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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
427/953

第427話

「だと、思うんですけど」


「そうですね。ジークくんの診察で間違いないと思います。そうなると薬は……」


シュミットを拉致したジークはフォルムに戻るとその足でテッドの診療所に駆け込み、自分の診察が正しいかをテッドに確認する。

テッドはジークの診察を聞くと自分でもシュミットの症状を確認しようと思ったようで診察を開始するとジークの診察と同じ答えを出したようで頷き、シュミットに出す薬の話を始め出す。


「……なぜ、このような事になっているんだ?」


「ど、どうしてでしょうか?」


「それはシュミット様が自分の身体を省みないからではないでしょうか?」


ジークとテッドが自分をそっちのけで話し始めた事に診察で乱れた衣服を直しながらため息を吐くシュミット。

ノエルはジークとテッドの様子に苦笑いを浮かべるが、ミレットは元をたどればシュミットが悪いのではないかと言う。


「何を言っている?」


「自分の失態を取り戻そうとするのは立派ですが、自分の体調を無下にするのは感心できません」


シュミットはミレットの言葉にムッとしたようで表情をしかめるが、ミレットには彼女の信念があるようで真っ直ぐとシュミットを見返す。

ミレットはレギアスの下で学んでいた事もあり、シュミットに何があったか聞いているようで彼の後悔を理解しているようである。


「ミ、ミレットさん、シュミット様も落ち着いて下さい」


「ノエル、私は落ち着いていますよ」


「むろん、私も落ち着いている」


ノエルにはミレットとシュミットの間には火花が飛び散っているようにも見え、顔を引きつらせながら仲裁に入ろうとするが、両者からの返答は同じものである。

ジークに助けを求めようと彼へと視線を向けるノエルだがジークはテッドとシュミットに出す薬の事で真剣に話し込んでおり、どうして良いのかわからずにおろおろとし始める。


「ノエルも落ち着けば、言い分したら、ミレットさんの方が正しいし」


「で、ですけど、このまま、診療所でケンカになってしまうと他の患者さんに」


「他の患者って言っても、ただのやじ馬でしょ。緊急性のものはなさそうだし」


ノエルの様子にフィーナはため息を吐くとノエルは診療時間の事もあるため、この場をどうにかしたいようだが、フィーナは診療室のドアを開けるとフォルムの住人達が新たに現れた男に新たな話のネタができたと思っていたようで聞き耳を立てていたようである。

ドアを開けたフィーナと目があったフォルムの住人達は気まずそうに視線を逸らした後、水が引いて行くように逃走を始め出す。


「……そうみたいですね」


「まったく、何がしたいのかしら、それで、ジーク、この小者に出す薬を早く決めなさいよ。あんまり、遅くなると流石にエルト様がまともに働かないんじゃないの?」


ノエルはフォルムの住人達の姿に大きく肩を落とすとフィーナはドアを閉めてため息を吐いた後、盛り上がっているジークとテッドに声をかける。


「とりあえずはこれ。3日後に俺はライオ王子と約束してるから、その時に効果を確認させてくれ。後、ミレットさんの言いたい事もわかるから、これ、1本、飲んどいた方が良いと思うけど」


「……ジーク、それは止めを刺す事になるわ」


ジークはシュミットに効果がありそうな薬を取り出すと一緒に栄養剤を出し、フィーナは眉間にしわを寄せた。


「……止め?」


「えーと、美味しくないらしいです。でも、効き目は抜群らしくて、カインさんやラング様、レギアス様とかに根強い人気が」


「父上が?」


物騒な言葉が聞こえた事に眉間にしわを寄せるシュミットだが、ノエルからラングが愛用していると聞き、シュミットは手に取るとどうしたものか考えているのかごくりと息を飲む。


「……止めた方が良いわよ。ジーク、こっちじゃなくて、セスさんが飲んでる方にしなさいよ。胃が荒れてるのにこんな刺激物、死ぬわよ」


「あのな。不味いだけで身体の毒になるようなものは一切入ってないぞ」


シュミットは決意を込めた瞳で栄養剤の蓋を開けようとするとフィーナはシュミットの手をつかんで彼を止め、ジークにセス用の栄養剤を出すように言う。

自分の栄養剤が毒物扱いされている事に不満なようであり、大きく肩を落とす。


「ジークくんの栄養剤は効き目は凄いですよ。味は美味しくないですけど」


「……絶対に中毒性があるわ」


テッドもジークの栄養剤が気に入ったようで彼の診療机には空になった栄養剤が置いてあり、フィーナは以前から疑っているジークの栄養剤の中毒性に眉間にしわを寄せる。


「だから、中毒性なんてないって言ってるだろ。安全だから、一気に言ってくれ」


「……あぁ。ぐはっ!?」


「……だから、言ったじゃない」


ジークが薦める事とラングが常用していると聞き、決心したようで蓋をあけると一気に飲み干し、前のめりに倒れ、側にいたフィーナは眉間にしわを寄せてシュミットの身体を支えた。


「ジーク=フィリス、貴様、私に毒を盛ったな。私がまだエルト様の命を狙っているとでも思っているのか?」


「いや、そんなつもりはまったくないから、と言うか、人が作った栄養剤を毒呼ばわりするな。不味い事は認めるけどな」


「でも、この味が後を引くんですよね」


シュミットはフィーナに身体を支えながら、首を手で押さえ消え去りそうな声でジークを睨みつける。

ジークは栄養剤が毒だと言われた事に不満げな表情をするが、テッドはこの味が良いのだと頷く。


「……実際に飲んでいる人がいるのが信じられないわね」


「そ、そうですね」


ノエルとフィーナはジークの栄養剤を飲む人達の事が信じられないようで顔を見合わせている。


「それにそれだけ元気なら充分だろ」


「……確かに毒ではなさそうだな」


「ミレットさん、あの栄養剤って本当に大丈夫?」


シュミットは口の中を襲った味が引いた事でジークを信じたようであり、立ち上がると手にしていた栄養剤の空瓶へと視線を向けた。

シュミットの視線にフィーナはまたジークの栄養剤の中毒者が生まれた事に眉間にしわを寄せてミレットに栄養剤の安全性を問う。


「問題はないですよ。私は遠慮したいですけど」


「そうよね」


ミレットは苦笑いを浮かべて問題ないと言うが、飲みたいとは思わないと首を横に振った。


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