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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
360/953

第360話

「危ないだろうね。先代の領主で裏で仲良くやってた人達を2人ほどしばき倒して手に入れた物だから、諦めきれずに襲撃してくる可能性は高いね」


「……そんなもの、さらっとテッド先生の診療所に置いて行こうとするな」


先代領主が処罰された事で彼の隠し財産は宙に浮いており、その存在を知っていた者達がカインの周辺を調査していたようだが、使い魔を同時に使いこなすカインにとっては捕まえる事などたやすかったよう、その時の事を思い出したのか楽しそうに笑っている。

カインは楽しそうに笑っているが、襲撃の危険がある物をテッドに預けるわけにもいかないため、ジークは大きく肩を落とした。


「流石に冗談だから、でも、在処も見つけちゃったし、ジークとノエルも気を付けてね。おかしな人達に声をかけられても付いて行かない事」


「は、はい。わかりました」


「……俺達は子供か」


カインは隠し財産を狙っている者達がジークやノエルを人質に取り、自分を脅してくる可能性もあるため、気を付けるように言う。

ノエルはその言葉に大きく返事をするが、ジークはそこまでバカにされる意味がわからないと大きく肩を落とす。


「カイン=クローク、あなたはもう少し言い方がないんですか?」


「いや、ノエルは困っている人がいたら付いて行きそうだから」


「……確かに、否定ができないな」


セスはジーク達のやり取りに呆れたのか、大きく肩を落とすがお人好しのノエルの行動を考えるとしっかりと釘を刺す事は重要であり、ジークとカインはノエルを見て眉間にしわを寄せた。


「そ、そんな事ないです!?」


「いまさら、否定のしようがないから、それより、カイン、ノエルより、ゼイの方が危なくないか? なんか、簡単に付いて行きそうだぞ」


ノエルは2人の意見を否定するが、彼女と一緒に住んでいるジークから言えば説得力も何もない。

ジークは彼女の様子に苦笑いを浮かべた後、好奇心旺盛な所のあるゼイが心配になったようで頭をかく。


「確かにそれは否定できないんだけど、あっちにはフィーナもいるし、危険だとは思うけど……レインに任せよう。レインならきっと上手く行く」


「いま、完全にレインに丸投げしただろ」


カインはジークに言われ、まだ人族の汚さを理解していないゼイやザガロだけではなく、フィーナと言った感情だけで暴走するメンバーを抱えたレインの事が心配にはなったものの、考えるのが面倒くさくなったようで清々しいまでの笑顔で丸投げをする始末である。


「まぁ、レイン達にも使い魔で話は伝えておくから、大丈夫だと思う。ゼイやザガロは魔法の関係で時間厳守って話もしてあるし、きっと大丈夫だろ」


「そう思いたいな……と言うか、いっそ、お前は転移魔法を使えるんだから、一時的にどこかにその隠し財産を隠しておけば良いんじゃないのか? フォルムに置いてるのは危険だろ」


一抹の不安を覚えながらも、時間制限がある事を思い出してくれると言うカイン。ジークはその言葉に頷くと隠し財産の置き場所を考え直したらどうだと聞く。


「いや、ちらつかせて一網打尽にしようと思ってさ。そのために大々的に隠し財産を見つけたって言って回ってるんだけど、道の整備とか必要な場所があれば申請してくれって言って」


「おい。どうして、そうなるんだ? と言うか、今までのやり取り、全部、無駄じゃないかよ!? ……あれ?」


カインはフォルム中に隠し財産をフォルムのために使うと宣言して回っており、ジークはカインが何をしたいのかわからないようで彼の胸倉をつかみ問い詰めようとする。

胸倉をつかんだ瞬間、カインに投げ飛ばされる事を察知したジークだが、背中に衝撃が走る事はなく、意味がわからずに首を傾げた。


「お仕置きは屋敷に戻ってからね。一応、俺にも考えがあるんだよ」


「いや、できればなしの方向で」


カインはジークの手を外すと考えがあると笑う。

ジークは痛みは背中にないものの、カインの笑顔に背中に冷たいものが伝っているようで顔を引きつらせている。


「あの、カインさん、考えがあると言うのはどう言う事でしょうか?」


「そのまま、襲撃者が来るかも知れないものをいつまでも持っていたくないから、早く使ってしまいたいのが本音。フォルムの街の補修や、テッド先生の診療所のようにみんなが使う場所にお金を入れる事が必要。後はフォルムは国境が近いから、隣国から逃げてきた人達を保護するのに生活の場を作らないといけないからね」


「簡単に言ってしまえば、襲撃者に時間を与えない事で策もない状態で仕掛けてきたところを一網打尽にして憂いをなくしてから、心置きなく隠し財産を使ってしまおうと言う事です。すぐに使ってしまうと話をまけば焦りますから、それで、テッド先生も必要なものがあれば申請してください」


カインの言葉をセスが簡潔に説明すると、テッドに診療所で必要なものはないかと聞く。


「必要なものと言っても、1番、必要なのは人手ですからね」


「まぁ、診察を手伝えなくても、それ以外の事を手伝える人材は確保したいと思ってますけどね。後は引退を考えている冒険者に治癒魔法で診療所を手伝って貰えないかは聞いてみます」


テッドは苦笑いを浮かべるが、必要なものは望めない事もわかっているようで苦笑いを浮かべる。

カインは一先ず診療以外で必要な人材を集めようと考えているようであり、少し待って欲しいと笑う。


「診療所を手伝う人間が用意できるまで俺達は診療所の手伝いって事か?」


「そうみたいですね」


ジークとノエルはしばらくは診療所の手伝いだと理解したようで苦笑いを浮かべるが、特に反対するような事はない。


「とりあえず、俺の話はここで終わり。後はジーク達のお仕事」


「俺達の仕事? テッド先生、何かやる事ありますか?」


「……ジーク、ノエル、あなた達は本当に忘れているのですか?」


カインの話はここまでのようで、ジークとノエルに話を返すが、2人はカインの言いたい事の意味がわからないようで首を傾げる。

そんな2人の様子にセスの眉間にはくっきりとしたしわが寄って行く。


「あ、あの、セスさん、わたしとジークさんはセスさんを怒らせるような事をしましたか?」


「……今日はルッケルとワームの連絡係の日でしょう」


「忘れてた。テッド先生、すいません。俺とノエルはちょっと出てきます」


セスは2人が連絡係の事をすっかりと忘れている様子に大きく肩を落とし、ジークはセスの様子にバツが悪いようで視線を逸らした後、テッドに許可を取り、セスの転移魔法でルッケルに移動する。


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