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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第413話

「手伝うと言っても、今の状況では邪魔にしか」


「でも、カインにはセスさんが必要だと思うんですけどね……俺達じゃ、あいつを支える事はできないですからね」


しかし、セスは逃げ出した事や現状の自分の心理状態では役に立たないと言う事は分析できているようで力なく笑う。

ジークはセスの様子に困ったように頭をかくと、カインの立場などを考えると自分では手伝えない事も理解しているようでその言葉は心なしか小さく聞こえる。


「カイン=クロークを支えるなど誰にもできませんわ。そんな人間、必要ないんですから」


「そんな事はないと思うんですけどね」


ジークのつぶやきはセスにも聞こえており、セスもジークと同じ事を思っているようで自分にはカインは必要ないとつぶやく。

ジークはカインの隣にはやはり、セスが必要だと苦笑いを浮かべた。


「いえ、あの男の事ですから、私が悩んでいようとも関係なしに仕事を続けて、平然とすべてを終わらせるのですわ。まるで、私が気に病んでいるのをあざ笑うかのように」


「……セスさんは、疑い過ぎな気がしますけど」


セスは自分が戻ってもカインに笑われるだけであり、その時のカインの顔が簡単に思い浮かんだようで、恥ずかしさより、悔しさや怒りがこみ上げてきたのか右腕をテーブルに叩きつける。

ジークはカインの性格は悪くてもそこまでの事はしないと思ったようで、改めて、カインとセスの関係性がわからなくなってきたようで大きく肩を落とした。


「実際、カインは収支計算は苦手だって言ってたし、フォルムの代表達が整備したい物とかの話を持ってくるなら、セスさんがいた方が良いと思いますよ」


「苦手と言っても人並み以上にできるでしょう」


「確かに」


それでも、諦めずにセスをカインの元に戻そうとするジークだが優秀なカインにスキはなく、ジークは眉間にしわを寄せる。


「で、でも、カインがセスさんを頼りにしてるのは俺達から見てもわかりますよ」


「そんなことはありませんわ。だいたい、カイン=クロークが頼りにしているのは私ではなく、ジークやノエル、フィーナでしょう。それに今ではミレットさんもいます……私がいる必要はないんです」


ジークはセスを励まそうとしている事を思い出して、首を大きく横に振るとカインがセスをいかに頼りにしているかを教えようとするが、セスはカインが頼りにしているのは自分より、ジーク達であり、先日からフォルムに来ているミレットとの仲を疑っているようである。


「いや、確かにミレットさんとは仲良いですけど、あれは恋愛感情的なものじゃないですから」


「それにジークだって、私を必要ないと言ったじゃないですか。私に物を教わる必要はないと……そう考えると私はフォルムにいる必要もないんです」


「ま、待った。転移魔法は止めてください」


ジークはカインとミレットでそんな色気のある話になる事はないと強調するが、セスはジークがアリアの資料をテッドに預けてしまった事で自分がフォルムに滞在する理由もなくなってしまったと考えているようで転移魔法で王都に戻ろうとする。

ジークは1番、見慣れた魔法の詠唱が始まった事で、セスの次の行動を予見したようで彼女を引き留めようとするが、彼女が魔法の詠唱を止める事はなく、彼女の身体を白い光が包み込み始める。


「だから、人の話を聞いてくれ!?」


「……まったくだね」


「なぜですか?」


止まらない魔法の詠唱に声をあげるジーク。

その時、ため息混じりの声とともにセスの身体を包み込んでいた白い光は弾け飛び、何が起きたかわからないセスは驚きの声を上げた。


「カイン? お前はどこから入ってくるんだ?」


「窓からだけど、一応、領主なんだから、窓から侵入とかさせないで欲しいよね」


「あー、確かに作業前に掃除した時に窓は開けたな」


ジークは声がした方へと視線を移すと苦笑いを浮かべたカインが立っており、窓が開けられている。

どうやら、カインはセスの行動を先読みしていたようで、調合室に侵入すると同時にセスの転移魔法を無力化したようであり、セスは逃げ道を失い、カインと顔を合わせにくいようでジークの背後に隠れた。

ジークは自分の失敗とセスの行動、カインに挟まれた事からどうして良いのかわからないようで困ったように頭をかく。


「コーラッドさん、それそろ、みなさんが来るから、戻って貰わないと困るんだけど」


「べ、別に私が同席する必要などありませんわ。だいたい、私はエルト様の指示でジークに勉強を教えるのが仕事であって、カイン=クロークの手伝いをする理由などありません」


「……俺を挟まないでやって欲しい」


カインはセスに応接室に行こうと言うが、セスはジークの背後からカインを威嚇するように言う。

ジークは2人が話し合いを始めた事に居づらくなったようで大きく肩を落とす。


「ジーク、空気を読んで出て行きなよ」


「そ、そうだな。それじゃあ、窓からで悪いけど、ぐえっ!?」


「ジーク、行く必要はありませんわ。だいたい、あなたは調合中でしょう」


カインはジークの心境がわかったようで助け船を出そうと思ったのか、自分が侵入してきた窓を指差す。

ジークはカインの言葉に素直に頷くと窓に向かって駆け出そうとするが、セスはジークの服をつかみ、ジークの首は締められる。


「……そう言うなら、よそでやって欲しい」


「だろうね……セス」


「な、何ですか!?」


ジークは理不尽だと言いたいようで大きく肩を落とすと、カインはジークの様子に苦笑いを浮かべた後、真剣な表情になるとセスをいつもとは違い名前で呼ぶ。

セスはカインの声と表情に胸が高鳴ったようで声を裏返すとジークから離れてカインと距離を取るように壁際に移動する。


「戻るよ。みんなが待ってる」


「……そこはもっと言葉を選べよ」


「ジーク、邪魔をしない。少し黙ってて」


「わかったよ」


カインはジークを押しのけてセスとの距離を縮めるとセスに手を伸ばす。セスはカインの顔を直視できないようであり、完全に壁際に追い詰められてしまう。

ジークはカインの言葉と2人の様子にもっと言うべき言葉があると思ったようで眉間にしわを寄せるが、カインは彼に黙るように言う。


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