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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
329/953

第329話

「落ち着く」


「もったいぶらずに言いなさいよ」


ノエルの様子に苦笑いを浮かべるカインだが、その様子にフィーナははぐらかされているような気がしているのか、次の言葉を促す。


「実際、共存と言うのは言い過ぎなんだよね」


「どう言う事だ?」


共存とは言ってみたももの、フォルムでかつての魔族と人族が行った物はジークやノエルの望む形ではないようでカインは小さく肩を落とす。

その言葉にジークは眉間にしわを寄せ、ノエルは不安になってきたのか、隣に座っているジークの服をつかむ。


「……共存とまでは言うのは難しいのです。かつて、フォルムにいた者達は自分達が魔族と言う事を隠し、人族の中に紛れました。魔族がいかに力や魔力が強くとも、フォルムに新天地を求め、フォルムを作った人族の前では敵わないと判断したのです」


「それって、どう言う事?」


「簡単に言えば、フォルムには魔族の血を引いた者が多く存在すると言う事です」


国が広がり、人族が新天地を目指したなかで、争いを避けた魔族は自分達が魔族だと言う事を隠し、人族として生きる道を選んでいた事をギドが伝えるとフィーナは要領を得ないようで首を傾げており、セスは彼女のために簡単な説明を行う。


「それは」


「俺達が望むものではないだろ?」


「そうですね」


ギドの口から伝えられたものはジークとノエルが望むものではなく、ノエルは表情を曇らせる。


「カイン=クローク、その魔族の血を引いた者達は自分達が魔族を知っているのですか?」


「正直、わからない。知っている者もいれば、まったく知らない者もいる。ただ……」


「ただ、何だよ?」


セスはカインがギド達を使い、魔族の血を引く者を探そうとしているのだと思ったようで、進行状況を聞こうとするが、カインはまた言葉をはぐらかそうとし、ジークは眉間にしわを寄せた。


「先々代の領主様は魔族の血を引いてたみたいだよ」


「先々代? その領主は子供がいなかったのか?」


「……フォルムの領主ですか?」


カインが新たにフォルムの領主になった事もあり、彼の調べた中で2代前の領主は魔族の血を引いていたと言う。

ジークはその領主の後継はどうしたのかと聞くとセスは何か心当たりがあるのか眉間にしわを寄せ、何かを考え込む。


「セスさん、どうしたんですか?」


「……確か、先々代は後継ぎがなく、養子を向かい入れたと、そして、先代の領主はルッケルでのエルト様とライオ様の暗殺を計画した者のなかに名を連ねていたため、処罰されたはずです」


セスはフォルムの先々代と先代の領主に心当たりがあるようであり、口を開き始め、ルッケルでの暗殺事件にフォルムの先代領主が関わっていたと言う。


「そう。捕まった暗殺者を手配したのが、先代の領主。ただね。さっき、ジークからシュミット様が話した内容を照らし合わせるといくつか面白い推測ができるんだよね」


「面白い推測って、どうしてだろうな。イヤな予感しかしないのは」


カインはジオスでジークから聞いた話で彼が集めていた情報でいくつか繋がった物があると笑う。

カインの表情にジークは大きく肩を落とす。


「先々代の領主様には後継者がいないって話だったんだけど、そうじゃなかったらしいんだ。ただ、領主にするわけにはいかなかった」


「どう言う事ですか? どうして、領主にするわけにはいかなかったんですか?」


「それは……魔族の力を強く受け継ぎ過ぎたのです」


カインはジークの反応に苦笑いを浮かべると、本来、先代領主は領主を継ぐ位置にいなかったと話す。

ノエルは意味がわからないようで首をひねると、ギドは言いにくそうに真実を告げた。


「あくまで推測の域を脱してないけどね。魔族と言う事を隠していた者達の中に大きすぎる力を持った者が現れた。それはその子が魔族だとわかるくらいに、その子は生まれてはいない子として処理された」


「処理? 待てよ。それって、子供を殺したって事か?」


カインはあくまでも事実はわからないと首を振った後に、先々代の領主の子供は魔族として才能の片鱗を見せていたと言う。

人族の中で生きる事を選んでいた者達の中に現れた大きな力は望まれたものではなく、表には出せないものであった。

カインの推測を聞いたジークの頭は1つの事実しか導き出せなかったようで、怒りがこみ上げてきたのかテーブルを思いっきり叩き、勢いよく立ちあがる。


「ジーク、落ち着け」


「落ち着いて居られるか」


「落ち着け。話はまだ終わっていない」


カインはジークの怒りはもっともだと思っているようだが、彼に落ち着くように言う。

しかし、ジークは両親に捨てられた自分と親に殺されてしまったであろうその子を重ねている部分もあるのか、その目には怒りの色が濃く出ている。

そんなジークの様子にカインはもう1度、落ち着くように言う。その声は落ち着いてはいるが、この場にいる誰よりも湧き出る感情を抑えているのがわかり、ジークは不機嫌そうな表情のまま、ソファーに座り直す。


「カイン、説明が不足しすぎだ。それでは無駄な怒りを買う事になるぞ」


「悪かったよ」


ギドはジークとカインのやり取りに大きく肩を落とすと、カインに悪戯が過ぎると言う。

カインは考えがあるようだが、ギドに言い訳じみた事は言わずに一言謝るだけである。


「説明不足ですか?」


「カインは処理をしたとは言ったが、殺したとは言っていない。領主が魔族の血を受け継いでいると知られるわけにはいかなかった。だから、領主の子としてではなく、育てられた」


ギドはカインに説明を任せていると話がおかしな方向に進んで行くと思ったのか、説明を引き継ぐ。彼の口から出た言葉は先々代の領主の子は生きていると言う物である。


「待って。領主の子供じゃなくても魔族だってばれると不味いでしょ」


「あぁ、ただ、見た目的にはフォルムに住んでいた魔族は人族と見分けがつかない。人族の血を引いている事もあり、生まれた時も人族と同じ形で生まれてきたみたいだからな」


「……失礼ですが、今更なのですが、フォルムに住んでいた魔族は何族なんですか?」


ギドの説明を聞きながら、いつまでも先住していた魔族の種族が出てこない事に痺れを切らしたようでセスがカインとギドに問う。


「言い忘れていたな。フォルムに住んでいた魔族はラミア族だ」


「ラミア族ですか? ……そうですね。いくつか繋がるところがありますわね」


ギドの口からラミア族が住んでいたと聞かされるとセスはカインが話していた面白い推測に察しが付いたようでカインを睨みつける。


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