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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
328/953

第328話

「ギド、入るよ」


「……あぁ」


カインの案内で元領主の屋敷へ移動すると、ギドに振り分けられている部屋へと移動する。

カインはノックをして中からの返事を待つとしばらくしてから短い返事があり、カインを先頭に部屋の中に入る。

部屋は書庫と言っても遜色のないくらいの量の本が並んでおり、その奥の机には人族に見える成年男性が座っている。


「ギドか?」


「ジークにノエル様、フィーナまでいるのか?」


「ギドさん、ずいぶんと話すのが上手くなりましたね」


ジークは少し警戒した様子で青年をギドと呼ぶと青年は顔を上げ、3人の顔を見て直ぐに立ち上がり、ジーク達の元に駆け寄ってくる。

彼の言葉は以前の片言とは違い流暢な物に変わっており、ノエルは驚いている。


「流石にカインの手伝いをするとなると、あのままでは行かないので、かなり練習をしました」


「だとしても、上手くなりすぎだろ。俺なんて、相変わらず、ゴブリン語もリザードマン語も使えないぞ」


「ジークはどうせ、飽きて投げ出しただけだろうけどね」


ギドはノエルに誉められた事に少し気恥ずかしそうな表情をすると、ジークはカインの部屋から言葉を覚えるために本を持ってきたものの、何も進んでいないとため息を吐く。

カインはジークの様子から、ジークが飽きたんだと言うとジークは図星のようでカインから視線を逸らし頭をかく。


「相変わらずだな」


「そ、そうですね」


ギドは変わらないジークの様子に表情を和らげるが、ノエルは申し訳なさそうな表情をする。


「ギド、そんな事より、フォルムなんかに居て良いの? あんた、集落のリーダーなんじゃないの? あんたがいなくて大丈夫なの?」


「こんなところって、言われたよ」


「まぁ、ギドの立場を考えると言われるだろうな」


フィーナはゴブリンの集落に行った時にギドがゴブリン達に尊敬されたリーダーだと認識していたようで集落の事を心配して聞くと、カインはわざとらしくため息を吐き、ジークはフィーナの言いたい事もわかるようで苦笑いを浮かべる。


「問題ない。あの後、リザードマン達と協力して集落を維持しているからな。ワシがいなくてもどうにかなる」


「ゴブリンとリザードマンが協力?」


「コーラッドさん、人族に戦争を仕掛けようと考えてるわけじゃないから、眉間にしわを寄せない」


「わかっていますわ」


ゴブリンとリザードマンの協力関係は上手く行っているようであるが、未だに魔族への偏見を払拭できていないセスは眉間にしわを寄せた。

カインはそんな彼女の様子に気が付き、セスの眉間を指でおさえるとセスはその様子にからかわれていると思ったようでムッとした表情をする。


「……知らない顔が混じっているな」


「あぁ。ギドには話してあると思ったけど、セス=コーラッドさん、俺が抜けた代わりにエルト様の補佐をしてくれている人だよ」


「ほう。この娘がな」


「何ですか?」


ギドはセスと出会った事がないため、眉間にしわを寄せると警戒するような視線を向けた。カインはギドにセスを紹介するとギドは彼女に近づき、セスの顔を覗き込む。

セスはギドの態度に失礼だと思ったようで不機嫌そうな表情をして、ギドを睨みつける。


「ギド、女性の顔をそうやって覗き込むのは失礼だよ」


「あぁ、そうだったな。すまない。セス=コーラッド。まだ人族の習慣にはなれていないものでな」


「いえ、こちらこそ、失礼しました」


2人の様子にカインは小さくため息を吐き、仲裁に入るとギドは素直に自分の非を詫び、セスも釣られるように頭を下げた。


「……こうやって、素直に謝ったりできれば、簡単に場が治まるんだけどな」


「何よ?」


「いや、顔を合わせるなり、おかしな意地の張り合いを始め出す。奴らもいるのにと思ってな」


セスとギドの様子を見て、ジークはフィーナとザガロを交互に見てため息を吐くと、フィーナとザガロはバカにされている事に気が付いたようでジークを睨みつける。


「あだっ!?」


「ジークも余計な事を言わない。話が進まないから」


「ジーク、ヨケイナコトバ、オオイ」


「悪かったよ」


ジークに襲いかかりそうなフィーナとザガロの様子に気が付いたカインはジークの頭を軽く小突くとゼイもカインに同意を示し、ジークは状況を見て自分が悪い事は理解できているようで素直に謝る。


「それじゃあ、とりあえず、話を始めようか……何のためにここにきたんだっけ?」


「カイン=クローク、あなたはふざけているんですか? 先ほど、あなたはジークに同じような事を言っていましたよね」


「はいはい。冗談です。ギド」


部屋には数名が腰を掛けられるソファーとテーブルが用意されており、全員が腰を下ろすとカインはくだらない冗談を言い、セスに睨みつけられる。

カインは彼女の視線に苦笑いを浮かべるとギドの名を呼び、ギドはテーブルの上にフォルム周辺の地図を広げた。


「これって、フォルムの地図ですか? ……」


「そうだよ。フォルムは国境近いから、こっちの方に隣国の地図も入っているけどね」


「カイン、難しい説明は無しにしてくれ。理解できないだろうし」


ノエルは地図を覗き込むとカインは簡単にフォルム周辺の説明を始めようとするが、ジークはカインの小難しい話は省いてくれと言う。


「そうだね……あまり、小難しい話になると飽きてくるだろうしね」


「そうだな」


ジークの言葉にカインはフィーナ、ゼイ、ザガロへと視線を移して大きく肩を落とし、ギドは困っているカインの様子は見ていて楽しいのか苦笑いを浮かべている。


「簡単に言うとさっき、ゼイも言ったけどフォルム周辺にかなり昔に魔族が住んでいた」


「で、その魔族はどうなったんだ? 人族に追われたのか?」


「いや、フォルム周辺にいた魔族は人族との共存を選んだ」


「カインさん、詳しく教えてください」


ジークは以前にフォルムに住んでいた魔族の行方を聞くとカインの口から出た言葉はジーク達が望んでいるものを先駆けて実行していた魔族がいたと言う事実である。

その言葉にジークとノエルは顔を見合わせると、ノエルはカインに詰め寄る。


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