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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
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第318話

「わかりましたって、セスさんがジークを手伝ったら、エルト様の方はどうするの?」


「俺は助かるんだけど、正直、エルト王子だけでそっちがどうにかなるとは思えないんだけど」


エルトの指示に疑問の声を上げるフィーナ。ジークもフィーナと同じ事を思ったようで苦笑いを浮かべた。


「大丈夫。大丈夫。こっちはシュミットに手伝って貰うから、シュミット、できるな」


「へ?」


ジークとフィーナの言葉にエルトは苦笑いを浮かべた後、真剣な表情をするとシュミットを指名し、突然の事にシュミットは間の抜けた声を上げ、予想外の指名に他の人間もついて行けないていけてないようでその場にはおかしな沈黙が訪れる。


「待った!? その人選はあり得ないだろ。この小者はエルト王子とライオ王子の暗殺を企てたんだぞ。王位継承権を考えたって、この小者より、アンリ王女の方が高いんだ。この小者にとって、エルト王子と同様にアンリ王女も邪魔な人間でしかないんだぞ」


「ジ、ジークさん、落ち着きましょう。エルト様にだって考えがあるんでしょうし、それを聞いてから反対するべきだと思います」


「……反対する事は確定なのね」


我に返ったジークは勢いよく立ちあがり、その音で沈黙は打ち破られた。

ジークはエルトの提案を無謀だと言うとノエルは慌てて、ジークを落ち着かせようと声をかけるが、その物言いはジークと同様の事を思っているようであり、フィーナは小さくため息を吐く。


「反対かい?」


「それはそうだろ。さっきも言ったけど、この小者はエルト王子を暗殺しようとしたんだ。反対するに決まってるだろ」


「そ、そうです。ジーク=フィリスの言った通り、意味がわかりません」


ジークの様子に首を傾げるエルトには危機感などまったくなく、その様子にジークはテーブルを両手で叩いた後にシュミットを指差して叫ぶ。

シュミット自身も自分が指名された意味がわからずに慌てて説明を求める。その姿はエルトとライオの暗殺を考えるような狡猾な事を考えたようには見えない。


「シュミットからも意味がわからないって、言われたよ」


「当然でしょうな。エルト様、必要な話なら、言葉を濁さずに話して貰いたい。王族として隠さねばならぬ事は確かにあると思いますが、この状況ではワシらは協力のしようがありません」


賛成意見を得られない事にエルトはため息を吐くが、ラースはエルトが何かを隠しているとしか思えないようで眼力を鋭くして聞く。


「そうだね……シュミット、お前はなぜ、私とライオの命を狙った?」


「そ、それは……」


「何でって、普通に王位が欲しかったんじゃないの?」


ラースの問いにエルトは1度、頷くとシュミットにルッケルでの暗殺についてシュミットに問う。

シュミットはその問いの意味を考えているのか言葉を詰まらせるとフィーナは話に飽きてきたのか、つまらなさそうに言う。


「……エルト様は暗殺未遂事件の裏に何かが隠れているとお思いですか?」


「そうだね。確かにカインが場を整えてくれはしたが、シュミットの性格を考えれば、それを実行に移すまでの思いきれないと思うんだ。これに関してはカインも同意見だよ。シュミット、すべて話してくれないかい?」


「それは……」


レギアスはエルトの言葉から彼がシュミットは暗殺事件の黒幕ではないと思っていると感じ取り、説明を求める。

エルトはシュミットに事実を話すようと諭すように言うとシュミットはどうして良いのかわからないのか目を伏せてしまう。


「裏があったのか? ……確かに威張り散らすけど、あそこまでたいそうな事ができるとは思えないな」


「……」


エルトの言葉とシュミットの様子にジークは間の抜けた様子をした後、シュミットへと視線を移す。

シュミットは自分を大きく見せるために動く傾向は強いが、誰かの命を奪う事と考えるとその姿は想像できなかったようである。

そう考えてしまった時、ジークの頭に1人の人物の顔が思い浮かんだようで眉間にしわを寄せる。ノエルもジークと同じ人物の顔が思い浮かんだようで、不安そうな表情でジークの服をつかむ。


「……1つ良いか? あんたに暗殺を吹き込んだ奴は、どこに消えた? 暗殺事件未遂の後に姿を現したか?」


「な、なぜ、それを?」


「……と言うか、この小者、考えていた以上に素直だな」


シュミットに吹き込んだ人物はカインの命を狙ったレムリアであると思ったようであり、シュミットに問う。

シュミットはジークの口から出た言葉に慌て始め、ジークは冷静にシュミットを見始める事ができたようで小さくため息を吐いた。


「ジーク、どう言う事ですか?」


「……セスさんも心当たりがあると思いますよ。その人物に」


「カインを狙ったドレイクがシュミットに暗殺を吹き込んだと言うわけかい」


眉間にしわを寄せるジークの様子に、エルトは気が付いたようで小さくため息を吐くと、シュミットの顔は急激に青ざめて行く。


「ド、ドレイク、あの者はドレイクだったと言うんですか!?」


「……知らなかったのかよ」


「みたいね」


シュミットは知らされた真実に声をあげ、その様子にジークとフィーナは眉間にしわをよせるが、襲撃犯がドレイクである事を知らなかったラースとレギアスの眉間にはくっきりとしたしわが寄る。


「……エルト王子、そう言えば、おっさんもレギアス様も知らなかったんじゃないか?」


「そうだね。すっかりと忘れていたよ」


「……どう言う事か、話していただきます」


2人からの視線にジークとエルトは背中に冷たい物が伝い始めたようであり、顔を引きつらせるとレギアスは重々しい口調で言うが、その様子から逃げ出す事が出来ないのは容易に想像が付く。


「いや、ルッケルで襲撃犯をジークとセス、カインの3人が追い詰めただろ。その時に襲撃犯がドレイクだって聞いたんだよ。流石に言って回ると警護を担当したアズさんに迷惑がかかるしね。その後にも現れていないし」


「現れていないではありません。ルッケルは国境から離れていますし、王都とも馬車を飛ばせば数日で到着できる場所です。そんな場所まで魔族が入り込んでいる事に問題があるのです!!」


ラースはその後に魔族が現れていない事など問題ではないと叫び、レギアスも同意見のようで目をつぶって頷いた。


「いや、シュミットはこの間まで王都に住んでたんだから、思いっきり、王都まで入り込まれてるだろ」


「確かにそうですね……」


冷静になったジークは頭の回転を取り戻しており、レムリアは王都へ転移魔法を使える事も理解したようで、胸の前で両腕を組む。

ノエルはレムリアを止めたいため、どうして良いのかわからないようで表情を曇らせている。


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