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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
355/953

第355話

「ジーク、こんな朝から、何してるの?」


「その言葉、そっくり返してやる」


ジークはフォルムに来てから、毎朝、カインとレインの手合わせに付き合わされる形になっており、翌朝、中庭で軽く準備運動をしていると欠伸をしながら、フィーナが珍しく中庭に顔を出す。

フィーナはジークの様子に首を傾げるが、ジークは珍しいフィーナの早起きに大きく肩を落とした。


「ジーク、おなか減った」


「……お前は何で、そんなに自由なんだよ。昨日の夕飯の残りを簡単につまめるようにしてあるから」


「ん。ありがと」


フィーナの早起きの理由は、昨晩、夕飯を軽く済ませた事で、空腹により目を覚ましており、ジークに朝食の催促を始め出す。

ジークはフィーナの言葉に呆れ顔だが、フィーナの行動パターンはすでに頭に入っていたようですでに準備されており、フィーナは欠伸をしながら礼を言うとキッチンに向かって歩いて行く。


「と言うか、誰も起きてこないし」


「あんた、1人でバカみたいね」


しばらく、1人で準備運動をしていたジークだが、いつも、カインやレインが起きてくる時間になっても、2人とも起きてこず、ジークは頭をかく。

その様子にフィーナは持ってきた軽食を頬張りながら、ジークをバカにする。


「まぁ、なんだかんだ。言いながらも2人とも忙しいからな。疲れてるのかな? と言うか、起きてこないなら、朝飯の準備でも始めるかな?」


「ジーク、それなら、私が相手するわよ。朝ごはん、食べるのに軽く身体を動かしたいから」


ジークはカインの仕事ぶりや、昨日のレインの様子から2人に疲れがたまっている事もわかっているのか今日は諦めるかと言い、朝食の準備を始めるためにキッチンに移動しようとした時、最後の1口を頬張ったフィーナが身体を伸ばしながら自分がジークの相手をすると言う。


「……まだ、食う気かよ」


「だって、ちゃんと朝ごはん食べないで、またお昼前におなか減ってもイヤでしょ」


ジークは呆れた様子でため息を吐くが、フィーナは朝食前の準備運動だと笑う。


「いや、フィーナの相手は面倒だから遠慮する」


「どう言う事よ?」


しかし、ジークはフィーナの相手をするのは面倒なようで断ろうとするが、その言葉にフィーナは庭先に置いてある木剣を手にするとその切っ先をジークに向けた。

その目はジークに断る事は許さないと言っており、ジークは面倒そうに頭をかく。


「どう言う事も何も、フィーナの相手は面倒だ。剣筋もめちゃくちゃだし」


「良いから、相手をしなさいよ」


「って、いきなり斬りかかるな!?」


ジークは中庭から屋敷の中に入ろうとするが、フィーナは木剣をジークに向かって振り下ろし、ジークはそれを交わす。


「良いじゃない。あんたと手合わせ何か、ここしばらくやってないんだし」


「だから、イヤなんだよ。お前は力任せに剣を振りまわすだけで、剣筋も読めないし」


「読めないって言うなら、交わすな!!」


フィーナはすでに完全にやる気になっており、力まかせに木剣をジークに向かって斬りかかる。

ジークはその木剣をギリギリで交わして行き、その態度がフィーナの感情に火を点けたようで彼女の剣はより速く、鋭くなって行く。


「ジーク、悪い、遅れた……あれ? フィーナがいる?」


「カイン、起きてきたなら、このバカを止めろ!?」


「いや、せっかくだから、そのままやってたらどうだ?」


ジークがフィーナの攻撃を交わし続けるなか、欠伸をしながらカインが中庭に現れるとジークに斬りかかっているフィーナを見て首を傾げた。

ジークはカインに気が付き、カインに助けを求めるがカインはまだ頭が目覚め切っていないようで欠伸をしながら、準備運動を始め出す。


「って、聞け!! 見ろ。俺は素手なの。おかしいだろ」


「相手したくないなら、自分で止めれば良い。武器がなくてもジークならできるだろ。手を抜いてないで本気出せ」


「できるか!? 寸止めする気もない攻撃を喰らったら、当たり所悪けりゃ、木剣でも死ぬからな」


ジークはフィーナと手合わせするつもりはなかったため、木剣も魔導銃も持っておらず、手合わせ出来る状態ではないと主張するが、フィーナの攻撃全てを交わしている。

その様子はジークがフィーナ相手なら手を抜いているようにも見え、カインは軽い調子で言うが、ジークはジークでフィーナの攻撃をかわすのが精一杯あり、カインにどうにかするように助けを求める。


「いや、ジークは俺やレインとの手合わせの時はどこか手を抜いてるから、命がけなら本気出すだろ。実際、全部、見えてるんだから、当たらないだろ」


「見えていたって、身体が付いて行くか!!」


「へぇ、ジーク、あんた、手を抜いてるのね」


カインはジークに本気を出せと言うが、ジークは過大評価をするなと叫ぶ。

それがフィーナの怒りの炎に更なる燃料を投下する事になり、フィーナの額にはぴくぴくと青筋が浮かび上がり、その剣の鋭さはさらに増して行くが、ジークはギリギリでその攻撃を交わし続けている。


「すいません。寝坊しました」


「レイン、おはよう。いや、レインが遅れたおかげで面白いものが見れてるよ」


「面白いもの? ジークにフィーナさん?」


カインはジークとフィーナの手合わせを眺めていると、寝坊した事に気づいたレインが慌てて中庭に下りてくる。

レインはカインを見つけるなり、直ぐに謝罪をするが、カインはジークとフィーナの手合わせを指差し、レインに見るように言う。

レインはカインの指の先へと視線を移し、フィーナがいる事に気づくと昨日、目に焼きついたフィーナの身体を思い出したのか、1度、顔を赤くするも直ぐに煩悩を振り払うかのように首を大きく横に振った。


「レイン、スケベな事を考えてないで、よく見る」


「す、すいません……あれ、本当にジークですか?」


カインはレインの様子に大きく肩を落とした後に、改めて、ジークとフィーナの手合わせを見るように言う。

レインは1度、深呼吸をすると2人の手合わせへと視線を移す。

そんな彼の目に映るジークの姿はいつも自分やカインと手合わせしているジークとは異なるように見えるのか眉間にしわを寄せた。


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