第406話
「と言う事で、部屋に集まったわけだが……余計なのがいるな」
「何よ?」
「あの、お邪魔でしょうか?」
夕飯を終えるとカインとセスは仕事が残っているようでカインの私室に移動してしまう。
ジークの部屋でレインとミレットと話し合いをするつもりだったのだが、3人の様子に気が付いたノエルとフィーナが付いてきてしまう。
ジークはフィーナの顔を見てため息を吐くとフィーナはジークを睨み返し、ノエルは2人の様子を見て、おろおろとしている。
「邪魔と言うか……2人とも腹芸は向かないからな?」
「確かにそうだとは思いますけど……カインが相手ではどっちにしろ。無理でしょう」
「あのクズに関係する事なの?」
ノエルとフィーナの様子にもう1度、ため息を吐くジークの姿にレインは苦笑いを浮かべた。
レインの口からカインの名前が出た事にフィーナは眉間にしわを寄せる。
「まぁ、関係あるだろうな。フォルムを回して行くにはどうしても必要な事だろうし」
「フォルムを回して行くですか? それはカインさんがいないなかで話しても良い事なんですか? わたし、カインさんを呼んできますね」
「ノエル、カインには内緒です」
3人で話し合いをしようと思っていた内容は今後のカインとセスの事であり、ジークは2人が上手く行く事を反対しているフィーナに話をして良いのか悩んでいるのか困ったように頭をかく。
フォルムの事と聞き、ノエルはカインを呼んできた方が良いと判断したようだが、そんな事をされては集まった意味もないため、ミレット彼女を引き止める。
「そうなんですか?」
「はい。現状でフォルムは人手が足りていないのはおわかり頂いていると思います」
「そりゃね。ジークをだましてフォルムまで連れてきてただ同然で使ってるわけだし、後はギド達もあのクズの事だから、ただ同然で使ってるんでしょ」
弾きとめられた事に意味がわからずに首を傾げるノエルだが、既に2人を追い払う事を諦めたレインはフォルムの現状を確認するように言う。
フィーナは隠し財産も多くはなかった事を知り、カインが身内で固めているののは出費を抑えつけるためだとは気がついているようで忌々しそうに舌打ちをする。
「はい。まぁ、ギドさん達はカインに恩があるから、あまり見返りを求めてはきませんね。それでも食費や住居はしっかりとしたものを用意させていただいています」
「……バレたら大変だからな」
レインはギド達が手伝ってくれる事に感謝しているものの、どこか申し訳ないと思っているようで大きく肩を落とす。
ジークはレインにはギド達が魔族だと言う事を隠しているため、視線を逸らしてつぶやいた。
「ジーク、そのギドさん達と言うのは、そう言う事ですか?」
「……はい」
「そうですか」
レインはジークのつぶやきは聞こえなかったようだが、ミレットはしっかりと聞いており、ジークの反応を見て、ギド達が魔族だと言う事を察してくれたようである。
ジークはミレットの察しの良さに頼りになるとは思いつつも、下手な事をつぶやいてしまった自分の反省なのか頭をかいた。
「あの、それでどう言う事でしょうか?」
「元々、ジーク、ノエル、フィーナの3人はカインがフォルムの手伝いをさせるために連れてきたわけですが、セスさんは条件が3人とは異なりますよね?」
「は、はい。元々、ジークさんがアリアさんの資料を解読する手伝いをしていただいていたわけですから」
ミレットはフォルムに来た経緯を確認するように言うと、ノエルは大きく頷くがミレットの質問の意味がわからないのか首を傾げている。
「俺がばあちゃんの資料を解読せずに、フォルムで別の視点からアンリ様の治療方法を探すってなるとセスさんは俺についている意味ってないよな?」
「それは、元々はエルト様の指示ですし……それって、セスさんが王都に戻ってしまうと言う事ですか?」
「ちょうど良いじゃない。セスさんだって、エルト様付きの文官扱いなんでしょ。あの小者だけだと危ないし、戻って貰っても良いじゃない」
ジークはセスに頼らない事を決めた事を改めて口に出すと、そこでノエルはセスがフォルムにいる必要がなくなった事に気づき、驚きの声をあげた。
ノエルとは対照的にセスとカインが上手く行く事を反対しているフィーナは、セスに王都に戻って貰った方が良いと主張する。
「確かにシュミット様をエルト王子と一緒にしてるのは危ない気もするんだけど……」
「ジーク、何をしてるの?」
「いや、カインより、収支の計算はセスさんの方が得意だから、今、フォルムからいなくなられると困るんだよ」
ジークはシュミットにリュミナの事で世話になった事もあり、少し考えを改めようと思ったようで彼を信じようと思ったのか、頭をよぎった彼への疑いを振り払うように首を横に振った。
その姿にフィーナは意味がわからないようで呆れたような表情をするが、ジークはセスにフォルムに残っていて欲しいと言う。
「セスさんの事ですから、その事に気がついてはいるでしょうが、口に出してしまうとカインと離れ離れになってしまいますから」
「カインもそれに気がついてはいますが、口には出さないでしょうしね」
ミレットは賢いセスが、状況判断をできていないわけがないと言うと、カインも同様だとレインは頷く。
「ただ働きさせるには居て貰わないと困るからね」
「……フィーナ、お前はもう少し、色々と考えてくれ」
「何よ?」
フィーナはカインがセスをただ働きさせている事に苛立ちを覚えているようで舌打ちをするが、ジークはフィーナの様子に大きく肩を落とした。
フィーナの発言は彼女がいつも主張する乙女とはかけ離れており、レインとミレットは苦笑いを浮かべている。
「まぁ、状況としてはセスさんがフォルムに残っていても問題ないように上手く2人の間をまとめたいと言う事です」
「反対よ!!」
「……そう言うと思ったよ」
ミレットは正式にフォルムにセスが居れるような形にしたいと言うと、セスは拳を握り締めて反対を始めた。
ジークはこうなる事がわかっていた事もあり、フィーナに聞かせたくなかったと頭をかく。




