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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第418話

「お、落ち着いてなんていられません!! だいたい、どうして、ジークさんはそんなに冷静なんですか? せっかく、想いが通じあってるんですから」


「俺、冷静か?」


「どちらかと言えば、冷静な部類だね」


ノエルは感情的になってしまっており、矛先はジークにも向けられる。

ジークはノエルを抑えつけながら首を傾げているとカインは苦笑いを浮かべた。


「ノエルも落ち着きましょう。だいたい、カインの事ですから、セスさんのご家族に反対されたとしたら、どんな手段を使っても認めさせようとするでしょうから」


「そう言われると俺が目的のためなら、手段も何も選ばない極悪人みたいじゃないか。傷つくな」


「その通りだろ」


ミレットは一般的な話をした事にノエルがここまで感情的になってしまった事に気まずそうに苦笑いを浮かべるが、直ぐにノエルを落ち着かせようとする。

ミレットの言葉にカインはわざとらしく傷ついたと言い、ジークは呆れたのか肩を落とす。


「どうして、そんなに軽いんですか? セスさんの気持ちを考えてください」


「だって、セス」


「ノエルも落ち着きなさい。心配してくれるのは嬉しいですが、私達だってその事についてはいろいろと考えていますから」


カインの様子は悪ふざけをしているようにしか見えず、ノエルは彼氏であるなら、セスの気持ちを汲んでやれとテーブルを叩きながら主張する。

自分達の事をここまで心配してくれるノエルの姿にカインは表情を和らげるとセスの名前を呼ぶ。

セスは話す前にノエルに火が点いてしまった事もあったため、困ったように笑いながらノエルに話を聞いて欲しいと言う。


「本当ですか?」


「まぁ、セスさんの事だ。妄想でカインと付き合う時の事を考えて……冗談です」


「まあね。方法はいくらでもあるよ。それに世間体で言えば、俺とセスはジークとノエルより、反対も少ないだろうしね」


聞き返すノエルの姿にジークは悪ノリで冗談を言おうとするが、セスに鋭い視線で睨みつけられてしまい、口をつぐむ。

カインはジークとセスの様子に苦笑いを浮かべると、異種族、それも人族と魔族と言うある種禁忌と言われている2人を前にして、これくらいの事で悩んではいられないと笑う。


「はい。もし、認めていただけなければ、私はコーラッド家の名を捨てる覚悟もできています」


「……セスさん、ずいぶんと吹っ切れたな」


カインの言葉にセスは続くが、彼女の言葉をジークは頼もしく思えたようで苦笑いを浮かべるが、家族と言う物に憧れのようなものがある彼にはその言葉はどこか悲しいものである。


「いや、そうならないようにどうにかするから、それこそ、最悪の場合はエルト様やラング様に間に入って貰う」


「それが良いですね。それにカインの事ですから、セスさんの家に婿入りでも良いと思ってるでしょうからね」


「まあね。俺も家名に思い入れもないしね。それに家名が一緒だから、家族ってわけでもないだろうし」


ジークの心の内を知ってか、カインはどうにかすると答え、ミレットは1つの解決方法を提示する。

カインはミレットが言った事も視野に入れていると笑う。

その言葉はアリアを無くしてから1人になってしまったジークを本当に弟だと思っていると暗に言っているようであり、ジークは若干、気恥しくなったようで視線を逸らして頭をかいた。


「とりあえず、エルト様のところには行って来ないといけないね」


「そうですね……気が重いですわ」


「確実にからかわれるだろうからね」


カインは1度、頷くとエルトにいつ報告に行くか考えているようで首をひねる。

セスはカインの言葉に頷きはするものの、エルトの臣下になってからはカインとの事でずっとからかわれていたため、また、からかわれると思ったようで大きく肩を落とした。


「からかわれるのは祝福されている証拠ですよ」


「そうかも知れませんが」


「まぁ、ミレットさんはエルト王子の被害に遭った事がないから、簡単に言えるよな」


ミレットはセスにからかわれても良いではないかと言うが、エルトが誰かをからかう時はしつこい事もあり、主な被害者であるジークとセスは顔を見合わせると大きく肩を落とす。


「はい。セスもジークもそろそろ止める。ジーク、他にエルト様は何か言ってた?」


「いや、ただ、エルト王子にアンリ王女の診察できないか聞いてみた」


カインはパンパンと手を2回ほど叩き、この話は終わりと言うとジークに王都で他に変わった事はなかったかと聞く。

ジークは隠す必要性をないと思っており、アンリの診察について話す。


「ずいぶんと思いきった事を言ったね」


「いや、必要だと思ったんだよ。風邪に似たような症状ってエルト王子に言われたから、適当に薬を選んだわけだろ。実際、どんな病状が出てるかは俺は知らないわけだし、呪いかもとは言われてるけど、本当に呪いかだってわからないわけだろ。ばあちゃんの資料に関しても同じ、ばあちゃんの薬は呪いすら治療するって言っても本当に治してたのが呪いだったかだってわからないんだから」


カインはジークが医師としての道をも視野に入れ始めた事を頼もしく思っているようで優しげな笑みを浮かべる。

ジークは自分でアンリを診察しなければ、何をして良いのかわからないと本心を言う。


「それで、エルト様は何て言ってた?」


「そりゃ、難しいって言ってた。エルト王子もシュミット様も首をひねってたよ」


「そうでしょうね。でも、ジークの言いたい事もわかります。なかなか、自分の診断が間違っているとは言えない方もいますから、そう言う時には呪いと言うのは便利な言葉ですからね」


ジークはアンリの診察は難しいだろうなとため息を吐くと、ミレットも自分でアンリの診察をしてみたいと思っているのかジークの言葉に頷く。

2人の言葉にはアンリが呪いを受けていると言うのどこかで疑いを持ち始めているようにも見える。


「そこら辺は、エルト様とシュミット様の頑張りに期待しよう。その前に」


「わかってるよ。アンリ王女の診察ができるようになった時に、しっかりと診察できるようにテッド先生からいろいろと学べば良いんだろ」


「後は私からもですね。テッド先生の知識とは違う考え方がワームにもありますから」


カインは考え方はしっかりしていても足りない部分があると言い、ジークは自覚しているようで大きく肩を落とした。

そんなジークに追い打ちをかけるようにミレットは楽しそうに笑う。


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