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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
423/953

第423話

「とりあえず、このテンションにも付いて行けないし、帰っても良いか? 俺、フォルムに戻ってやる事あるんだけど」


「いや、帰る前に私もジークに聞いて欲しい事があるんだよ。ジークが一緒に来てくれて良かったよ」


ジークはテッドに学びたい事もあるため、エルトにフォルムに戻る許可を貰おうとするのだがエルトはジークにも話したい事があると言い、彼を引き止める。


「……変な事じゃないだろうな?」


「ジークはどうして私を疑うかな?」


「日頃の行いのせいでしょ」


エルトへと疑いの視線を向けるジーク。エルトはジークの視線に心外だと言いたげに肩を落とすが、フィーナからエルトへと冷ややかな言葉が飛ぶ。

フィーナの言葉にエルトの巻き込まれなれているノエル、レイン、シュミットはエルトを擁護できないようであり、彼へのフォローはない。


「……流石にこれは酷いよね?」


「そう思うなら、突然、変な話を持ってこないでくれ」


フォローがまったくない事に眉間にしわを寄せるエルトだが、ジークは今のところイヤな予感もしていないようで頭をかきながらエルトに自重するように言う。


「はいはい。なるべく気を付けるよ。それで本題に移っても良いかな?」


「あぁ」


「その前の挨拶が遅れてしまって申し訳ない。エルト=グランハイムだ」


「ミレット=ザンツです。エルト様、お目にかかれて光栄です」


エルトは苦笑いを浮かべた後、ミレットと挨拶をしていない事を思い出したようであり、エルトとミレットは挨拶を交わす。


「ジークとリュミナから話は聞いているよ。フォルムではリュミナが世話になった」


「いえ、私の力ではありません。カインやジーク、みなさん力があったからです。私1人では何もできませんから」


エルトはリュミナからフォルムでの事を聞いており、彼女が指揮を執ってくれた事でリュミナ達の無事を確保できたと礼を言う。

しかし、ミレットは自分1人の力ではないと直ぐに首を横に振る。


「……ジーク、何か私に言いたい事でもあるの?」


「いや、フィーナもミレットさんのように謙遜って言葉を覚えてくれないかな? と思ってな」


「ジーク、あんたね」


エルトとミレットのやり取りに、ジークはもう少しフィーナに成長して貰いたいとおもったようで彼女へと期待を込めた視線を向ける。

フィーナに取ってはジークの言葉は嫌味でしかなく、ジークを殴り飛ばすために両手に持っていた料理をテーブルに置く。


「ジークさん、どうして、余計な事を言うんですか!?」


「フィーナさんも落ち着いてください」


「これはいつもの光景だね。レインも手慣れた感があるけど」


今にもジークに殴りかかりそうなフィーナをノエルとレインが抑え込み、エルトは相変わらずの3人の中に自然にレインが入っている様子に苦笑いを浮かべた。


「そんな事はないですけど」


「エルト様、話も進みませんし、本題に移ってはいかがでしょうか?」


「そうだね。ミレットもジークやリュミナの言う通りの人物だったし、ちょうど良い。ミレット、悪いんだけど、君にも1枚かんでもらうよ」


エルトの言葉に気まずそうに視線を逸らすレイン。

レインの様子になど気にする事なく、シュミットはエルトに1つの進言をする。

エルトはシュミットの進言に頷いた後、小さく口元を緩ませた。

その表情から彼がまた何かを企んでいるのかわかり、ジークとレインは眉間にしわを寄せる。


「だから、変な事ではないよ。この間のジークの提案、乗ってみようと思うんだ」


「俺の提案?」


「あの、それって、ひょっとしてアンリ様を診察できるって事ですか?」


エルトはため息を吐きながら、ジークの意見を取り入れたいと笑う。

だが、ジークはエルトの言いたい事が直ぐに理解できなかったようで首を傾げていると遠慮がちにノエルが手を挙げる。


「そう言う事、流石にジークがノエルにべたぼれで、アンリに下心を抱くような事はしないと思うけど」


「……ノエルさん、そんな気はありませんので、その殺気をおしまいください」


「たまにノエルの迫力に威圧される時ってあるわよね」


エルトはジークとノエルをからかうように笑うと、エルトの言葉にノエルからは清後に殺気をまとい始め、背後から感じるノエルの殺気にジークは顔を引きつらせた。

完全にノエルに威圧されているジークの姿にいい気味だと言いたげにフィーナは笑う。


「それで、私にも1枚かんでもらうと言うのはどう言う事でしょうか?」


「あぁ、ミレットは言うなれば、ジークのお目付け役だよ。アンリに変な事をしないように流石にジーク1人でアンリを診察させるわけにはいかない。それにジークとミレットの見立てを聞きたい。ジークに言われてシュミットとともにアンリを診察した医師達の経歴を調べて見たんだ。確かに医師としては実績がある。しかし、個人個人での診察をしても誰かに相談しているようには見えない。それは各個人の考えでしかない。少なくともそれではアンリを助けられないと私は判断した」


エルトはジークとミレットに診察を頼むと言うと真剣な表情で2人へと視線を移す。

ジークとミレットはお互いに顔を見合わせた後に、お互いに答えは決まっているようで頷く。


「まぁ、まだ。どうやって、アンリを診察できるようにするかは決まってないけどね。今、そっちの調整をシュミットにやって貰っているところだよ」


「……引っ張っておいて、それかよ。全部、決まってから話をしてくれ」


「仕方ないだろ。元々、医師団は私達の管轄ではないのだからな。いろいろと手を回さなければいけない事はある……そのためにカイン=クロークにも協力して欲しかったのだが、まったく、必要な時にあの男は何をしているのだ」


ジークとミレットの返事にエルトは満足そうに笑うが、正式にアンリの診察できる機会を準備できたわけではなく、ジークは大きく肩を落とした。

シュミットはいろいろと動いているようであるが、1人では手が回らない事もあるようで、現在、酒で潰れているカインの顔を思い浮かべているのか舌打ちをする。


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