第4話
「あの。信じていただけましたか?」
「えーと……」
「信じるから、ジークから離れなさいよ」
ジークとフィーナはドレイクであるノエルが菜食主義者だと聞かされて今までの自分達のなかにある常識に顔を引きつらせている姿にノエルは2人に信じて欲しいと上目使いでジークの顔を見上げるとジークはノエルのしぐさにときめいてしまったようで顔を赤くして視線を逸らし、フィーナはそんな彼の様子が面白くないようで不機嫌そうな表情をしてノエルを引き離すと、
「さっきも言ったけど、おじさんもおばさんもここになんて戻ってきた事はないわよ。用が済んだなら帰ってよ」
「そ、それなら、どこにいるかご存じありませんか? それに帰ってこないと言ってもお手紙くらいはきますよね?」
フィーナの頭の中からはノエルがドレイクだと言う事がすっかり抜け落ちてしまったようで恋敵を威嚇するように用が済んだなら帰れと言い、ノエルはどうしてもジークの両親と話をしたいと言って両親に会う手がかりを教えて欲しいと言うと、
「いや、生まれて今まで1度もきた事はないよ。ばあちゃんが言ってたけど生まれた俺を置きに帰ってきた後は顔も見に来た事もないし、俺は2人の顔も知らないよ」
「ジークさんが生まれてからって、そんな、酷いです……親子なのにどうしてですか?」
ジークは両親にあった事はなく居場所にも心当たりはないと苦笑いを浮かべて言うがその様子はどこか寂しげであり、寂しげに笑う彼の表情と彼の口から出た言葉でノエルはおかしな感情移入をしてしまったのかボロボロと大粒の涙を流し泣き始め、
「ちょっと、何でノエルが泣くのさ!?」
「だ、だって、ジークさんが、ジークさんが」
「名前を連呼して泣かないでよ!? 俺が何かしたみたいじゃないか!?」
「……これはお客さんが来たら大変な事になるわね。ノエル、入口に立ってないで店に入って」
ジークはノエルの反応にどうしたら良いかわからずに慌てるとフィーナはため息を吐いてノエルを店のなかに招き入れるとドアのプレートを『準備中』に替える。
「……えーと、一先ず、これでも飲んで落ち着いてくれるかな」
「ず、ずびまぜん」
「……涙脆いドレイク? なんか頭痛いわ。ジーク、遊んでないで、タオルとかハンカチとか持って来られないの? 泣いている女の子の顔をいつまでも見ているなんてデリカシーにかけるわよ。ハンカチなんて気の利いたものをジークが持っているわけないからタオルとかノエルの顔を拭くものを持ってきなさいよ」
「そ、そうだな。ちょっと、行ってくる」
ジークはノエルの泣き顔にどうして良いかわからずにキッチンに向かうと温めたお茶を差し出し、彼女はお茶を受け取るがその顔は涙と鼻水で、すでにぐちゃぐちゃになっており、フィーナは頭を押さえながらもジークを1度、店から追い出し、
「ノエルが泣く事でもないでしょ。ジーク自身が気にしてないんだから」
「で、ですけど、そんなの悲しいです。さびしいです」
「……そう言う風に泣いてくれるのは嬉しいんだけどさ。実際はフィーナの言う通り気にしてないから泣きやんでくれないかな? こうやって泣かれている方が気不味いんだけど」
フィーナはノエルに泣きやむように言うが彼女は酷く涙脆いようでいくら手で涙をいくら拭っても止まる事はなくフィーナが諦めかけた時、ジークは奥からタオルをもって戻ってくると困ったような笑みを浮かべてノエルの頬をタオルで拭った後に彼女の頭を撫で、
「でも、辛くないんですか?」
「どうかな? さっきも話した通り、両親の顔は1度も見た事ないしね。知らないんだ。辛いと思った事はないよ。ばあちゃんから話は聞いているからどんな人なりをしているかは知っているけど、それに1人で生きて行くのに悲しんでいる暇はないよ。代金を踏み倒す迷惑な幼なじみもいるし」
「ちょっと、どうして、そこで話を折るのよ!?」
ノエルは涙目でジークの顔を見上げるとジークは彼女の顔を直視できないようで視線を逸らしながらも冗談交じりで辛くないと言うと引き合いにされたフィーナが面白いわけもなく頬を膨らませ、ノエルはジークの気づかいに小さく頬を染めるが、
「お1人なんですか? あ、あの、おばあ様は?」
「あぁ。ばあちゃんは……」
「ちょっと、ジーク!? それを言ったら、ダメよ!?」
「1年前に死んだよ……」
「そ、そんな……」
もう1つでてきた疑問に首をかしげ、ジークは祖母が死んだと言う事実を伝えると再び、ノエルは大量の涙を流し始め、
「……バカジーク」
「し、仕方ないだろ!? こうなるなんて思わないだろ!? それより、フィーナ、どうにかしろよ。俺はこんな時にどうしたらいいかわからないぞ!?」
「……ジーク、あんたは少しの間、出て行って」
「お、おう。任せた」
フィーナには祖母が死んだ事を言うとノエルが泣きだす事は予想出来たようで止めようとしたのだがジークは考えも無しに言ってしまった事に頭を押さえるとジークはどうして良いかわからずに慌てはじめ、フィーナは役立たずのジークにここは任せるように言うとジークはノエルをフィーナに任せて逃げるように店の外にある薬草を育てている小さな畑に向かう。