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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
421/953

第421話

「……これを報告しにきたんだけど」


「じゅ、準備万端ですね」


ジーク、ノエル、ミレットの3人が王城に到着するといつもの応接室に通された。

応接室にはカインとセスが上手く行った事を喜ぶように簡単なパーティーの準備がされており、カインとセスの友人達なのかルッケルのイベントを手伝ってくれていた人々の顔がいくつか見える。


「報告する内容が合っているから良いですけど、エルト様の早とちりだと大問題ですよね」


「ジーク、なんか、凄い騒ぎになってるわよ」


「あぁ、それだけ、あの2人の事を煮え切らないと思っていた人間が多かったって事だろ」


「……本当ね」


フィーナとレインがジーク達を見つけて駆け寄ってくると、フィーナはこの状況にどうして良いのかわからないようで眉間にしわを寄せた。

ジークはポリポリと首筋をかきながら、答えるとジーク達の目にはすでに盛り上がっているカインとセスの友人達の姿が映る。


「まあ、煮え切らないと思っていたのはたくさんいるでしょうね」


「ここまで盛り上がられるとカインとセスさんも幸せですね」


レインは苦笑いを浮かべると、ミレットは応接室の様子を見て表情を和らげて言う。


「ですけど、カインさんもセスさんも遅いですね」


「セスさんの両親にやっぱり反対されたのかな?」


主役不在の中で盛り上がっている応接室を見て、ノエルは応接室のドアへと視線を向けた。

カインやセスが約束の時間に遅れる事など考えられないため、ジークはセスの両親にカインとの事を反対されてしまったのではないかと思ったようで眉間にしわを寄せる。


「でも、これだけの人達が祝福してくれているんですから、きっと、大丈夫ですよ」


「そう思いたいですね」


ミレットは2人の事なら大丈夫だと笑うが、レインは騎士の名門の出身と言う事もあり、お互いの気持ちだけでは上手くいかない事も知っているためか、その表情は優れない。


「なぁ、実際、セスさんの両親って、カインの事をどう思ってるんだ? レインはその辺の事ってわからないのか? 噂話とか耳に入ってないのか?」


「すいません。私は詳しくはないです。騎士として武芸しかやってきませんでしたので」


「……そうだな。聞いた俺が間違いだった」


「ジーク、それはどう言う事でしょうか?」


ジークはレインにセスの両親について話を聞こうとするが、レインは良くわからないと首を振った。

レインの言葉にジーク自身、レインが噂話関係に興味があるとは思えないようで眉間にしわを寄せたままである。


「……これは何の騒ぎですか?」


「セスさん? カインさんはどうしたんですか?」


「それが……」


その時、応接室のドアが開き、セスが1人で入ってくるとジーク達を見つけて駆け寄ってくる。

ノエルはセスが1人の事に首をかしげて聞くが、セスは眉間にしわを寄せてしまう。


「まさか、セスさんのご両親に反対されてしまったんですか?」


「……い、いえ、そちらは上手く行ったんですが」


「上手く行ったのか? それなら、何で、カインはいないんだ?」


ノエルは表情を曇らせて言うと、セスは自分で話をするのは恥ずかしいのか顔を赤くして視線を逸らした。

彼女の様子にジークは驚いたような表情をした後にカインがいない事に首を傾げる。


「両親に話をしたら喜んでくれたのですが、祝杯だと言われてお父様に出されたお酒でダウンしてしまいまして」


「……真昼間から、どれだけ飲んだんだよ」


「いえ、私も知らなかったのですが、1杯で卒倒してしまいまして」


カインはセスの父親に出された酒を飲んで倒れてしまったようであり、ジークは断れない空気は察したようで大きく肩を落とした。

しかし、ジークが思った事とは違い、予想を超える以上にカインが酒に弱かったと言う事実が明かされる。


「フィーナ、知ってたか?」


「知らないわよ。ただ、私もあのクズがお酒飲んでるところは見た事ないわ」


「そうですね。カインの屋敷に住まわせて貰っていますけど、1度も飲んでいるところを見た事はないですね」


眉間にしわを寄せてジークはフィーナに尋ねるが、妹であるフィーナ自身も知らなかった事実であり、その場には微妙な空気が流れて行く。


「あの、でも、カインさんがいないのは問題ありませんかね? これだけ盛り上がっているのに」


「確かに、主役の1人が不在なのは問題ありそうだな」


「それより、これは何の騒ぎなんですか? なぜ、こんなに人が集まっているのですか? な、何ですか!?」


応接室の中の盛り上がりにジークとノエルはどうしたら良いのかわからないようで顔を見合わせる。

セスは見知った顔がいる理由がわからないようで眉間にしわを寄せた時、彼女の友人達がセスを拉致して行き、セスの声が響きわたった。


「今更だけど、エルト王子がいないのにこんなバカ騒ぎをしていて良いのか?」


「確かにそうですね」


準備の指示を出したのはエルトなのであろうが、既に場は完全に暴走しており、エルトもいないなか、王城でこのようなバカ騒ぎをしていて良いのかとため息を吐くジーク。

レインはジークの意見に賛成のようで眉間にしわを寄せた。


「エルト様が計画立てたんだから問題ないんじゃないの? と言うか、私達が追い出されたのって、これの準備するため?」


「時間稼ぎっぽいよな。そのために主役不在……何か、元も子もないな」


エルト主催のため、問題ないと言い切ったフィーナはテーブルにある料理に手を伸ばす。

料理は時間がかかりそうな物もあり、ジークは手の込んだ料理に感心したように言うが、カインが不在になってしまった事に失敗だと思ったようで大きく肩を落とした。


「遅くなってすまなかったね……カインとセスは?」


「……と言うか、第1王位継承者とその婚約者が入ってきたのに誰も気づかないのは問題あるだろ」


その時、応接室のドアが開き、正装のエルトとリュミナ、シュミットが応接室に入ってくる。

しかし、応接室のバカ騒ぎは収まる様子は見えず、ジークは眉間にしわを寄せると場をわきまえないカインとセスの友人達の姿にシュミットは苛立ちを隠せないようで彼の眉間にはくっきりとしたしわが寄っている。


「セスさんはご友人達に連れて行かれてしまいました。そして、カインさんは」


「セスさんの父上にお酒を勧められて、ダウンしてしまったようです」


「あー、カイン、飲まされちゃったんだ。それは失敗したね」


ノエルとレインから、カインとセスの状況を聞いたエルトは苦笑いを浮かべた。


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