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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第363話

「いろいろと悪行でもあるんじゃないのか?」


「悪行? ……ぜんぜん、心当たりがないね」


「カイン=クロークの悪行……数え切れないほどありますわ」


ジークにはレギアスがカインのどこに興味を示したか考えるも、普段のカインを見ているとあまり良い印象がないため、眉間にしわを寄せた。

カインはまったく身に覚えがないと言いたげに首を横に振るが、カインの隣に座っているセスにはカインの悪行に心当たりがあるのか、頬は引きつっている。


「カ、カインさん、いったい、王都で何をしていたんですか?」


「まったく、身に覚えがない」


セスの様子にノエルは顔を引きつらせるが、カインは悪びれる事無く、きっぱりと言い切った。


「……セスさん、こいつは何をしているんですか?」


「私が知っているもので、有名なのは騎士団1部隊を1人で半壊させた事、魔術学園の入学時に平民出身者を使用人のように扱おうとした貴族の子息10数名をすべて捕まえて、王都の街路樹のそばに顔だけ出して埋めたと言う事、後は研究室での爆発騒ぎが数え切れないほど」


「よく悪行がないって言えるな」


セスは頬を引きつらせたまま、カインが行った規模の多い悪行を説明すると、ジークの眉間のしわはいっそう深くなり、カインへと非難混じりの視線を向ける。


「いや、爆発は研究の段階で起きる事だし、それに前の2件に関して言えば先に仕掛けてきた奴らが悪い」


「……良く魔術学園をクビにならなかったな」


「その前にカインさん、よくエルト様のお付きまで出世できましたね」


カインはそんなものは悪行のうちには入らないと言い切るが、ジークとノエルはカインがここまで無事に生きている事に他にも多くの事を裏でしているとしか思えないようで顔を引きつらせている。


「まぁ、爆発に関して言えば、フィリムの良く起こしているようだからな。さほど気にならないであろう」


「ですよね」


レギアスは4人の様子に苦笑いを浮かべると、少しだけカインをフォローし、カインは楽しそうに笑う。


「良くないだろう」


「いや、それだけの事をやって起きながらもこの場所にいると言うのは天運があると言う事であろう」


「天運?」


レギアスはカインのある種の才能だと笑うが、ジークは納得がいかなさそうにため息を吐いた。


「天運ですか? まぁ、ある意味、運が良いと言うのは自覚がありますね」


「あー」


「そうですね」


カインはジーク、ノエル、フィーナ、エルトと言った同じ想いを持った人々が自分の周りに多くいると言う事に感謝しているのか表情を和らげる。

カインが何を考えているのか察しが付いたジークは照れくさそうに頭をかき、ノエルは表情を緩ませた。


「それなら、俺の運がどこまで続いているか、ここで勝負してみましょうか?」


「聞こう。カイン=クローク、お主はジークやノエルを使いエルト様とともに何を企んでいるのだ?」


カインは自分の運にかけて見ようと思ったのか、芝居がかった口調だが真っ直ぐにレギアスのへと視線を向ける。

レギアスは元々、腹を割る気だったのかその視線に真っ直ぐに向き合う。


「……こんな感じでレギアス様に話して良いのか?」


「い、良いわけありませんわ!? カイン=クローク、落ち着きなさい。冷静になりなさい」


「私達は人族や魔族など種族の違いで争い合う事のない世界を作りたいと思っています」


カインとレギアスの間の空気は真剣そのものであるが運任せと言う事もあり、ジークは眉間にしわを寄せ、セスはカインに考え直すように彼を怒鳴りつけるが、カインが止まる事はない。


「カイン=クローク!? レ、レギアス様、こ、これは違うんです」


「そうか。お主達は人族の命も魔族の命も変わらないと言うわけだな」


セスは顔面を蒼白にして、既に遅いがカインの口を手で塞ぎ誤魔化そうとするが、レギアスはカインの言葉に眉間に深いしわを寄せるとジークとノエルに視線を向けた後に考えをまとめようと思ったのか目をつぶった。


「えーと」


「私はレギアス様の指示に従います」


「従いますって」


ジークは大事を軽い感じで聞かされたミレットはどうするのかと思ったようで彼女へと視線を向けるがミレットの反応はあまりにあっさりとしている。

ジークは彼女の反応に逆に何と返して良いのかわからないようで、頭をかく。


「何か言いたそうですね」


「いや、正直、かなり大きな問題じゃないかと思って、レギアス様の言葉じゃなくて、ミレット様はどう思っているのかと思って」


ミレットはジークの様子に何か言いたい事があるようであり、ジークは改めて、ミレットに考えを聞く。


「命を預かる者が傷ついた者を見つけた時に助けないと言う選択肢を私は知りません。私は自分でこの道を選んだ時にそう決めました。あなたは違うと言うのですか?」


「い、いえ、そんな事はありません。その通りです。俺もそう思います」


「それで良いでしょう。ただ、レギアス様の跡を継ぐとなれば私個人の考えは捨てなければなりません」


ミレットはレギアスの後継とではなく、自分の考えを話すとそれはジークが目指すものと同一であり、大きく頷く。

しかし、ミレットは今は個人の問題では済まされないため、レギアスの答えを待つと言う。


「……それを成せると思っているのか?」


「成せるではなく、成すですね」


レギアスはゆっくりと目を開けるとカインにどれだけ大変な事かわかっているのかと問うが、カインは迷う事無く言い切り、そんなカインの様子にレギアスは大きく肩を落とした。


「ジーク、ノエル、聞くまでもないと思うが、カイン=クロークと同じ考えなのだな?」


「まぁ、言いたい事はさっき、ミレットさんが言ってくれましたしね」


「失うものがあってもか?」


「少なくとも、目指したいものから目を逸らしてしまえば、俺はばあちゃんから教わった薬屋としての誇りと大切な人、他にもいくつかちょっとしたものを失いますから、それはできませんね」


レギアスはカインに乗せられていると思っているのか、ジークにも問うがジークは既に腹をくくっているため、迷いなど存在しない。


「大切な人? ……それはノエルが魔族だと言う事と捉えて良いと言う事か?」


「あ、あの、黙っていて申し訳ありませんでした。生まれて16年間、ドレイクをさせていただいています」


「ドレイクだと」


「だ、大丈夫です。わたし、菜食主義者ベジタリアンですから!!」


レギアスはジークの言葉から、ノエルが人族ではない事に気が付いたようであり、ノエルはレギアスの様子に慌てて頭を下げると自分は菜食主義者だと言う事を強調する。


「そこは今、言う事なのか?」


「まぁ、ノエルにとっては重要な事なんだろうね」


ノエルが自分は安全ですと主張する様子にどこか本題とずれて来ている気がしたのかジークはため息を吐き、カインはジークとノエルを交互に見て苦笑いを浮かべた。


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