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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第392話

「……俺達、何で、呼ばれたんだ?」


「さぁ? でも、カインさんが言っていた事も気になりますし」


リュミナの処遇は決まったのだが、ジークとノエルはラングに呼び出しを受けたはずなのに声がかからないため、居心地が悪そうにしている。

そんな2人の様子に構う事無くエルトは指示を続けており、ノエルはリュミナとエルトの関係がどうなるのか気になるようでそわそわとした様子でエルトへと視線を向けた。


「ノエル、何か気になる事があるのかな?」


「あ、あう……えーと」


彼女の視線にエルトは気が付いたようで小さく表情を緩ませると、ノエルは少し気まずくなったようでエルトから目を逸らす。


「カイン、ノエル達にまたおかしな事を吹き込んだのかい?」


「私は話し合いが気になるようなので、少しだけ、私の推測の話をしただけです」


「まったく」


ノエルの様子からエルトは彼女が何を考えているか理解できたようで、原因であろうカインを責めるような視線を向けた。

しかし、カインはその視線に悪びれる事無く答え、エルトは大きく肩を落とすと言い出しにくいのはポリポリと首筋をかく。


「ふむ。エルト、お主が言い難いのなら、ワシが言っても構わないのだぞ」


「いえ、これも私の役目ですので……リュミナ」


「はい」


ラングは情けないと言いたいのか大きく肩を落とすと、エルトはバツが悪いのか苦笑いを浮かべた後に1つ、深呼吸をして真剣な表情になり、リュミナの顔を見て名前を呼ぶ。

リュミナは次にエルトの口から出る言葉に予想が付いているためか、直ぐに返事をすると真っ直ぐにエルトの瞳を見返した。


「メルトハイム家を再興するに辺り、権力を得ようとリュミナに近づいてくる者や、ザガード王家の血を引くため、命を狙ってくる者も、ザガード王家がハイムを手に入れようと君に王位を継がせようとする者と色々な思惑を持った者が近づいてくると思う」


「はい。わかっています。それだけ、私の立場が微妙であり、使い方を間違えればハイム王家を滅ぼしてしまう可能性があるという事も」


リュミナはエルトの言いたい事も、全て理解していると頷く。

彼女の聡明な様子にラングは満足そうに頷くと次のエルトの言葉を待つ。


「その可能性を少しでも小さくするために、グランハイム家とメルトハイム家に新たな縁を作りたいと思う。民達にはメルトハイム家再興とともにリュミナが私の婚約者である事を発表したい」


「はい。お受けします。ふつつか者ですが、エルト様、末永くよろしくお願いします」


「あ、あぁ、私もリュミナに釣り合うように努力をしよう」


エルトは王家の力を強くするためにリュミナを婚約者としたいと告げ、リュミナは複雑な思いはあるようだが直ぐに笑顔で頷いた。

彼女が笑顔を見せた事にエルトは驚いてしまったようで、声を裏返して頷く。


「……リュミナ様より、エルト王子の方が情けなく見えるな」


「まぁ、女性の方が度胸があるって言うしね」


エルトの様子にジークは小さく肩を落とすとカインは苦笑いを浮かべて答える。


「情けなくはあるが、自分で言ったのだ。良しとするか」


「叔父上」


「さて、エルトとリュミナの件は決着がついたのでな。ジーク」


「は、はい」


ラングはリュミナが婚約の事も了承した事に満足そうな表情をするものの、エルトの様子には不満があるようで首を横に振った。

エルトはバツが悪そうに視線を逸らすとラングはジークの顔へと視線を移す。


「エルトはリュミナを自分の別宅に住まわせると言ったのだが、ワシから1つの贈り物をしようと思ってな」


「はい……」


ラングはエルトとリュミナに贈り物をしたいと言うが、ジークはラングの贈り物が自分に何が関係あるのかわからないようで首を傾げる。


「メルトハイム家の領地はエルトが言った通り、残っているのだが、ワシがその領地を管理していたのだ。しかし、屋敷は長らく、誰も住んでいなかったのでな。荒れている」


「それはわかります。ラング様の事ですから、掃除とかはまめにさせているでしょうけど」


「うむ。それで汚れを落とすのに洗剤などをお主に任せたい。どのような汚れがあるか、それを落とすのに必要なものを屋敷を見て選んでくれないか?」


「俺は構いませんが……」


ラングはメルトハイム家の屋敷の掃除に使う洗剤の受注を頼む。

しかし、ジークは自分のような者に頼まなくてもラングの人脈ならば適切なものを選んでくれる同業者がいるのではないかと思っており、何か裏があるのではないかと首をひねっている。


「別に他意はない。シュミットがルッケルの件では世話をかけたという事と、相も変わらず、エルトがお主達に世話をかけているのでな。その分の埋め合わせだと思って貰いたい。エルトはこのようなもので返したと言うと怒るかも知れんがな。それにお主はアリア殿の教えを受けているのだ。謝礼金などは断るであろう?」


「まぁ、お金が欲しくてエルト王子に振り回されているわけじゃありませんし」


ラングは日頃、迷惑をかけているジークへの謝礼代わりだと言うが、ジーク自身、謝礼金などは貰う気もないため、小さく肩を落とすと意見を求めたいのかノエルへと視線を移す。


「ジークさん、そんなの謝礼代わりなんてダメです。それに、エルト様とリュミナ様のお家になるのなら、わたしは協力したいです」


「ジーク、ノエルさんに意見を求めるとただ働きになるよ」


ノエルはまだどこか家のために結ばれるという事に納得がいかないものの、どうにか2人のためになりたいと思ったようで無償でラングの頼み事を引き受ける事を主張し始め、ライオはその姿に苦笑いを浮かべる。


「まぁ、そうなんだけど……ノエルの言いたい事もわかるんだよな。それにさっきも言った通り、お金とかが欲しいわけじゃないから」


「そうですよね」


「まったく、この2人は」


しかし、お人好しはノエルだけではなく、ジークは苦笑いを浮かべており、賛成意見が貰えた事に笑顔で頷き、似た者同士の2人の様子にカインは大きく肩を落とした。


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