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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
308/953

第308話

「なるほど、人族と魔族がそろわないと入れない遺跡ね」


「実際は、入れる条件もわかってないんだけどな。他の冒険者は入れたって話も聞かないし」


セスを取り入れた事でジークとノエルは遺跡の過去にある部屋の話をする。

エルトは新しい情報に首をひねるが、ジーク自身、あの遺跡に入る条件がわかっていない事を再度、話す。


「……行ってみる?」


「ダメです。何度も言いますが、エルト様は考えも無しで簡単に物事を決め過ぎです!!」


エルトはシュミットのところに行けない事もあり、新しく耳にした遺跡に興味を持ったようだが、当然、セスが猛反対を始める。


「セスさんも大変ですね」


「そうだな……なぁ、カイン、お前がエルト王子付きの時はあれはどうしてたんだ? 何かアドバイスでもしてやれよ。正直、セスさんが振り回されすぎて不毛だ」


エルトとセスの様子に苦笑いを浮かべるノエル。ジークは彼女の言葉に頷きつつも、カインがエルトに振り回されている印象はまったくないため、何かないのかを肘で彼を突く。


「煩いなら無視をする。エルト様が何か言っても、転移魔法を使わなければ良い。それだけ」


「確かにその通りなんだけどな……性格の違いか」


「そうですね」


カインは断るべき事はしっかりとエルトに伝えていたようであり、カインとセスの性格の違いがエルトを冗長させている原因のようである。

その言葉にジークはため息を吐き、ノエルは苦笑いを浮かべた。


「それで、カイン、お前はなんのようなんだ? また、栄養剤こいつか?」


「それも貰うけど、これ、ウチの領地の土壌のデータなんだけど、何か育てられそうな薬草なり、野菜なりないか?」


カインがジオスのジーク達の店を訪れる時はだいたいが栄養剤目的のため、ジークは薬品棚にカイン用に取り分けておいた栄養剤を手に取り、彼の前に置く。

カインはそれを受け取ると懐から1枚のメモ用紙を取り出して、ジークに渡す。


「こんなもん、俺に渡したってわかると思うのか?」


「少なくとも俺よりは専門だろ。ばあちゃんと薬草植える時にジオスで育てられる薬草を育ててたんだ。いくつか、その時のデータとか残ってるだろ。それから、合いそうなものを選んでくれたら良い」


「確かにそうだな……レギアス様だ。魔術学園だと言う前に探すところがあるじゃないか?」


ジークはメモ用紙を覗き込むが、アリアから調合技術は叩きこまれはしたものの、ジオスで育てられる薬草以外の事はすでに頭の隅からも追い出しており、眉間にしわを寄せた。

そんなジークの様子にカインは呆れたようなため息を吐くと、ジークはアリアの事について1番初めに探して置かないといけない場所が自分の店だと思いだしたようで、気まずいのか視線を外して頭をかく。


「ちょっと見てくるか? だけど……何で、こんなものを調べる気になったんだ?」


「何でって、領地で農民をしている人間から、ここ数年、不作が続いているって聞いたから、土壌を調べたり、何かしらやって行かないといけないだろ。元々、野菜関係が育ちにくいみたいだけど、だからと言ってそのままにして置くわけにもいかないだろ」


ジークは立ち上がり、カインからの頼み事を済ませてこようとするが、1つの疑問を頭がよぎる。

それはカインの行動が彼らしくないと思ったようで、少し疑うような視線を向けるが、カインは領主としての仕事を全うしようとしているだけだとため息を吐いた。


「それもそうか……後、見つからなくても文句言うなよ。ばあちゃんの薬草栽培のデータはレギアス様のところに全部預けてあるかも知れないし」


「レギアス様の?」


「ばあちゃんの弟子だったらしい」


ジークは保険なのかカインが探しているデータがあるかはわからない事を伝えると奥の部屋に入って行く。


「レギアス様とばあちゃんが知り合い?」


「そうみたいです。先日、ワームでレギアス様と話す機会がありまして、その時に教えていただきました。それと高価な薬草も譲っていただける事になったんです。どうかしましたか?」


「いや、俺はレギアス様とフィリム先生が友人だから、何度か顔を合わせているんだけど、そんな事を言われた事がなかったから、俺がジオス出身だって事は知ってるはずなんだけど」


カインはジークの背中を見送った後、アリアとレギアスに面識がある事を知らなかったようで何か引っかかる物があるのか首をひねっている。


「カインさんとジークさんがお知り合いだって知らなかっただけじゃないですか?」


「確かにその可能性が高いかな? まぁ、今度、機会があったら聞いてみよう。さてと」


「帰るんですか? もう少しゆっくりして行っても良いのではないでしょうか?」


カインは違和感の正体はつかめないようだが、重要な事でもないと思ったのか、立ち上がろうとする。

ノエルはカインの様子に彼を引き留めようと声をかけた。


「そうだね。俺も時間がないから、直ぐに帰ろうと思ったんだけど……エルト様、もう少しどうにかなりませんか?」


「いや、どうにかも何もセスが頑固で困るんだよ。その遺跡は1度、見てみたいじゃないか? 私達に必要な何かがあるかも知れない」


「それはジーク達がアーカスさんに任せてありますから、エルト様は気にしないでください。エルト様がうろつくと他の冒険者達がやはり何かあるのではないかと再調査を始めるかも知れません。貴重な資料があるのに荒されては元も子もありませんから」


カインも用件を済ませたらすぐに帰ろうと思っていたようだが、エルトに押し切られそうなセスの様子に助け船を出した方が良いと判断したようで、エルトが遺跡に行かれると困るとはっきりと言う。


「でも、その資料を魔術学園に持ち込めれば、何かわかるんじゃないかな?」


「確かにそうかも知れませんが、現状で言えば、魔族と人族が共存するために必要な資料を預かってくれる理解者がいません。フィリム先生なら預かってくれると思いますが、現在はルッケルの調査で忙しいですし、ジークとノエルの話から推測すれば、その遺跡に住んでいた魔術師はかなり高位の魔術師です。資料などには何らかの魔法的処理が施されていると思います。その資料を魔術学園に運べば、私達の目的以外の事で教授達は盛り上がり、研究にもならないでしょう」


「そうですわね。過去の遺物。紛失魔法の類もある可能性が高いですから」


カインは協力者が少ない状況で資料を提示する危険性について語るとセスはエルトを静かにする事ができそうな事もあり、直ぐにカインに賛同し始める。


「それもそうだね……わかった。今回は諦めよう。ノエル、私とセスも帰るから、シュミットとの事をラースとレギアスに伝えておいてよ」


「は、はい。わかりました」


エルトは貴重な資料がダメになる可能性に納得したようで、1度、頷くとノエルにシュミットとの対談の事をノエルに頼み、ノエルはその言葉に直ぐに大きく頷く。


「カイン、レインにもなるべく早く、私の考えを伝えておいてくれるかい。レインを協力者にするといろいろと動きやすくなるからね」


「わかっています。それに関してはすでに手を打っています。レインの性格を考えれば絶対に反対できないように罠を張ってあります」


「レインさんに何もなければ良いですね」


「……そうですわね」


エルトの言葉にカインは頭を下げるが、その表情は楽しそうに緩んでおり、彼の様子からレインに何か起きると言う事をノエルとセスは察したようで顔を引きつらせる。


「そう。それなら、カインに任せるよ。セス、戻るよ。セスにも私の協力者に会って貰わないといけないからね」


「わ、わかりました」


エルトはカインに絶対的な信頼を寄せている事もあり、カインに全て任せると言うとセスとともに王都に戻って行く。


「あ、あの。カインさん、レインさんの事、お手柔らかにお願いします」


「別にケガをするとかそう言う事じゃないよ。ただ、レインの信念に付け込むだけだよ」


「え、笑顔で言われると不安しか感じないんですけど」


2人を見送った後、ノエルはレインに何をしているのか尋ねると、カインはこれ以上のないくらいの爽やかな笑顔を浮かべて心配する事などないと言う。

しかし、その笑顔にノエルは余計に不安になってきたのか大きく肩を落とした。



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