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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
389/953

第389話

「……緊張しました」


「リュミナ様、お茶、淹れますね」


「ありがとうございます」


リュミナが国王に謁見を終えると、他国であるハイムの王城のなかは居心地が悪かったようでジークとノエルのために用意された部屋にリアーナ達騎士とともに顔を出し、ノエルはリュミナの様子にお茶の準備を始めた。


「話ってどうなったんですか?」


「流石に事が事ですから、私達は控えているようにと、それでエルト様とカインがこの部屋に行っていて良いと言うので」


カインの企みでエルトの元でメルトハイム家を再建させると国王に進言したものの、隣国ザガードの王女と言う微妙な立場であるリュミナは知らない人ばかりではどこか不安だったようで素直に2人の言葉に甘えたようである。


「確かに、そうですね」


「……と言うか、変な判断が出たら、俺にリュミナ様達を連れて逃げろって言ってる気しかしないんだけど」


ノエルはリュミナの不安な気持ちもわかるようで大きく頷き、賛同を示すが、ジークはエルトとカインの進言が失敗して国王とラングがリュミナを始末すると考えた場合の保険をかけられて気がしたようでポリポリと首筋を指でかき、つぶやいた。


「ジーク、不吉な事を言わないでください」


「そうです。ジークさんのイヤな予感は当たるんですから」


ジークのつぶやきはノエルとリアーナに聞こえたようであり、リアーナはジークを睨みつけ、ノエルは頬を膨らませて不謹慎だと言う。


「悪かったよ。まぁ、カインもいるし、口でどうにかしそうだけどな」


「……いえ、流石にカインが頭脳明晰で機転が効いたとしても、国王相手ではそうもいかないでしょう」


ノエルとリアーナに同調するように騎士達はジークに鋭い視線をむけると、ジークは自分でもおかしな事を言ったと自覚があるようで素直に謝った。

しかし、ジークが言った刺客が送られる可能性は高いとリュミナは思っており、最悪の時の場合を考えているリュミナは首を横に振る。


「ジーク、もしもの時はリアーナ達をお願いできますか? この者達まで処罰される必要はないですから、ジオスやフォルムでなら、この者達は平和に生きていけると思いますから」


「リュミナ様、何を言っているのですか!!」


メルトハイム家の再建が失敗した場合、自分が殺されると言う事を覚悟しているのかリュミナはジークとノエルにリアーナ達の事を託そうとするが、リアーナ達騎士はその時は命をかけてリュミナを守り、最後まで戦い抜く気であり、声を上げている。


「あー、安心しろ。その時はリュミナ様に縄を付けてでも連れて行くから」


「そうですね」


己の騎士としてのプライドを賭けて主君を守ろうと盛り上がっている騎士達の様子にジークは若干、引き気味だがその場合はリュミナを連れて逃げる事を約束し、ノエルはジークに賛成だと大きく頷く。


「何を言っているんですか? ジークやノエルに迷惑をかけるわけにはいきません」


「別に迷惑とは思わないさ。それに知ってる人間が暗殺とかで死なれると目覚めが悪いだろ。それも相手も知り合いだって言うなら、直の事だろ。何より、ウチの村は過疎ってるからな。若い人間が増えるなら問題ない。それくらいの誤魔かしはカインが何とかするだろ」


リュミナはジークの言葉に彼が自分達のために危ない橋を渡る必要はないと声を上げる。

しかし、ジークは王族の見栄など知った事ではないと思っているようであり、リュミナが王城を訪れた事を誤魔化せば良いと思っているようであり、ジオスに移り住んでしまえば良いと言う。


「そんな簡単に」


「それに生きているだけで良いって言ってたんだ。その気があればどこでだって生きていけるだろ」


リュミナはそんなに簡単な事ではないと思っており、大きく肩を落とすがジークはリュミナに覚悟があるなら死ぬ気で生きろと笑った。


「しかし……」


「そうそう。ジーク、珍しく良い事を言ったね」


「何ですか!?」


リュミナはそう言うわけにもいかないと首を振ろうとした時、部屋の中にはカインの事が響く。

その声にリアーナ達騎士はリュミナの命を狙った刺客が来たと思ったようでリュミナを守るように移動し、声がした方へと向くがそこには誰もいない。


「……カイン、お前は何をしてるんだ?」


「いや、話し合いにも飽きたから、少しこっちの様子を見ようと思ってね」


「カ、カインなんですか?」


ジークはカインの声が彼の使い魔から発せられていると気が付いたようで大きく肩を落とすと、彼の頭の上に小鳥サイズの使い魔がちょこんと舞い降りる。

リュミナは小鳥からカインの声が聞こえる事に驚きが隠せないようで、まじまじとジークの頭の上にいる小鳥を覗き込む。


「カイン、飽きたからって、お前はこっちを見ていていいのか? と言うか、頭の上から降りろ」


「はいはい。わかったよ」


カイン本人はリュミナの件で立案者でもあるため、その場に同行しており、こちらの部屋まで顔を出す余裕などないはずであり、何がやりたいのかわからないようで大きく肩を落とした。

カインはため息を吐くとジークの頭の上から、彼の使い魔はテーブルの上に移動する。


「カインさん、お話はどうなっているんですか? リュミナ様に刺客が向けられるような事はありませんよね?」


「その時はジークにリュミナ様を連れてジオスに飛んで貰うから問題ないよ」


「冗談を言わないでください」


「ま、待った!? つ、潰れるから」


話し合いがどうなっているのか気になるようでカインの使い魔を覗き込むノエルだが、カインは軽い口調で答え、その軽い感じに笑い事ではないと思ったノエルはカインの使い魔をつかむ。

ノエル自身も冷静になれていない部分があるようでその手には力が込められており、カインは驚きの声を上げた。


「ノエル、ストップ。カイン、お前の見た感じ、問題なく進んでいるのか?」


「す、すいません」


「いや、良いよ。1度、使い魔が形を失うと流石にこの部屋まで飛ばす余裕はなさそうだから」


「……最初から、使い魔を潜めてたのかよ」


ジークはため息を吐き、ノエルの手からカインの使い魔を救出するが、カインは国王やラングに謁見する前に使い魔を呼び出していた事に眉間にしわを寄せる。


「そ、それでリュミナ様の件はどうなっているんですか!!」


「きっと、大丈夫だよ……もっと、面白い事になりそうだけど」


「……何が起きてるんだ?」


リアーナは国王達がリュミナの身柄についてどのような話をしているか気になるようでカインの使い魔に詰め寄るとカインは問題ないと言った後、小さな声で楽しそうにつぶやく。

その声がジークには聞こえたのか、さらにおかしな事になっていると思ったようで眉間のしわはさらに深くなって行く。


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