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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
336/953

第336話

フォルムの案内を受けていたフィーナだが、レインがフォルムの女性達に捕まったりしたせいか、日はすっかりと落ちている。

ゼイとザガロは魔法の効果時間も近くなってきたため、途中で自分達の仮住まいに戻ってしまい、フィーナとレインはカインの屋敷に向かい歩く。


「遅くなってしまいましたね」


「別に良いんじゃないの? 急いでるわけじゃないし、それにどうせ、夕飯の準備はジークかあのクズだし」


レインは自分のせいで時間がかかってしまった事を謝り急ごうとするが、フィーナは特に気にした様子もない。


「そう言えば、レインは食事ってどうしてるの? 騎士の家系だし、おつきの人がいるわよね」


「いえ、俺がフォルムにくると決めたのは、エルト様やカインの計画を知っていて、その計画に協力したにも関わらず、自分に罰が及ばなかった事を恥じて、自分での罰を科したので、そのような者達は連れてきていません」


フィーナは自分はカインの屋敷に戻っても特にやるべき事がないため、遅くなっても良いのだがレインの夕食の事を考えたようで急ごうと考えはしたものの、彼の家柄を思い出したようで自己完結をする。

レインはフィーナの様子に苦笑いを浮かべると、フィーナの考えを首を振って否定する。


「レイン、あんた、変わり者だって言われない?」


「融通が利かないとは言われますけど、変わり者とは言われないですね」


どちらかと言えば、ジークやノエル、両親に頼りっぱなしのフィーナはレインの考えが信じられないようで眉間にしわを寄せるが、レインはフィーナの言いたい事が理解できないようで首を傾げた。


「……まぁ、レインは女の子が寄ってくるから、困らないわよね。ご飯の用意をしてくれたり、部屋の掃除をしたいって言う子が後を絶たないんでしょう」


「その言い方は止めて貰えませんか? 正直、困ってるんです。一応、カインが用意してくれた屋敷があるんですけど、待ち伏せをされたりしてて、帰りにくかったりするんですから」


フォルムの案内の途中で、フィーナは女性陣達からの重圧を何度か受けたようで、レインなら選びたい放題だと言うが、レインは本当に困っているようで大きく肩を落とす。


「それは、何と言ったら良いの? と言うか、屋敷に戻るのはどうしてるの?」


「戻れない時はカインの屋敷に泊めて貰ったり、仕事場になっている詰所に泊まったり」


「……苦労してるわね」


レインはフォルムの女性陣からのアタックにかなり余裕はなくなっており、フィーナは彼の様子でようやく彼の大変さが理解できたようで眉間にしわを寄せた。


「好意を持っていただけるのはありがたいのですけど、流石にここまでなってくると、どうして良いかわかりません」


「そう言う時はあのクズに丸投げしたら良いのよ。レインが体調を崩しても困るんだから、そこら辺を考えるのはあのクズの仕事でしょ」


すでにレインの手に負えない物になってきているようで、解決策が浮かばないようであり、力なく笑うとフィーナは簡単にカインに押し付けてしまえば良いと言う。


「カインが領主の命で、何かを言ってくれれば一時的には収まるかも知れませんが、そうなると領主の仕事に影響が出てきてしまうかも知れませんし」


「大丈夫。大丈夫。ただでさえ、ギド達に仕事を丸投げしている部分もあるんだから、それくらいさせれば良いのよ。そうと決まれば、作戦会議ね」


「え? ちょ、ちょっと、フィーナさん!?」


どうにか自分で解決策を探ろうとするレインだが、既にフィーナはカインに丸投げする事を決めたようで、レインの首根っこをつかむと彼を引きずったまま、道の先に見えてきたカインの屋敷に向かって歩き出す。


「と言う事なのよ。クズ、何か良い案を出しなさい」


「フィーナさん、もう少し、言葉を選んではどうでしょう?」


レインをカインの屋敷の中に引きずり込んだフィーナは居間に着くなり、レインの状況を説明するが、その勝手すぎる態度にノエルは苦笑いを浮かべた。


「レイン=ファクトも大変ですね」


「まぁ、これでも飲んで落ち着いてくれよ」


「はい。こんな事になるとは思っていませんでした。あ、ありがとうございます」


困り顔のレインの様子にセスは小さくため息を吐くと苦笑いを浮かべたジークはレインの前に淹れたばかりのお茶を置く。


「追いかけ回されているのは、見たこともあるし、ゼイから聞いてるから知ってたけど、そんな大変な事になってたんだね」


「ここにだって泊まってたんでしょ。それくらい気が付かなかったの?」


「レインはそう言う事はあまり話さないしね。周辺の探索の予定とか進捗状況とか止まった時は領地運営の話していてたし、レインからどうにかして欲しいって話も聞かなかったから、そこまで考えていなかったよ」


カインはレインの状況に苦笑いを浮かべると、フィーナは呆れ顔でため息を吐いた。


「とりあえず、仕事に影響が出てるようだし、しばらくはここに泊まる事。フィーナにもフォルムの周辺探索は手伝わせるつもりだし、ジークやノエルもしばらくはフォルムにいて貰うつもりだから、俺より、レインと一緒の行動が長くなるし、その方が都合が良いから」


「わかりました」


「……おい。俺の予定まで決めるな。俺にだって俺の仕事があるんだぞ」


カインは暫定処置としてレインもカインの屋敷に留まるように言うが、その中にはなぜかジーク達の動きも規制するものであり、ジークは眉間にしわを寄せる。


「調合なら、フォルムでやれば良い。調合薬の販売はしばらくシルドさんに頼んでおいた、村の人間にも伝えておいて欲しいって、言う事も伝えてある。明日にでも店の物をシルドさんの店に運ぶぞ。後、調合に必要な道具もフォルムに運ぶ。探索で周辺にある薬草類の調査や、調合時にはフォルムにいる調合師達と交流できるように手を打ってあるからな」


「……用意が周到過ぎてなんて言ったら良いんだ?」


しかし、既にカインの手はジークの知らないところでジオスやフォルムに及んでおり、ジークは自分の知らないところで話が大きく進んでいる事に大きく肩を落とした。

カインはその様子に楽しそうな笑みを浮かべており、どこまで行ってもカインの手のひらの上のジークの様子にその場は微妙な空気が流れる。


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