認しておきたいようでドアから顔を出し、ジークを手招きしている。

ジークはセスに気づきながらも知らないふりを決め込もうとするが、フィーナはジークに行ってくるように言い、ジークは大きく肩を落としながら廊下に向かって行く。


「どうして、カルディナ様がフォルムにいるんですか?」


「どうしても何も、例の件しかないでしょう」


ジークが廊下に着くなり、セスはジークの胸倉をつかみ聞く。

カルディナに巻き込まれたせいか、ジークは疲労がたまってきているようで大きく肩を落とすとセスの手を外させる。


「そ、そうですよね? ど、どうしましょう」


「どうしましょうも何も正直に言うしかないんじゃないですか? と言うか、カインとの婚約騒ぎも元々、おっさんの娘がおっさんの奥さんと2人で騒ぎたてているだけなんだし、別に問題にもならないでしょ」


「それは確かにそうなんですが……」


セスは慌てているが、ジークはカルディナの主張に正当性も何もないため、どうでも良さそうに答えた。

実際のところ、セスもカルディナはあくまでもカインの自称婚約者である事は知ってはいるものの、自分と同様に一途にカインの事を想っていたカルディナの姿も見ていたため、そんな彼女の気持ちを踏みにじったとも思っているようで目を伏せてしまう。


「……参ったな」


「ジーク、セスさん、何やってるのよ。早くしないと夕飯覚めちゃうでしょ」


「何と言われてもな。問題は俺じゃなく、セスさんだから」


セスの様子にジークは何と言えば良いか、わからないようでため息を吐くと夕食の準備が終わったようでフィーナが2人を迎えに顔を出す。

ジーク自身は早く夕食にありつきたいと思っているようだが、セスが煮え切らない様子のためセスを指差して言う。


「いつまでもここにいたって始まらないでしょ。セスさん、行くわよ」


「ま、待ちなさい。フィーナ!? わ、私にも心の準備と言うものが!?」


「……フィーナ、男前だな」


フィーナは悩みこんでいるセスの姿にため息を吐くと、セスの首根っこをつかみ彼女を居間に引きずり込み。セスは驚きの声をあげるが、その声は虚しく響くだけである。

2人の様子にジークは苦笑いを浮かべると遅れて居間に戻った。


「遅かったね。セス」


「セス先輩」


「は、はい!?」


フィーナに引っ張られて居間に入ったセスを見て、カインは苦笑いを浮かべると、カルディナは真剣な表情をしてセスの名前を呼ぶ。

カルディナの声にセスは声を裏返して返事をし、ジークとフィーナは我関せずと言いたいのかそそくさと夕食の並べられた席に座る。


「セスさん、座ったらどうですか?」


「ミ、ミレットさん、何を言っているんですか?」


「何を? 席に座っていただけないと夕御飯が片付きませんよ」


ミレットはセスを席に誘導するが、セスは冷静になれないようで声を裏返したまま返事をし、そんな彼女の姿にミレットはくすくすと笑う。


「そ、そうですね。あまり遅くなると後片づけをしてくれるミレットさんやノエルに迷惑がかかりますからね」


「……今、迷惑がかかっているのはこのおかしな状況に巻き込まれている俺達だ」


「ジーク、確かにその通りなんですが、言葉を選びましょう」


セスは自分を納得させるように頷きながら席に座ると、ジークはこんな空気を早くどうにかしたいようで大きく肩を落とした。

レインはジークと同感のようではあるがカルディナはラースの娘でもあるため、強くは言えないようである。


「とりあえず、夕飯にしようか? カルディナ様のお話は夕飯を食べながらと言う事で」


「わかりました……」


全員が席に着くとカインは夕食を食べようと言い、カルディナはカインの言葉には頷きはするものの、目の前にある夕食が彼女がいつも食べている物に比べて貧相に見えるようで表情をしかめた。


「……文句があるなら、食うなよ」


「ジークさん」


そんなカルディナの様子にジークは抑えようとはしているものの、その苛立ちは抑えつける事は出来ないようで夕食に手を伸ばしながら舌打ちをする。

ノエルはジークの言葉にカルディナとケンカになってしまうと思ったようで彼の服を引っ張った。


「平民、何度も言いますが口の聞き方も知らないのですか? これだから、礼儀も知らない平民は」


「少なくとも地方とは言え、領主の屋敷に来て領主が出した食事に食いもしないで文句を言う奴に礼儀を語られる必要性はないな。ミレットさん、これ、美味いですね」


カルディナはジークの言葉が聞こえたようで彼を睨みつけるが、ジークはカルディナの自分勝手な様にかなり苛立ってきているようであり、きっぱりと言い放つと大皿に盛られたおかずの1つが気に入ったようで何度も口に運ぶ。


「そうですか? ありがとうございます」


「……何?」


「ジーク、言うのを忘れましたけど、それはフィーナが味付けしてんですよ」


ジークの言葉にミレットは柔らかい笑みを浮かべた後、何かあるのかフィーナへと視線を移す。

フィーナはミレットの視線にあまり触れて欲しくないのか不機嫌そうに返事をするとミレットはイタズラな笑みを浮かべてジークが気に入ったおかずについて話し、その言葉にジークの手が止まった。


「……」


「ジーク、それはどう言う事よ?」


フィーナはジークの手が止まる様子を見て不機嫌そうな表情で睨みつける。


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