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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
312/953

第312話

ジークは連絡係としてワームに訪れた時にラースにエルトが面会を求めている事を告げると、次期国王のエルトの名前を出されては対応するしかなく、日程の調整があるため、ジークは余計な仕事をいくつか押し付けられたが、対談の日は直ぐに用意された。

ラースの屋敷の応接室に場は用意され、非公式とは言えエルトからの召集であり、ジオスにくる時の楽な格好であったエルトは正装でとラースとレギアスに言われて着替えをさせられており、応接室にはエルトと遅れているシュミット以外が座っている。


「ラース様、レギアス様、エルト様の急な呼びかけにお答えいただき、ありがとうございます」


「エルト様の召集なら、答えぬわけにもいくまい。しかし……あのキツネから、報告を受けてはいるが、あまり、小僧どもと懇意にするのは次期国王としては問題があるのではないか?」


「……俺に言うなよ。こっちだって、余計な仕事を押し付けられて困ってるんだから」


エルトが不在の間にセスは、ラースとレギアスに改めて、召集に応じてくれた事に頭を下げると、ラースはエルトからの使者をジークが勤めた事に不満があるようで眉間にしわを寄せた。

しかし、ジークの主張としては自分は巻き込まれているだけでしかなく、大きく肩を落とすと彼の姿にノエルとレギアスは苦笑いを浮かべている。


「まぁ、ラースもそれくらいにしておけ、エルト様の命ならば、ジークも従わぬわけにはいかんだろう。それより、ジーク、先日、ラースから、時間を取って欲しいと言っていたのは今回の事を関係しているのか?」


「えーと、関係していると言えば、関係しているんですけど、その時はエルト王子は関係してなかったんですよね」


レギアスはジークが先日、面会を求めていた事と今回の召集が関係していると思ったようで彼に尋ねるとジークは成行きに近い物があるため、苦笑いを浮かべた。


「ジークさん、あの今のうちにカインさんから頼まれていた物をレギアス様に見て貰ってはどうでしょうか?」


「あー、でも、それは今回は別件だろ」


ノエルは時間があるためかフォルムで育てられる薬草や野菜について、レギアスに聞いてみようと思ったようでジークの服を引っ張るが、ジークは個人的な頼み事は後の方が良いと思ったようで首を横に振る。


「何かあったのか? ジーク、気にする必要はない。話せ」


「そ、それじゃあ、えーと、フォルムに領地を貰ったカインから、フォルムで育てられるものはないかって、これが土壌のデータです」


レギアスは気にする必要はないと言い、ジークはカインから渡されたメモを遠慮がちに差し出す。


「カイン? カイン=クロークか? 確か、あの者はジオス村出身だったな。なるほど……」


「はい。それで、レギアス様はばあちゃんの弟子でもありますし、この間の薬草の件もあるから、詳しいんじゃないかと思って、ばあちゃんの資料から、いくつか選びはしたんですけど」


レギアスはカインの名前を聞き、小さく頷くとジークは自分なりにも調べはしたが、レギアスにも意見が聞きたいと言う。


「ふむ……この土壌なら、ジークが選んだもので問題ないだろう。しかし、この薬草が育てられるなら、フォルムまでの街道を整備したいものだ。ワームでは貴重な物もあるからな」


「レギアス、あまり無理な事を言うな。どれだけの費用がかかると思っているのだ」


「わかっている。ワームとフォルムは距離があり過ぎる」


メモにはジークが調べた栽培できそうな薬草の名前も追加されており、レギアスは感心したように頷くと、彼の口から漏れた現実味のない言葉にラースはため息を吐く。


「私が思うにジークの選んだもので問題はない。ただ、高価な物も混じっているから、フォルムに種子を買い求めるだけの財源があるかだな」


「それは……」


「あのクズなら、どうにかするでしょ」


レギアスはジークの意見に賛成するものの、フォルムでの環境が考えられていない事もあり、小さくため息を吐く。

その様子にジークは自分の考えが足りていなかった事に気づき、肩を落とすとフィーナはやる事がないせいもあるのかつまらなさそうに言う。


「ん? そう言えば、こちらの娘とは初めてだったな。レギアス=エルアだ」


「フィ、フィーナ=クロークです」


フィーナの態度はプライドの高い貴族から見ればかなり失礼であるが、レギアスは気にする様子もなく、フィーナに向かい名前を名乗る。

その姿は威厳に満ちており、フィーナはその様子に何か感じ取ったのか、慌てて、頭を下げた。


「フィーナ=クローク? そうか、カイン=クロークの妹か」


「は、はい」


「なんか、珍しい物を見てる気がする」


「そ、そうですね」


フィーナの変わりようにジークとノエルは苦笑いを浮かべると、フィーナは何かあるのか、2人に助けを求めるような視線を向ける。


「レギアス様、カインさんが、レギアス様とジークさんのおばあ様と知り合いだって聞いていなかったようで、この間、不思議に思っていました」


「そうか? 特に深い意味はないのだが、カインがジオスの村の出身であったとは言え別に言う事でもあるまい。カインとアリア殿が懇意にしているとも私は知らなかったからな」


「そうですか? ありがとうございました」


「……」


ノエルはレギアスがアリアと関係ある事をカインに伝えなかった理由を聞こうと思ったようだが、レギアスは深い理由はないと答え、ノエルはそれ以上は聞く事もないと思ったようで頭を下げる。

その様子にラースは何か思うところがあるのか、眉間にしわを寄せて見ている。


「ラースとレギアスが時間を取るようにと言うから着て見れば、この平民どもが同席か。やっと、私の考えが理解できたか」


「悪いな。あんたみたいな自分のメンツしか考えて小者の話を聞いてるほど、ヒマじゃないんだ。だいたい、俺達が同席する理由がわからないんだからな」


その時、応接室のドアが開き、シュミットが遅れて現れ、ジーク達の顔を見るなり、3人を見下ろす。

しかし、ジークはシュミットの相手をする気がないためか、ため息を吐いて気だるそうに返事をする。

その様子にシュミットは不機嫌そうな顔をしながらも、ラースとレギアスが同席している事と自分が部屋に入ってきた時に主君が座るべき席が開いているため、自分に有利な話だと思っている事もあり、話し合いの中でジークを黙らせようと思ったのか返事を返す事無く、席に移動しようとする。


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