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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
326/953

第326話

ジーク達はカインの後を追いかけて玄関に到着するとカインは1人の少女とカインより年上に見える青年と話をしている。

少女は小柄に見えるがその背には少女が持つにしては大きすぎる斧を担ぎ、青年は腰に片刃剣を差し、不機嫌そうな表情で腕を組んでいる。


「……ノエル、フィーナ、どうしてだ? あの女の子には見覚えがあるんだけど」


「偶然ね。ジーク、私も見覚えがあるわ」


「ゼ、ゼイさん、どうしてフォルムにいるんですか!?」


カインと話し込んでいる少女はゴブリン族の少女ゼイが魔法で人族の姿に変装した姿に酷似しており、ジークとフィーナは状況が理解できずに眉間にしわを寄せるとノエルは驚きを隠せずに少女をゼイと呼ぶ。


「ノエルサマ、ジーク、フィーナ?」


「……本人かよ。そうなるとあっちの男性も魔族か?」


ノエルの声に少女は3人へと視線を向けるとノエルの顔を見て、嬉しそうに駆け出してくる。

その姿にジークはゴブリンである彼女がフォルムの街中にいる事にカインが作為的に何かしていると感じ取ったようで眉間にしわを寄せ、ゼイとともにいた青年へと視線を向けた。


「な、何ですか? これは?」


「セスさん、落ち着いて、カインとゼイはそう言う関係じゃないから」


「何ですか!? このかわいらしい子は!!」


ゼイはノエルとの再会を喜んでいるゼイの姿にセスはふるふると身体をふるわせ始める。

ジークはセスが身体をふるわせ始めた事に、彼女が嫉妬で怒りに震えていると思ったようで、セスを落ち着かせようと声をかけたが、セスのおかしな性癖に少女姿のゼイはピンポイントで嵌ったようでセスは本能のまま、ゼイを抱きしめ、頭を撫でまわし始める。


「ナ、ナンダ。コノオンナハ!?」


「……いつもの発作ね」


「ジークさん、フィーナさんゼイさんを助けなくて良いんでしょうか?」


ゼイは突然のセスの襲撃に何が起きたかわからないようで、セスの腕の中から逃げ出そうとするが、暴走しているセスの腕力は思いのほか強くゴブリンであるゼイでも脱出は不可能のようである。

フィーナは2人の様子にどうして良いのか、わからないようで眉間にしわを寄せ、ノエルは慌てて、ジークとフィーナにゼイを救出するように頼み込む。


「良いんじゃないか。あのままでも、それにゼイ救出より、先に聞かなきゃいけない事があるだろ」


「何か、背後からの視線が痛いかな?」


先にこの状況を理解したいようで、カインへと視線を移すジーク。

カインはジークの視線にため息を吐くものの、悪いとは全く思っていないようでその表情には悪気などまったくなさそうに見え、その様子にジークは少しだけイラついてきたようで視線を鋭くすると、ジークとカインの間には緊張感が漂い始める。


「ジーク、ゼイを助けた方が良くないかな?」


「……そうだな」


しかし、セスの腕の中からはゼイの悲鳴にも似た声が響き始めており、2人の緊張感は直ぐに緩、カインはジークにゼイの救出を提案し、ジークもその言葉に頷く。


「コーラッドさん、ゼイを放してくれないかな? 話が進まないから」


「カイン=クローク、あなたは私の至福の時間を邪魔するつもりですか?」


カインは一先ず、セスの説得を試みるが、彼女はゼイを解放する気はないようで唸り声をあげてカインを威嚇し始める。


「……なんだろうな。これを見てるとセスさんが本当にカインの事が好きなのか疑問に思うよな」


「そ、そうですね。それより、早く、ゼイさんを助けないと」


「……ゼイ、ぐったりしてるわね」


カインとセスの間に漂っているおかしな空気にため息を吐くジークだが、セスの腕の中のゼイはすでに撫でまわされ疲れたのか、セスの腕の中でぐったりとしており、セスの暴走にどう対応して良いのかわからないようでフィーナは大きく肩を落とす。


「別に邪魔するつもりはないけど、よく手の中身を確認してみたら良いよ」


「当然ですわ。このような可愛い女の子を撫でまわすのは私の心の癒し? ……どう言う事ですか?」


ゼイはあくまで魔法で見る者の目を誤魔化しているだけであり、冷静に手で触れればゼイが人族でない事は理解できるため、カインはため息を吐きながらセスに確認するように言う。

セスはカインの言葉に怪訝そうな表情をすると、改めて、ゼイの頭を撫でまわし始めるが、何か違和感を覚えたようで眉間にしわを寄せた。


「魔法で見た目が変わってるだけだからな。触るとわかるんだよな」


「見た目が変わっている?」


「時間的にそろそろ魔法が解ける頃だね。取りあえず、中に入ろうか?」


ジークはセスが何かに気が付いた事に苦笑いを浮かべているが、セスは姿を変える魔法について知らないようで首を傾げ始める。

カインの元にゼイ達がきたのは魔法の効果時間が切れる頃のようであり、周囲からの視線でゼイ達が魔族とばれる事は避けたいため、屋敷の中に戻るように言う。


「何を隠しているのですか?」


「何をって、セスさん、腕の中」


「腕の中? ゴ、ゴブリン!? リ、リザードマンまで!? こ、これはどう言う事ですか?」


屋敷に戻るとセスはジーク達も何か知っていると気が付いたようで、ジークに説明を求める。

その時、カインがゼイと青年にかけていた変装魔法は効果時間を過ぎたようで、セスの腕の中のゼイはゴブリンに姿を戻し、青年はリザードマンへと姿を戻す。

セスは腕の中の少女が魔族であるゴブリンに変わった事に驚き、飛びのき、カインの背中へ隠れる。


「もう1人はリザードマンか?」


「えーと、確か、ザガロさんでしたよね。お久しぶりです」


ジークは青年だったリザードマンの姿に苦笑いを浮かべるが、相変わらず、見た目で判断できないようで首を傾げた。

ノエルはリザードマンの顔に覚えがあったようで、彼をザガロと呼ぶと深々と頭を下げる。


「……」


「ザガロ?」


ザガロは上位種のドレイクであるノエルには礼を尽くす必要があると思っているのか深々と頭を下げると、フィーナはその名に覚えがあったようでザガロを睨みつけるとザガロもフィーナを睨み返す。


「あー、確か、フィーナと一緒にカインに血祭りにあげられていた」


「その覚え方もどうかと思うけどね」


「あ、あなた達は何で笑っているのですか? 街中に魔族がいるのですよ」


ジークは2人の様子にギドを助けに行った集落の時の事を思い出したようでポンと手を叩き、カインはそんなジークの姿に苦笑いを浮かべた。

しかし、セスはエルトの考えに賛同を示したものの、目の前に突然、魔族が現れると言った事は考えていなかったようで声を震わせている。


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