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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
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第316話

「平民、お前が何をしようとしてるのかわかっているのか!?」


「気にするな。薬屋と言う医療にかかわるものから見れば、平民の命もお前みたいな王族ってだけで、威張り散らすバカの命も変わらない」


シュミットはジークの様子に自分の命が本当に危険なところにある事を察したようで、全力で彼を止めようとするが、その言い方はこの状況でも他者を見下しており、ジークはその言葉を聞き、口元を小さく緩ませた。

その笑みには見る者に恐怖を与えるには充分な圧力があり、シュミットは完全に飲まれてしまったようでイスのから床に転がり落ち、ジークから少しでも距離を取ろうとするが完全に腰が抜けているようで逃げる事ができない。


「……まったく、トリスに似なくて良いところが似ているな」


「親としての責務はまったくはたしていないがな」


ジークがシュミットを追い詰める姿にラースは眉間にしわを寄せ、レギアスは柔らかな笑みを浮かべる。


「少し冷静にならんか。バカ者が」


「あがっ!? お、おっさん、何しやがるんだ!!」


「何をするではない。余計な事をして、手間を取らせるな」


ラースはジークの背後に回るとジークの頭の上に強烈なゲンコツを落とし、その衝撃にジークは我に返ったのか、頭に走る痛みに耐えながら、ラースを怒鳴りつけた。

しかし、ラースはジークを一喝し、ジークは頭に上っていた血が少し下がったようで自分の席に戻り、不機嫌そうに腕を組む。

その様子にラースは小さくため息を吐いた後に自分の席に戻って行く。


「……おっさんがまともな事を言ってるわ」


「今回はラースが正しいね。シュミット、ジークに両親の事は禁句だよ。ジークは両親の話をされる事が1番嫌いだからね」


ジークとラースのやり取りにフィーナは物珍しい物を見たと言い、エルトはシュミットにジークと会話をする上での注意点を伝えると席に戻るように促す。


「両親の事を……そうか。そうか。お互い、偉大な親を持つものには考えるべき事が多い」


「……エルト様、シュミット様は何かおかしな勘違いをしているのではないでしょうか?」


「良いんじゃないかな? それで、シュミットとジークの距離が近づくなら」


ジークの逆鱗が両親だと言う事にシュミットは彼と自分への共通点を見つけたと思ったようであり、何度も何度も頷く。

その姿にセスはシュミットがおかしな勘違いをしていると思ったようだが、エルトは勘違いさせたままで良いと笑う。


「それでは話を戻しましょう。エルト様は私達にアンリ様の症状を改善させる手伝いをさせたいわけですね」


「あぁ、その通りなんだが、レギアス、何か方法はないかい? ジークとアリア殿、薬について調べたいんだけど、アリア殿が魔術学園に在籍していたと言う記録もなくなっていて、調べようがないんだよ」


「そうです。レギアス様は、なぜ、アリアさんの名が在籍記録から消されているかご存じありませんか? 私ではどこで消されたかもまったく探しだす事ができませんでした」


レギアスは小さく頷くと、エルトとセスはレギアスから少しでも情報を聞き出したいためか、失われたアリアの魔術学園の在籍記録について聞く。


「アリア殿の在籍記録か? そうか……すみません。それについては私は語れる立場にはありません」


「何でよ。ジークのおばあちゃんの事なのよ。ジークには知る権利くらいあるじゃない」


その問いに腕を組むと首を横に振った。その姿にフィーナは何かいらっとしたのか、声を上げる。


「フィーナ、落ち着け」


「落ち着けじゃないわよ。おばあちゃんの薬の作り方も教えられない。おばあちゃんの事も教えられない。意味が分かんないわよ。だいたい、ジーク、なんで、あんたは冷静なのよ!!」


ジークはフィーナを落ち着かせようと声をかけるが、彼女にとっては冷静に見えるジークの姿により一層の怒りを覚えたようでジークの胸倉をつかむ。


「レギアス様が語れる立場にないって言ってるんだ。言えない事なんだろ。それにここまでのヒントを貰えたんだ。新な道が1つ見つかった。だいたい、俺達に指示だけして何もしていない人間が1人いる事が気になってたんだよ」


「何を言ってるのよ? もったいぶらずにさっさと言いなさいよ」


「新な道? ……そう言う事ですか。確かに道は繋がりましたね。しかし、そう考えるとアリアさんとは何者なんでしょうか?」


レギアスの言葉にジークは彼へと口止めしている人物がいる事に気が付いたようであり、小さくため息を吐いた。

その様子にフィーナは不機嫌そうに次の言葉を待ち、セスはジークの言いたい事がわかったようで小さく頷くが、アリアと言う人物の事がまったくわからないようでその眉間にはしわが寄って行く。


「ジーク、セス、どう言う事だい?」


「この間から気になってたんだよ。何で、ばあちゃんの在籍記録が魔術学園にないか。単純に考えられるのは、記録を消した人間がいる事、後は名前が違うんじゃないかって事」


「名前が違う? ジーク、あんた、何を言ってるのよ?」


ジークはアリアの在籍記録がない事に疑問点があったようであり、頭をかくがフィーナは彼の言いたい事が理解できないようで、その様子は不機嫌極まりない表情をしている。


「単純な事です。アリアさんはアリア=フィリスと言う名で魔術学園に在籍していなかった。単純に婚姻により、名前を変えた可能性があります。アリアと言う名だけで言えば、それなりに名前がありました」


「それなら、その中にジークさんのおばあ様がいるわけですね」


「セスさん、ひょっとして、在籍記録全員の名前って覚えているのか?」


セスはジークに説明をさせておけば、フィーナに限界が来る可能性を察したようで、説明を引き継ぐとノエルは見えてきた光明に笑顔を見せるが、ジークは他に気になる事が出てきてしまったようで眉間にしわを寄せた。


「全員の名前を覚えるなど、物理的に無理です。アリアさんの事を調べるに当たりジークから聞いた。アリアさんの年齢から、在籍していた頃に当たりを付けて調査しましたから、そのくらい時期の在籍者は300人にも達していません」


「……いや、充分に凄いって」


「ジーク、おかしな所で話を中断させないでください」


「わかりました。お願いします」


セスはジークにこれくらいの事は誰でもできるとため息を吐くが、ジークはそこでセスの有能さを再認識したようで顔を引きつらせる。

セスにとっては当たり前の事のようで、ジークに話の邪魔をしないようにと釘を刺すと、ジークは納得がいかなさそうな表情をしながら頷く。


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