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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
432/953

第432話

「……レイン=ファクト、すまなかったな」


「い、いえ、シュミット様の心労、お察しします」


ジークとシュミット、そして、2人の後を追いかけてきたカルディナがエルトの私室を訪れるとすでにレインは疲労でぐったりとしており、レインの姿にシュミットは申し訳なさそうに謝る。

レインはシュミットが謝る必要などないと首を横に振るとシュミットが日頃どれだけ苦労しているか理解したようでシュミットに頭をあげるように言う。


「シュミット、レイン、どう言う事かな?」


「そのままだろ。エルト王子、もうレインを連れて帰っても良いか? 早く帰らないと夕飯に間に合わないんだ」


「……ジーク、私と夕飯を天秤にかけるのもどうかと思うんだ」


レインとシュミットの様子にエルトは少しわざとらしく怒ったように言うが、ジークは気にする事なく、エルトに声をかけた。

ジークの様子にエルトは大きくため息を吐くが怒っているような感じはなく、2人の親密さが見てわかる。


「……」


「ジーク、シュミット様、そちらの方は」


「不審者です。衛兵を呼んで追い返すように指示をお願いします」


流石にエルトの前ではカルディナも好き勝手言えないようであり、ジークとシュミットの後ろに控えている。

そんな彼女の様子にリュミナは無視するもの行けないと思ったようでジークとシュミットにカルディナを紹介するように言うが、ジークはカルディナと関わり合いたくないため、エルトに衛兵を呼ぶように言う。


「ジーク、流石にそれは言いすぎだよ。リュミナ、紹介しておこう。カルディナ=オズフィムだ」


「カルディナ=オズフィムです」


「オズフィム? お父様のラース様の武勇に優れた騎士だとお聞きしています。私はリュミナ=メルトハイムです。エルト様の婚約者です」


ジークの姿にエルトは苦笑いを浮かべるとリュミナにカルディナを紹介する。

リュミナの事はまだ1部の者にしか話されておらず、カルディナはリュミナの事を知らないようであるが、エルト自らリュミナを紹介した事で彼女が地位のある人物だと理解したようで深々と頭を下げた。

隣国であるザガードにもラースの名も響いているようであり、リュミナは感心したように頷くとカルディナに笑いかける。


「リュミナ=メルトハイム様? メルトハイム家には後継者はいないはずでは……リュミナ様? ザガードの第3王女?」


「おっさんの娘でもリュミナ様の名前は知ってるんだな。おっさんと同じで脳筋だと思ってたのに」


「……ジーク、カルディナ様は性格が真っ直ぐ過ぎるだけで、魔法学や情報処理などは次代を担う人物ですよ」


カルディナはリュミナの名に心当たりがあったようであり、顔は引きつって行く。

その姿にジークは驚いたような表情をするが、レインは上役であるラースの事やカルディナ自身の才覚も理解しているようでジークに耳打ちをする。


「そう言われればそうだったな。迷惑しかかけられてないから、優秀だと言う事を忘れていた。ライオ王子に頼んでる事も手伝って貰ってるんだった……と言うか、まだ発表前の事を話して良いのか?」


「結局、発表する事だし、別に問題ないんじゃないかな? ただ、カルディナが何も考えずに周囲にぺらぺらと話すなら、それに見合った罰は受けて貰う事になるけど」


「わ、わかっています」


レインの言葉にジークは忘れていたと言いたげに頭をかいた後、リュミナの事は秘匿にしておくべきだと思ったようでエルトにカルディナに話した意味を問う。

その言葉にエルトは苦笑いを浮かべて問題ないと言うが、直ぐに表情を引き締めるとカルディナに他言無用と釘を刺した。

その時のエルトの様子はいつも柔和な笑みを浮かべている彼とは違い、カルディナを威圧する強さがあり、カルディナは完全にエルトから放たれる圧力に屈したようで声を裏返して頷く。


「最近、変な威厳が出てきたよな」


「締めるところはしっかりと締めないとね。シュミットだけに苦労をかけるわけにもいかないし、ご機嫌伺いだけの人間をそばに置くわけにはいかないから、それでジーク、シュミット、どうして、カルディナを同席させたんだい?」


エルトとカルディナの様子にジークは小さくため息を吐くと、エルトは直ぐに表情を戻して笑った後、カルディナを連れてきた理由を聞く。


「聞かれても困る。俺達も城に来る途中で捕まっただけだから」


「そうなんだ。カルディナ、何か私に言いたい事があるのかい?」


「は、はい。あ、あの、エルト様、カイン様とセス先輩が婚約したと言うのはどう言う事ですか!!」


ジークはカインとセスの事を話すのが面倒なようで知らないと言い切り、エルトは首を傾げながらカルディナに王城を訪れた理由を聞いた。

カルディナは1度頷き、深呼吸をするとまくしたてるようにエルトにカインとセスの事を聞く。


「あれ? ジークもシュミットも話してないの?」


「話すも何も俺が答える理由はない。だいたい、おっさんの娘には関係ない話だろ。おっさんとレギアス様から聞いたけど、結局、婚約者って騒ぎたててたのはこいつだけだろ」


「正式にラースからも父上に願い出たわけでもないしね」


エルトはジークが話していない事に首を傾げるがジーク自身はカルディナは当事者でもないため、関係ないと切り捨てる。

ジークの言葉でエルトは改めて、カインとカルディナには何のつながりもないと告げた。


「そんな事はありませんわ。私とカイン様は愛し合っていますわ!!」


「……そんな事実はない。ルッケルでカイン本人が言ってただろ」


しかし、盲目的なカルディナは拳を握り締めて、本来存在していないカインとの愛を主張するが、ジークは暴走したカルディナをルッケルの外まで探しに行った時の事を思い出したようで大きく肩を落とす。


「……取りあえず、レイン、フォルムに戻るか? ノエルが夕飯の用意をしてくれてるし」


「そうですね。明日も私達も仕事がありますし、エルト様、シュミット様、リュミナ様、そろそろ、私達は失礼します」


「そうだね。ただ、ジーク、レイン、カルディナをフォルムに連れて行ってくれるかい? 私達が話すより、本人の口から聞いた方が良いと思うから、カルディナの屋敷には伝令を出して置くから」


ジークはこれ以上、カルディナに関わり合いたくないようでレインに声をかけるとレインも同じ事を考えているようで3人に頭を下げると2人はそそくさとエルトの私室から逃げ出そうとする。

エルトは逃げ出そうとする2人を呼び止めるとカルディナを連れて行くように言う。

その表情には有無も言わせないと言う強さがあり、ジークとレインは大きく肩を落として彼の言葉に頷いた。


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