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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
424/953

第424話

「……やっぱり、裏工作はあいつの仕事か?」


「そ、そうみたいですね」


シュミットの言葉にカインの役割が手に取って見えたジークは大きく肩を落とし、ノエルは苦笑いを浮かべる。


「別にそう言うわけではないよ。カインは同年代の騎士や貴族の子息に顔が広い。医師団や職人達の子息にも同様にね。あれを見ればわかるだろ」


「……あれを見れば、どれだけ、多くの人間が生温かい目で見てたかがわかる」


「どうしても、そちらに話を持って行きたくなるんですね」


エルトはわずかな時間で王城にまで集まったカインの友人達を指差し、ジークは改めて、カインとセスの魔術学園時代の事を思い浮かべたようで眉間にしわを寄せた。

リュミナはジークの言葉に苦笑いを浮かべると、いい加減にしないかと言う。


「……確かに改めて、見るといろんな人がいるな。あいつ、本当に王都で何をしてたんだ?」


「それでも王族お抱えの医師団を丸めこめるとは限らないぜ」


「い、いきなり、何するんだ!?」


リュミナの言葉にジークはバカ騒ぎをしている集団に視線を移す。

彼の視線の先には騎士鎧を身にまとった者や文官のような者、職人や魔術師のような者もおり、ジークはカインの王都での暮らしがまったく想像できないようで眉間のしわがさらに深くなった時、ジークの背後から彼の頭をもみくちゃにする手が現れ、ジークは突然の事に驚きの声を上げた。


「だ、誰? レイン、知ってる人?」


「い、いえ、私もカインの友人知人をすべて知っているわけではありませんから」


ジークの声に視線が集まるとそこには酒瓶を片手に持った酔っ払いの大男が立っており、見知らぬ顔にフィーナはレインを引っ張り聞くが、レインも大男に心当たりがないようで首を横に振った。


「あ、あの。どちら様ですか?」


「……」


「いや、あんたに言ってるんだ」


ノエルは突然、現れた大男に素性を聞くが、大男は自分が聞かれているとは思わなかったようで自分の後ろに誰かいると思ったようで後ろを振り向くが誰もいないため首を傾げる。

そんな大男の姿にジークはぐちゃぐちゃになった髪を手で整えながら大きく肩を落とした。


「あれ、誰も俺の事を知らないのか? カインから聞いた事とかないか?」


「少なくとも俺は聞いた事はない」


「そうか? それは悪かったな」


「……バーニア、お前は何をしている?」


大男はエルトがいようとも関係ないのか、誰も自分の事を知らないと言っても気にする事なく酒をあおり、豪快に笑う。

その様子に、相手をしないといけないのかと言う空気が漂い始めた時、頭を押さえながらおぼつかない足取りでカインが応接室に入ってくると大男を『バーニア』と呼ぶ。


「カイン、ようやく来たか?」


「それ以上、近寄るな。酔っ払い……エルト様、シュミット様、リュミナ様、遅れてしまい申し訳ありません」


バーニアはカインに近寄ろうとするが彼は完全に出来上がっているため、酒の匂いをかぎたくないのか、彼を手で静止すると、エルト達に遅参した事を詫びる。


「いや、気にしなくて良いよ。それより、カイン、この人は?」


「……バーニア、お前はエルト様に挨拶もしてないのか?」


「あー、別に良いだろ。俺達、職人に王族、貴族なんて関係ないからな。それより、カイン、めでたい席なんだ。主役が飲まないでどうする?」


エルトは気にした様子もなく、カインにバーニアの事を聞く。

カインはその言葉にバーニアを睨みつけるが、彼は気にする事なく酒を飲むとカインへと手を伸ばす。


「……今、余計な事をしないでくれ」


「何だ? カインの弟、お前が付き合ってくれるのか?」


「ちょ、ちょっと待った!?」


カインが酒に弱い事を知り、カインが潰れてしまっては話がまた止まってしまう事を危惧したジークはバーニアへと手を伸ばす。

ジークに引きとめられた事でバーニアの手はジークの方に回され、ジークを拉致して行く。


「ジ、ジークさん!?」


「ノエル、とりあえず、ジークに任せておいて」


拉致されて行ってしまったジークを慌てて追いかけようとするノエルだが、カインはまだ痛む頭を押さえながら彼女を引き止める。


「で、ですけど」


「大丈夫。ジークなら……」


「カイン、お水です」


心配そうな表情をするノエルにカインは優しげな笑みを浮かべるが、頭がいたいようで直ぐに顔は歪む。

その様子にミレットは苦笑いを浮かべるとグラスに水を入れ、カインに手渡す。


「ありがとうございます……中が酒って言う落ちはないですよね?」


「ないですから、安心してください」


カインは礼を言いながらも、余程、酒が苦手なのか少しだけ警戒しており、ミレットはあまり見ないカインの様子にくすくすと笑うと釣られるようにエルトやリュミナも表情を緩ませる。


「それで、カイン、バーニアと言ったかな。今のは誰だい?」


「『バーニア=レーヴァ』、王都の職人通りにいる鍛冶師です。私が魔導機器の外装に使う金属部分の加工などに協力して貰っています。。武器以外にも外科的な治療を行う時に使う道具を作っています。見た目に反して器用ですので細やかな細工も得意としています」


「へぇ、細工をね。1度、見てみたいものだ」


「……何故、そのような者が王城に入り込んでいるのだ?」


カインはバーニアの素性を話すと、エルトは興味を持ったようで小さく頷く。

しかし、シュミットはあまり庶民を王城に入れるのは賛成できないようであり、眉間にしわを寄せている。


「私が知っているカインの友人に手当たり次第に連絡してと言ったからね。それに私達がやろうとしている事に協力して貰えそうな人と知り合う良い機会じゃないか?」


「確かにそうなのですが……そのためにカイン=クロークと話をする機会が欲しいと言ったのは私ですし」


エルトはアンリの事を解決する糸口を探しており、その1つにカインの人脈を考えているがどこかカインに頼み事をするのは悔しいようで頭を抱えている。


「……あの小者は何がしたいのよ?」


「いろいろと考えたい事があるんだろ。そう簡単に割り切れるほど、人間は単純じゃないよ」


頭を抱えるシュミットの様子にフィーナはため息を吐くが、カインはカインでシュミットの考えがわかるようで苦笑いを浮かべた。


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