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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
399/953

第399話

「……セスさん、もう寝たら」


「ジークこそ、観念したらどうですか?」


ジークは最初の見回りを受け持っていたのだが、アリアの資料をテッドに預けてしまった事に納得のできないセスはジークを睨みつけており、彼女の様子にジークは大きく肩を落とす。


「コーラッドさん、何をしてるの?」


「カイン、セスさんをどうにかしてくれ」


「まだ、納得できてなかったんだ?」


その時、カインが顔を覗かせ、セスを見て首を傾げる。

ジークは助かったと言いたげにカインにセスを押し付けようとするとカインは全てを理解できたようで苦笑いを浮かべた。


「当然です。わざわざ、アンリ様を助ける方法を手放す理由がわかりません」


「あー」


「ジークの想像した通りだよ」


セスはカインにもジークと同様に鋭い視線を向けるとジークはカインへと視線を移した。

その視線にカインはジークもアリアの資料に疑問を持っていたと気が付いたようで少しだけ困ったように笑う。


「……2人して、何を隠しているのですか?」


「カイン、任せた」


「はいはい。ジーク、長くなりそうだから、お茶を用意して」


ジークとカインが視線で何かを確認した事に気が付いたセスは不機嫌そうに言う。

ジークはカインに押し付ける事を決めたようで逃げ出そうとするものの、カインは彼の首根っこをつかむとお茶を淹れてくるように指示を出した。


「……睡眠薬でもあるのか?」


「どうして、そんな変な方向に向かうかな? 普通に話をするんだよ。コーラッドさんの場合は説明しないとずっとこのままだって理解したんだろ。わかったら、さっさと準備する」


「あぁ」


カインの指示に何か裏があると思ったジークは声を押さえてカインに聞くが、ジークの少し外れた考えに大きく肩を落とす。

ジークはカインの言葉で納得したのか1度、セスへと視線を向けるとキッチンに向かって歩き出した。


「カイン=クローク、いったい、何を企んでいるんですか?」


「誤解だから、ジークがお茶を淹れてくるから座って待とう」


自分の事を睨みつけるセスの様子にカインは小さくため息を吐くと彼女のソファーに座るように促す。

セスはカインを疑っているようで彼とは少し離れた位置でソファーに腰をおろした。


「状況を説明しようとしている人間を疑わないでくれるかな?」


「日頃の行いのせいですわ」


カインは態度を軟化させて欲しいようで苦笑いを浮かべるが、そこは2人の間で生まれていたある種の信頼感であり、セスは信用などできないと視線を鋭くしたままである。


「これは困ったね」


「……困っているようには全く見えませんわ」


「困ってはいるよ。まさか、このタイミングでくるとは思ってなかったから」


「な、何ですか!?」


困ったと笑うカインだが、セスはカインが困っているなど思っていないようで1度、肩を落とす。

カインは心外だと言いたげに頭をかいた時、カインの寝室の方から、ガラスが割れたような派手な音が響く。


「カイン、来たみたいだな」


「もう少し、静かにできないかな」


キッチンにいたジークも何が起きたか直ぐに理解できたようでカインとセスに合流するが、カインは余裕があるのか面倒だと言わんばかりにため息を吐いている。


「……カイン=クローク、あなたはもう少し緊張感と言う物を持った方が良いですわ」


「そうだぞ。ノエル達だって危ないだろ」


セスはため息を吐くが、頭では襲撃者が来るとは覚悟していたものの、いざ、本当に起きてしまえば不安のようでその声はわずかに震えている。

ジークはすぐそばにノエルが眠っている部屋もあるため、彼女に被害が及んではいけないと考えており、腰のホルダから魔導銃を引き抜く。


「まぁ、大丈夫だと思うけどね。寝る時はカギをかけるように言ってあるし、俺もここにくる時にしっかりと魔法まで使ってカギをかけてきたから」


「……カイン、それって、今日、襲撃があるって予想していたって事か?」


「偶然だよ。レインの事だから、今の音で起きてるだろうし、俺達は庭から回り込むかい?」


カインは部屋から出なければ安全だと笑うがその言葉の伏しにはどこか襲撃を予期していたようにも聞こえる。

ジークは何か納得のできない物が出てきたようで眉間にしわを寄せるが、カインは気にする事はない。


「そうだな。逃げられると面倒だしな。挟み撃ちにするか。セスさんはどうします? 戦力的に言えば、魔法でレインを補佐して貰いたいんですけど」


「かまいませんが……相手が何人いるのかわからないのに2人で庭に出て大丈夫なんですか?」


ジークは庭先に回ると考えた時に戦闘の準備をしていないセスがいては邪魔になると思ったようで彼女のプライドを刺激しないように言う。

セスは落ち着いている様子の2人の姿に負けてたまるかと思ったのか大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせると反対にジークとカインの戦力は大丈夫かと聞く。


「大丈夫。ジークの魔導銃も俺も遠距離攻撃だし、コーラッドさんはジークの言う通り、レイン達を頼むよ」


「確かにこの状態だと、近付くのはバカがやる事だよな」


カインは接近戦で戦う気はないと笑い、ジークも同感なようで頷くと魔導銃を構えて、外の気配を探り始める。


「わかりましたわ。襲撃者が魔法を解除した場合かドアを蹴破った時はレインの方が危険と言う事ですわね」


「それはちょっと語弊があるかも知れないけどね」


セスはレインの方をサポートしに行く事を了承するもその言葉にはどこか刺があり、カインは苦笑いを浮かべた。

しかし、セス自身、カインの性格や魔法の実力を誰よりも認めており、庭に行くよりもレインの補佐に回った方が安全だと理解した上で言われている事が面白くないようにも見える。


「コーラッドさん、ノエルとフィーナは2人は自分達の身を守れると思うけどミレットの方は」


「それくらい、わかっていますわ」


カインは戦闘技能のないミレットの警護もお願いしようとするが、セスはぴしゃりと彼の言葉を遮るとカインの寝室へと向かって歩き出す。

その様子からはカインがミレットの事を心配している事に対する嫉妬も見てとれる。


「……どうして、怒らせるかな?」


「そんなつもりもなかったんだけどね……行くよ。睡眠時間は惜しいからね」


ジークはセスの背中を見てから、カインへと視線を移し、ため息を吐く。

ジークの視線にカインは少しだけ気まずくなったのか、頭をかくも余計な事をしている時間はないと思ったようでジークに声をかける。


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