表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
410/953

第410話

昨晩、計画していたカインとセスについての話し合いはセスの乱入で有耶無耶になってしまった。

今日はジークもノエルもテッドの診療所の手伝いではなく、調合室でジオスやルッケル用の薬を作っており、カイン、セス、レインは領民達の代表と話し合いを行っているため、フィーナは1日休みのようで調合室でだらけている。


「結局、逃げられたわね」


「逃げられたってのも違うけどな」


フィーナは調合室に置いてあるテーブルに両肘を突き、昨晩の事を思い出したようで不満そうな表情で言う。

背後から聞こえるフィーナの言葉にジークは調合を行いながら苦笑いを浮かべた。


「でも、どうにかできないですかね?」


「まぁ、どうにかしてやりたいのはわかるんだけどな。何をしたら良いのかがわからない。言いたくないけど、圧倒的に情報が少ないからな」


ノエルはフィーナにお茶を用意していたようで彼女の前に淹れたてのお茶を置くと、カインとセスの事で力になりたいのだが、力になれない自分がふがいないと思っているようで表情を暗くする。

ノエルの言いたい事はフィーナを抜かしたジーク達の共通の思いであり、ジークは改めて考えた時に、同年代の友人達が少ない自分達には恋愛話も聞いた事がないためどうして良いかわからないとため息を吐いた。


「確かにね……」


「フィーナ、お前、ヒマならフォルムの人達に聞いてこいよ」


「イヤよ。面倒だし、それになんか、私、フォルムの女の子達に嫌われてる気がするのよね」


ジークは自分が忙しい事や調合室にフィーナが居ても邪魔なため、追い出すようにフォルムの人達に話を聞いてくるように言う。

フィーナは面倒だと首を振った後、何となく、フォルムの同年代の娘から嫌われているような気がしているようで意味がわからないとため息を吐いた。


「それはレインさんといつも一緒にいるからじゃないですかね? 診療所でも2人の事を聞かれる事ありますし」


「確かにあるかもな。結構、話にも出てるみたいだし」


「何でよ? 私とレインは何でもないでしょ。それに一緒にいるならゼイだって一緒でしょ」


ノエルは診療所でフォルムの領民から話を聞いているようで、フィーナが嫌われている理由に心当たりがあり、苦笑いを浮かべる。

ノエルの言葉はジークも聞いた事があるようで頭をかくが、フィーナは納得がいかないとテーブルを叩いた。


「いや、俺に言われても困るんだけどな……なぁ、ノエル、診療所ではカインとセスさんって、どうなってるんだ?」


「カインさんとセスさんのお話ですか? えーと……すでにご夫婦だと認識されています」


「……否定してるのはセスさんだけだしな。と言うか、完全に外堀埋まってるのにどうしてここまで時間がかかってるんだ?」


フィーナの様子に苦笑いを浮かべるジークは、診療所で聞こえる噂話ではカインとセスはどうなっているのかとノエルに聞く。

ノエルは首を傾げるとカインの使い魔が調合室に入り込んでいないかを確認するように調合室の中を見回し、内緒話だと小声で話す。

フォルム内でもカインとセスは既に公認の中になっているようであり、ジークは改めて進展のない2人の様子に大きく肩を落とした。


「どうしてでしょうね?」


「エルト王子の周辺、魔術学園、フォルム、ジオス……カインはなんだかんだ言いながら顔も広いから、もっと多くいそうだよな?」


苦笑いを浮かべるノエルに、ジークは自分が知る限りで2人を公認している人間達がどれだけいるか考えると少し考えただけでかなりの人間が2人の仲を知っている。


「反対してる人間だっているでしょ?」


「俺が知る限りはフィーナだけだ。後はおっさんの娘は気がついてもいないみたいだけどな。まぁ、俺自身、カインの知り合いはあまり知らないけど」


フィーナは全員が好意的ではないと信じたいようであり、味方を探そうとするが、ジークは彼女の言葉を否定する。


「しかし……外堀も完全に埋まってるんだから、どうにかしてくれないかな? と言うか、もう面倒だから、エルト王子の命令で政略結婚とか言ってもらうか?」


「そんなのダメです!!」


「……ジーク、あんた、流石にそれはないわ」


ジークは面倒になってきたようでエルトの持つ権力を使ってしまおうと言い始める。

その言葉はノエルとフィーナから言えば賛成できる事ではなく、ノエルはテーブルをバンバンと叩き、フィーナは大きく肩を落とした。


「ダメなのか?」


「ダメです」


「わかった。エルト王子に頼むのは止めよう」


2人に反対されて、気まずそうに首を指でかくジークは良い考えだと思っているようで、1度、確認するがノエルは間髪も入れずに否定する。

ジークは微妙に納得ができないようで首をひねるが、ノエルに逆らう事はできないようで自分の意見を撤回する。


「しかし、どうするかな? なんか良い方法はないか? カインとセスさん、両方の逃げ道を潰す方法」


「ニゲミチ? ダレガニゲル?」


「カインとセスさん? ……ゼイ?」


「カイン、セス、ドウカシタカ?」


ため息を吐くジークは改めて、どうしようかと言った時、ゼイが調合室に顔を覗かせる。

突然のゼイの登場に首を傾げるジークだが、ゼイは何があったか知りたいようでジークに詰め寄った。


「いろいろと面倒になってるんだよ。好きとか嫌いとかでまとまらないならまだしも、お互い好き同士なんだから、さっさとまとまってくれれば良いのに」


「カイン、セス、スキ。セス、カイン、スキ? ナニガ、メンドウ?」


ジークはゼイに話しても良いものかわからないようで頭をかきながら、愚痴をこぼすとゼイは首を傾げている。


「……ノエル、私、何か、イヤな予感がするんだけど」


「どうしたんですか?」


「ムズカシイコト、オレ、ワカラナイ。ダカラ、カイン、セス、キク」


首を傾げるゼイの姿にフィーナは何かが引っかかるようで眉間にしわを寄せた。

ノエルはフィーナが何を言っているのかわからないようで首を傾げた時、ゼイは1つの答えを導き出したようで、勢いよくドアを開けると調合室を出て行く。


「ちょ、ちょっと待て。ゼイ!? ノエル、フィーナ、ゼイを追いかけろ」


「えっ!? えっ!? ゼ、ゼイさん、待ってください」


「……こう来るか?」


予想もしなかったゼイの行動に調合の途中だったジークは追いかける事もできず、ノエルとフィーナに指示を出す。

ノエルは状況が理解できていないようだが、ジークの指示で慌ててゼイを追いかけ、フィーナは大きく肩を落とした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ