第419話
ラングに栄養剤を届けに行って数日が経った時、ジーク達はカインとセスに拉致され、再び、王都を訪れた。
急に王都を訪れた事もあり、エルトに直ぐに謁見はできず、カインとセスは先にセスの両親に挨拶、フィーナはレインはととに騎士の訓練室、ジーク、ノエル、ミレットの3人は王立図書館とそれぞれ時間を潰している。
「どうして、ジークは眉間にしわを寄せてるのかな?」
「……頼むから、王族らしく、せめて護衛の1人でも連れて歩いてくれ」
図書館に着くとジークは医術書の本棚に向かい、ノエルは最近、ミレットに教わっている料理が楽しくなってきたようでミレットと一緒に料理のレシピ本を探している。
ジークは本棚を眺めていると背後に気配を感じ、振り返ると魔法書を手に持ったライオが立っており、相変わらず、警護1人も付けていないライオの姿に大きく肩を落とした。
「前も言ったけど、王立図書館は魔術学園と隣接してるからね。元々、警備体制もしっかりしてるから、問題ないよ。それより、ジーク」
「何だよ?」
ライオは苦笑いを浮かべて危険はないと答えると、真剣な表情でジークの名前を呼んだ。
ライオが真剣な表情をしている様子をあまり見た事のないジークは一瞬、戸惑ったような表情をするが、特にやましい事があるわけでもないため、直ぐに聞き返す。
「この間、ジークの薬について報告したい事があるって言ったのに、どうして、私を訪ねてこないんだい?」
「……悪い。すっかり忘れてた」
「そうだろうと思ったけどね。それで、時間はあるかい?」
ライオはジーク達がリュミナを王城に連れて来た日の続きをしたかったようであり、ジークはすっかり忘れていたようでライオから視線を逸らして謝る。
ライオ自身もジークの返事をある程度、予測できていたようで小さくため息を吐くとジークの予定を聞く。
「あー、もう少ししたら、エルト王子に謁見しないといけないから時間はないな」
「へえ、兄上には会う時間が取れて、私相手には時間が取れないって言うんだ。ジークは冷たいね」
「……変な言い方をしないでくれ。俺自身はエルト王子に用はないんだよ。ただ、行かないとうるさい人間がいるんだよ。俺としてはそっちより、薬の事がどうなってるのか知りたい」
ジークはエルトとの謁見時間が近づいてきている事もあり、首を横に振るとライオはエルトと比べられた時に自分をおざなりに扱われた事に少しだけ、面白くなさそうな表情をする。
その様子にジークは大きく肩を落とすとライオの話の方に興味があると言う。
「うるさい人間? 確かに兄上もうるさいだろうけど」
「それより、カインだ。今回の事は俺、まったく関係ないんだよ」
「カインが? 今度は誰を預かれって言うんだい?」
ジークはカインとセスの報告事項に自分達が同席する理由がないため、大きく肩を落とした。
ライオはジークが無理やり引っ張られてきた事は察しがついたようで苦笑いを浮かべるとリュミナの事もあるため、冗談めかして笑う。
「いや、報告事項があるんだよ」
「そうなんだ? とりあえず、座って話そうか?」
「それもそうだな」
ジークは毎回、毎回、無理難題を持ってくるわけではないとため息を吐くと、ライオは話が長くなりそうだと思ったようでジークを席に誘った。
ジークはエルトに報告すれば、ライオにも話は伝わると思ったようでライオに話しても問題ないと判断し、2人で席に移動する。
「ジークさん……あれ、ライオ様?」
「ノエル、久しぶり……あれ? 今日は知らない人もいる」
ジークとライオが座れる場所を探しているとノエルが2人を見つけて手を振っている。
2人はノエルが呼んでいるため、移動するとライオは彼女の向かい側に座っているミレットを見つけて首をひねった。
「あー、ライオ王子、紹介するミレット=ザンツさん、レギアス様の養女になる予定、ミレットさん、こっちは第2王位継承者のライオ王子」
「ジーク、私の紹介の仕方が雑じゃないかな?」
「はじめまして、ミレット=ザンツです。お目に書かれて光栄です」
「ライオ=グランハイムだ。よろしく頼むよ、ミレット」
ジークは初対面のライオとミレットをお互いに紹介するとライオはジークの紹介の仕方が納得いかないようでため息を吐く。
ジークとライオの様子にミレットは苦笑いを浮かべた後、ライオに向かい深々と頭を下げると、ライオは表情を引き締めてミレットと挨拶を交わした。
「ジーク、本当にカインはミレットを兄上に預けにきたわけじゃないよね?」
「……しつこい。それにミレットさんはカインがレギアス様から押し付けられたんだ」
「押し付けられたと言う言い方は酷いですね」
レギアスの養女と言う立場になるミレットを見て、ライオは1つの疑問を抱くがジークは首を横に振った。
ジークの言葉にミレットはわざとらしく口を尖らせる。
「すいませんでした。ミレットさんがフォルムに来てくれて、もの凄く助かってますよ。なぁ、ノエル」
「はい。ミレットさんがフォルムに来てくれて良かったです。いろいろ教えていただけるし、楽しいです」
ミレットが自分をからかうつもりなのは理解できているジークはノエルに声をかけて日頃の感謝を口に出すと、ノエルはジークの言葉に大賛成だと言いたいようで大きく頷く。
「それで、ジーク達は兄上に何の用事?」
「俺達と言うか、カインとセスさん」
「カインとセス? ……何、ようやくくっ付いたか?」
4人は席に座るとライオはジーク達が王都に訪れている理由を聞く。
ジークは持ってきた医術書を開きながら、カインとセスの付添だと言うと、ライオは直ぐに答えを導き出したようで首を傾げた。
「正解」
「当たったよ。ジーク、正解者に何かないの?」
「ないな……と言うか、ライオ王子、知ってって言ってないか?」
ライオは正解した事で笑顔を見せて、両手を前に出すと、ジークはライオの反応に何か感じたようで眉間にしわを寄せる。
「まぁ、叔父上に栄養剤を届けた時にジークとノエルの様子から兄上は想像付いたって言ってたよ」
「……本当に俺達、何のために王都まできたんだろうな」
「そうですね」
ライオはエルトからしっかりと話を聞いているようであり、ジークとノエルは苦笑いを浮かべた。




