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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
325/953

第325話

「ここがフォルムか?」


「変な場所に連れてくるとでも思ってるのか?」


「……まぁ、カインなら、他の用事にでも駆り出されそうだから」


カインの転移魔法は無事に発動し、ジークは見慣れない風景に声を漏らした。

その声はカインの耳にしっかりと届いており、彼の返事にジークは居心地が悪そうに視線を逸らす。


「取りあえず、付いてきてくれ」


「はい。わかりました……ま、待ってください!? フィーナさんを引きずって行くのは止めてください!?」


カインはジークの様子に小さくため息を吐くも、責める気はないようで捕えたフィーナを引きずって歩き始める。

ノエルはカインの言葉に頷き、視線をカインに向けると驚きの声を上げて、2人を追いかけて行く。


「……セスさん、行きましょうか?」


「そうですね」


3人の様子にジークはため息を吐くと知らない土地に残されても困るため、セスに声をかけると2人で3人を追いかける。


「ここがカインの屋敷か? ……お前、一応は領主なんだよな?」


「一応は領主だけど、いまいち、貴族や豪商って言う人間達の考えには理解できないから、無駄にでかい屋敷はいらない」


フォルムは国境近くの領地であり、規模としてはルッケルよりかなり小さく、隣国との小規模な争いもあるため、周辺の開拓は進んでいない。

カインの屋敷まで歩くが、屋敷自体はカインが王都に残しておいた屋敷と同程度の規模であり、領主の屋敷としてはかなり小さなものである。

カインの案内で屋敷の居間まで移動し、ジオスから運んできた荷物を下ろす。


「無駄にでかい屋敷はいらないって言っても、元の領主の屋敷はどうしたんだ? お前がここに住んでると屋敷で働いていた人間は仕事をなくすだろ」


「そこは集会所にしてる。俺1人で決めるより、話し合いの場として使った方が良いから、働いていた人達はそのまま屋敷の管理をして貰ってるよ」


「そうなのか?」


「元々、平民だからな。屋敷の中に知らない人間がうろつくのはあんまりな。後、俺も仕事をする時はそっちに行ってる」


ジークは先日、ワームでラースの考えも聞いているためか、屋敷の中をキョロキョロと見回しながら、元の領主の屋敷で働いていた人間の事を聞く。

カインはジークが屋敷の使用人について考えている事を嬉しく思っているのか、小さく表情を緩ませるも、領主と言う立場になれていないようで困っているのか頭をかいた。


「まぁ、確かになれないだろうな。それなら、レインとお前の協力者って言うのは、そっちにいるのか?」


「まぁ、そうなるな。って、レインは周辺の開拓の護衛が最近はメインだから、あんまりいないけど、今日はいると思う」


カインの心境も理解できるようで苦笑いを浮かべた後、カインの手伝いを買って出たレインにも会いたいと思ったようでカインに聞く。

カインはレインが優秀である事を理解しているため、彼に多くを一任しており、別行動をしている事も多いようだが、領主らしくスケジュール管理はできているようである、


「レインさんが護衛についてくれるって言うなら、心強いでしょうね」


「そうね。少なくともこのエセ領主よりは信頼も厚いだろうし」


ノエルは実直なレインが一緒なら開拓に出ている人間も安心だと言い、先ほどまでカインに捕えられていたフィーナはむすっとした表情で嫌味を言う。


「レイン以外にも腕が立つのを何人か付けてるしね。後は魔獣が出ても対応できるように指揮や魔法を使える頼りになるリーダーを」


「リーダーね……なぜだろうな。カインの顔を見てると何かはめられてる気がしてならないんだ」


「同感ですわ」


カインは含み笑いを浮かべており、ジークは彼の表情からあまり良い事は思っていないと感じたようで眉間にしわを寄せるとセスも同じ事を考えたようで頷いた。


「別におかしな事はしてないけどね」


「なら、その笑い方を止めろ」


2人の反応が自分を疑っているとはわかるが、カインはその笑みを止める事はなく、ジークは大きく肩を落とす。


「ただ、俺は優秀な人材を無駄に遊ばせておくほど、ヒマじゃないって事、少なくとも新米領主には扱えるコマが少ないからね」


「……なんか、フォルムにくるのを断れば良かった気がするな。確実におかしな事に巻き込まれる」


「今更ですわね」


カインはフォルムでジーク達に何かさせる気であるのは明白であり、ジークは妙な胸騒ぎがしているようで眉間にしわを寄せる。

セスはそんなジークの様子を見て、自分の忠告を聞かなかった罰だと言いたげにため息を吐いた。


「信頼されてないなぁ」


「……それは日頃の行いでしょ」


「あの、フィーナさん、あまりおかしな事を言わない方が」


カインは苦笑いを浮かべるとフィーナは全面的にカインの行動に問題があると思っている事もあり、カインを睨みつける。

ノエルはまた、フィーナがカインにお仕置きされる事になってはいけないと思ったようで彼女の服を引っ張った。


「ノエルに免じて、今は許して置こう。それにあまり遊んでいるヒマもないし、新米領主はこれでも忙しいんだ」


「そう言うなら……誰か、来たみたいだぞ」


「女の子よね?」


カインは1度、ため息を吐くとジーク達を仕事場に連れて行こうとした時、屋敷の玄関の方からカインの名を呼ぶ声が聞こえる。

その声は少女の声であり、フィーナは信じられないと言った表情をするが、セスは平静を保とうとしているが、その表情には明らかな動揺が見えている。


「そんな表情をするなら、変な意地を張らずに告白の1つでもすれば良いのに」


「そうですね」


「……セスさん、言っておくわ。間違ってもあれだけは止めておきなさい。セスさん、美人なんだし、振り回されてるとは言え、エルト様付きって事はエリートでしょ。元々、貴族なんだし、あんなクズより、良い男、掃いて捨てるほど、見つかるから」


セスの表情にジークは小さくため息を吐くとノエルは苦笑いを浮かべた。

フィーナはセスがカインとくっついてしまえば、セスにどれだけ多大な迷惑がかかるかわからないため、彼女の両肩に手を置き、考え直すように説得を試み始める。


「べ、別に私とカイン=クロークはそんな関係では」


「遊んでないで行くぞ」


セスはフィーナに詰め寄られ、全力でカインの事など何とも思っていないと言おうとするが、彼女の想い人であるカインはすでに1人で玄関に向かって歩き出し始めており、セスはその背中を見て怒りがこみ上げてきたのか額には青筋が浮かんで行く。


「……何か不毛だな」


「そ、そうですね」


そんなセスの様子にジークは何と言って良いのかわからないようで眉間にしわを寄せ、ノエルは苦笑いを浮かべる。


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