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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
373/953

第373話

「ジーク、交代だよ」


「あぁ」


見張りの順番はカイン、ジーク、レインの順であり、交代時間になったようでカインが眠っているジークの身体を揺する。

ジークは目を覚ますが直ぐには頭が動き出さないようで、しばらく、ぼーっとしている。


「眠そうだね」


「わかってたとは言え、変な時間に起こされたからな」


カインはジークの様子に苦笑いを浮かべると、ジークはゆっくりとだが頭が動き出したようで欠伸をしながら頷く。


「何か変わった事ってあったか?」


「いや、俺の使い魔、鳥だから、鳥目だし、暗闇だと視力がね」


「……そう言う冗談はどうでも良い」


見張りの引き継ぎもあり、ジークはカインに侵入者が何かしていたかと聞く。

カインは使い魔で屋敷周辺を見回りしていたようで、使い魔の特性で見張りでは何もわからなかったと言うが、ゴブリンの集落を訪れた時に夜中に使い魔でギドと接触していた事実があるため、ジークは眉間にしわを寄せた。


「一応は敷地内には侵入者はなかったよ。こっちを窺っている感じはあるけどね」


「そのまま、使い魔を付けて見張ってろよ。俺が見張りをしてるより、ずっと、安全だろ」


「日中なら、それでも良いんだけど、流石に休まないと魔力が足りない。いざって時に魔法が使えないのも不味いしね」


ジークは便利な使い魔でカインが見張りを続けていれば良いと言うが、カインにも長時間の使い魔は使用できないようでお手上げだと言いたいのかわざとらしく両手を上げて言う。


「いざって時ね。そんな事にならなければ良いけどな。まぁ、カインの見立てでは今日は侵入者はあっちに行ってるわけだろ?」


「そうだね。だけど、同時に仕掛けてくる事もあるからね。魔法を使う人間が居れば、カギがなければあのドアが開かない事はわかるし、先代領主の関係者が居れば、最初からこっちに仕掛けてくる事だってあるからね。と言う事で、見張り番、よろしく」


ジークはカインの見立てが外れる事はないと思っているようでどこか気が抜けている感じにも見える。

カインはその気の緩みで問題が起きても困るため、気を引き締めるように言うと欠伸をしながら自分の寝室に戻って行く。


「……と言うか、あいつにそう言う事を言われると、何か起きそうでイヤだな」


ジークはカインの去り際の一言にイヤな予感がしたようでため息を1つ吐くと頭をかきながら、顔を洗って目を覚まそうと思ったようでキッチンに移動する。


「やっぱり、眠いな……と言うか、なんだかんだ。言いながら、結構、俺だって忙しかったんだよな」


顔を洗い、それでも眠かったようで眠気覚ましに何か飲もうと思ったようでお湯を沸かし始めるジーク。

見張りは仕方ない事ではあるが、何か納得ができないようで小さく肩を落とすとテッドの診療所の手伝いから始まって、連絡係、部屋の片づけ、罠設置と忙しかった事を思い出し、頭をかいた。


「ジークが見張りの時間ですか?」


「ミレット様? どうかしましたか?」


その時、ミレットがキッチンを覗き込む。

ジークは彼女の声に振り返るとミレットが起きてきた事に何かあったと思ったようで首を傾げる。


「目が覚めてしまったので、ついでにお水を頂こうかと」


「そうですか? それなら、こっちの方が良いですかね? もうすぐ、お湯が湧くんで待っていてください」


「そうですね。いただきます」


ミレットの様子から寝付けなかった事がジークにはわかったようで棚からお茶を取り出す。

そのお茶はリラックス効果があり、睡眠を誘導するものである。ミレットはお茶っぱを見て、ジークの心づかいを嬉しく思ったようで小さく表情を和らげるとキッチンにあるイスに腰掛ける。


「お待たせしました」


「ありがとうございます……美味しいですね」


ジークは自分には眠気覚ましのお茶を淹れたようであり、間違えないようにミレットにお茶を渡す。

ミレットはお礼を言った後に、一口、お茶を飲むとお茶の温度はジークが調節したようでちょうど良い暖かさである。


「ありがとうございます」


「ジークは何でも器用にこなしますね」


「まぁ、子供の頃から、ばあちゃんと2人暮らしでしたからね。これくらいは」


ミレットはフォルムに来てわずかな時間ではあるが、ジークが何でも器用にこなす姿に感心したようである。

その言葉にジークは苦笑いを浮かべて、仕方ない事であったと言う。


「必要だったからですか? ……本当にご両親とは一緒に住んでいないんですね」


「ええ、まぁ」


「あまり、表情に出さない方が良いですよ。それはあなたの評価を下げる事になりますから」


ミレットはジークの両親の事をレギアスから聞いているようであり、確認をするように聞くと、ジークはまた両親の事を聞かれると思ったようで小さく表情を緩ませた。

ミレットはジークの子供っぽいところに少しだけ安心したようで彼をなだめるように言う。


「わかってるんですけどね。でも、どこかで納得ができないんです」


「そうでしょうね……」


ジークはミレットの様子から彼女が両親の話に触れようとしていない事はなんとなく理解できたようであり、小さく肩を落とす。

ミレットはジークに共感するようなものがあるのか小さく頷くと少しだけ物悲しげな表情をする。


「怒らないでくださいね。ジークは家族に会いたいと思いますか?」


「家族ね……別に家族なんて血の繋がりじゃないだろ」


ミレットの家族と言われ、ジークは両親になど会いたいとは思わないようである。

それ以上にジークに取って家族と言える人間は他にいると笑う。


「そうですね。それでもきっと、血の繋がりと言うのは重要なんですよ」


「そんなもんですかね?」


「はい。きっと、そうでしょう」


ミレットにも家族について考えるべき何かがあるようで寂しげに笑う。

ジークは彼女の表情の変化に何か気が付いたようだが、深入りして良いものかわからないため、追及する事はない。


「それでは夜も遅いですし、ジークの邪魔をしても行けませんから、私は部屋に戻りますね」


「はい。おやすみなさい。ミレット様……どうかしましたか?」


「ジーク、その呼び方を止めて貰って良いですか? 私はレギアス様の後継と言われていますが平民ですし、それにフォルムではレギアス様との繋がりもありません。1人のミレット=ザンツとしてお願いします」


ミレットはお茶を飲み干すと部屋に戻ろうと立ち上がる。

ジークは彼女を見送ろうとするが、ミレットは思い出したかのようにジークに呼び捨ててくれて構わないと言う。


「良いんですか?」


「はい。それがイヤなら、お姉ちゃんでも良いですが」


「おやすみなさい。ミレットさん」


ジークは戸惑ったように聞き返すとミレットはくすりと笑い、『お姉ちゃん』と呼んで欲しいと言う。

その言葉にジークは眉間にしわを寄せて、彼女を送り出す。


「ちょっと、残念ですね」


「……そのおかしな発想はどこからくるんですか?」


ミレットはジークがお姉ちゃんと呼んでくれなかった事に残念そうに肩を落とすとジークは呆れているのか大きく肩を落とした。


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